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法務省にて 後編
敵がいないと言った割には恨んでいる人物が多いと合田は思った。
「なぜ小松原晴彦さんを養子として引き取ったのですか」
「唯一の肉親であった小松原正一が失踪したことで彼は天涯孤独となった。そんな彼を放っておけなかった。ただそれだけさ」
合田は考え込む。
「では最後に小松原晴彦さんはどこにいますか」
「彼はまだ高校生だ。まあ最近は学校を欠席しているそうだが」
そうして井伊尚政の事情聴取は終わった。
二人の刑事が帰ったことを確認した井伊は榊原に電話する。
「やっぱりあの事件の再捜査をしているようだ。助けてくれ」
『もう少しだけいいでしょう。それにあの事件は既に時効が成立しています。つまり我々を裁く法律は存在しない。それどころかこの事件事態公にはならないでしょう』
「痛くも痒くもないということですか。酒井さんとも相談しますよ」
彼は電話を切りある男の言葉を思い出した。
「あのプロジェクトが公になれば政界は終わる。この国を消したくなければ隠蔽しろ」
この言葉を胸に彼は事件を隠蔽しようとする。