拘置所
合田と月影は東京拘置所で酒井と面会した。
半年振りの面会に酒井はうれしそうだった。
「刑務所生活にも慣れましたが退屈ですよ。面会があればいいのですが。それで話は何ですか。ただ面会しに来た訳ではないのですよね」
合田は二枚の写真を取り出して見せた。大橋陽一と小松原正一の写真だ。
「十六年年前の小松原正一失踪事件。その犯人が先ほど自首してきた」
その言葉に酒井は驚いた。
「失踪事件に犯人がいるのですか」
月影は大橋の写真を指差した。
「名前は大橋陽一。殺人犯だという供述をしています。本題はここからです。十六年前の失踪事件の捜査を打ち切りにしたのはあなたの父親です。彼はなぜ捜査を打ち切ったのかを知りたいのです。」
「知りませんよ。十六年前と言ったら新人記者ですから」
酒井はあることを思い出した。
「十六年前小松原さんが失踪した夜私の家に井伊尚政が来ましたよ。父親とは同居していたので父に会いに来たのだと思うのですが。井伊さんは怒って帰りました。父にこう怒鳴るのです。それが国会議員の役目なのかと」
「国会議員の役目」
「はい。このことを記事にしようとしたのですが握りつぶされました。それから誓いました。父の記事はもう二度と書かないと」
「五分経過しました。面会時間は終了です」
酒井は監視役に連れられて拘置所に戻った。