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木原と神津は公安調査庁にいる。千間の計らいで五分だけ浅野房栄に会う事が許されたからだ。ロビーで待っていると眼鏡の男が声を掛けた。
「警察の方ですね。公安調査庁長官秘書の遠藤昴を申します」
遠藤は名刺を渡す。二人もそれに合わせるように名刺を交換した。彼はポケットから携帯電話を取り出した。周囲にいる人たちは苦笑いをする。
「浅野長官は声で人を選ぶ方です。良い声をしている方は直接会うことが出来ます。最初は電話で聞き込みをしてください」
電話はすぐに繋がる。
「浅野公安調査庁長官殿。私は警視庁捜査一課の木原と申します」
受話器からは女の声が聞こえる。
『話は聞いているよ。十六年前の失踪事件に新展開があったそうだね』
「はい。その失踪事件の犯人が自首してきました。それで浅野長官に見ていただきたいものがあります。自首してきたのは大橋陽一。覚えていますか」
『確か祖母を介護していた人だったかしら』
「その大橋さんから手紙を預かりました。秘書に渡しますから証拠になりそうなら我々警察に一報をください」
右側から拍手が聞こえる。長髪の女が拍手をしながら現れたのだ。
「いかがかしら。浅野式心理テストの力は」
遠藤は女に耳打ちをする。小さな声だったが二人にははっきりと聞こえた。
「大成功です。浅野公安調査庁長官」
ミス入力があったので訂正しました。