辞表 後編
木原は広田に質問する。
「この浅野さんというのは誰ですか」
「去年亡くなった浅野静子さんのことでしょう。静子さんは認知症で彼を娘だと思い可愛がっていました。」
「息子ではなくて娘ですか。」
「はい。浅野さんには息子はいませんでしたから。浅野さんの娘さんに渡した方がいいでしょう。あなたがた警察なら行きやすいでしょうしね」
二人はこの意味が分からなかった。
「娘さんは公安調査庁に勤務しています。名前は浅野房栄」
神津はメモを取った。
「公安調査庁の浅野房栄」
メモを再び読むと神津は思い出した。
「あの浅野房栄ですか。彼女は公安調査庁長官。我々警察でも会えるかどうかは分かりません」
「千間刑事部長に報告すれば会えるかも」
神津は広田とロッカールームに向かった。木原は会議室に残り千間に報告した。
「木原です。大橋と小松原の接点は分かりません。しかし彼は公安調査庁長官浅野房栄と接点があることが分かりました」
『本当か』
「はい。彼女に宛てた手紙があります。その手紙を届けたいと思うのです」
『本人立ち会いの元で手紙を開封して証拠となりそうなものであれば捜査資料として没収するということか』
「はい」
『彼女とは先月のパーティーで知り合った。その時に名刺を交換したからすぐにアポを取れるはず。ただし礼儀正しく接するように』