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はまってワンだふる。〜夫婦二人の過ごし方〜  作者: 朝野とき
第一話 私がネット小説にはまったら。
3/31

第一話-3

今回、前半は主人公が読んでるネット小説そのものから場面はじまります。突然ファンタジー恋愛ですが驚かないでくださいませ。

・・・・

・・・・

・・・・

 遠くに爆音が轟いている。

 隣国からの戦火が、この聖殿へ届いてしまうのももうすぐのことだろう。一刻を争う時なのだ。

 近づく戦いの音を有能な騎士として正確にとらえたガイルは、咄嗟にリリアの腕を掴んだ。一瞬リリアの体が震えた。

 ガイルはリリアを傷つけないように、けれども放してしまわないように手に力を込める。…聖殿の奥に続く秘密路を侍女たちと行ってしまおうとしている…ガイルから離れて行ってしまおうとしているリリアをつなぎとめるために。


「なぜ…?貴女は行ってしまうのですか?私がここまで来たことをお怒りですか?」


 ガイルは体を強張らせるリリアに、なお詰問してしまう自分を止められずにいた。守りたい者を責めたいわけではない…でも…!!

 リリアの銀の柔らかな髪が、ガイルの肩に緩やかに触れる。

(やっと…やっとこんなに近くにまで来れたものを…!)

 ガイルの言葉にならない葛藤をくみとったのか、リリアは背けていた全身をそっとガイルの方に向けた。そして、その青く澄んだ瞳でガイルを見つめた。小さな紅い唇がそっと動く。

「…わたくしも…。…一度だけ言います。わたくしも、あなたと共にいたかった…」

 小さな小さな声だった。

 その声に、ガイルはたまらなくなってリリアを引き寄せようとした。

 けれども、リリアは決して体を寄せようとはしない。軽く拒むように首を振り続けた。

「けれども、わたくしには民の想いも汲む使命があるのです。わたくしの命…想い…全てが、たった一つあなたにだけむけられれば、どんなに良かったか…。」

「…民のために…行ってしまわれると?利用されるだけかもしれません。その力をお立場を!それをわかって?なお?」

 ガイルは詰め寄る。リリアはやはり首を振る。瞳には力を宿して。

「わたくしは、行かねばなりません。国を…この民の想いを散り散りにしたままで、あなたと逃げて幸せを追うことなど…できません」

 ガイルは騎士でリリアは聖女。

 結ばれることはないとはわかっていても、みすみすリリアの命を危険にさらすような、国の復興再建に関わらせたくはない。

 いま、この騒動の中で、連れ出して逃げ出せれば。

 いや、リリアがその尊い身をゆだねてくれさえすれば、どこまでも守り、今まで籠の鳥のようだったリリアを自由にしてあげられるものを!


 けれども…ガイルは、リリアの青い瞳に宿る意思の力を知っている。

 これは聖女としての「力」ではなく、人としての生きざまとしての…決意。

(あぁ、あなたは。もう決めていらっしゃる。聖女としての役割をまっとうすると、もう決めていらっしゃるのだ)

 答えはわかりきっていても、リリアに告げる。告げてしまう。

「貴女が…自由になれる最後の機会かもしれません…聖女の名から…」

 ガイルは震えを止められなかった。「純白の騎士」として国中に名を轟かせている男が、震えを止められないとは!ガイルは自分を笑うような気持ちになってくる。

 それでも、全身はリリアの唇の動きにすいよせられてしまう。そのこぼれおちる言葉を全身全霊で受け止めずにいられない。昔のように。

「…ガイル。小さなころ、あなたに教えてもらいましたね。『自由』は自分自身の心で決めることから始まると。」

「…」

「わたくしの体はこの先に自由に動けないかもしれない。けれども…わたくしはずっと自由なのです。いえ、いままでだって…。ずっとずっと…あなたを思い出す心は持っていられるのですもの…」

ふわりと微笑むリリア。

(どうして…どうして、今ここで、それを)

「貴女は…残酷です、リリア」

「そうかもしれません」

「民のために、私は捨てると?必死にここまで来た私を…今やっと、騎士として貴女のそばに立てるだけの力をもった私は、もう必要ないと?」

リリアは、自分の腕をつかんだまま放すことも忘れてしまった強い男の手にそっと手を添える。

「わたくしの手は、力をもちません。衣の用意も、食事の用意もしたことがないからです。戦いも、聖女の力として聖殿で使うものばかりで…刃の傷も痛みもしらないのです。あなたが騎士としてここにきてくださるまでの道のりを…そとの世界も、知らないのです」

「…」

「けれども…今から、わたくしは民と歩むために、おそらく鍋も針も持たねばならないでしょう。すべて侍女たちから、教わらないといけないでしょう。生きるすべを知らねばならず、わたくしは、何度も何度も。。。きっと自分の無知と無力に打ちのめされるのでしょう…。でも…」

「…でも?」

「あなたが生きている世界と同じ世界を生きている痛みだと思えば、すべてが希望になります」

 力強い何かが、リリアの小さな手からガイルにつたわってくるようだった。

 あたたかさ。決意。流されない想い。

 同時に、おびえ、怖さ。

(あぁ、行くのですね。行ってしまうのですね。それなら…)

「リリアさま。貴女が生きている世界で、私も私の役割を果たしましょう」

ガイルは、自分の持てるだけの強さを持って、リリアの希望を受け入れた。

 リリアは、花のように微笑んだ。

 それは、ガイルが昔に守りたいと思った少女の頃と同じ、やさしくあたたかな笑顔だった。……(続く)



………



「う、うぎゃあ~」

 

 私は、ジタバタと変な声を出してしまった。

 作者さまっ!ここで、ここで、ここで切りますかっ!!


 ……悶絶。


 そう、いま私はファンタジー系(?)恋愛小説の連載ものを読んだところ。もちろん自宅のマイベッドよ。


 今夜は残業もなくスムーズに帰宅できて、7時には家につき、化粧落としも兼ねてシャワー。

 旦那は今夜、会社の同じ部の中途採用さん歓迎会で遅くなると聞いてたから、夕飯は私のみ。ごはんと惣菜サラダと惣菜コーナー焼き鮭、即席みそ汁で簡単に済ませた。

 いつもならパスタぐらいゆでるんだけど、昼間は岬さんと美味しいパスタ食べたからね。夜は惣菜コーナーに頼りましたわ…。


 それにしても。

 ネット小説に本格的にはまったのは、実はまだ4ヶ月ほどなんだけど。

 最近までは「完結済み」しか手を出さないように気をつけてた。

 連載だと更新が気になって気になって、ますますネット小説から離れられなくなりそうだと思って…それくらいの自覚はあったのよ!

 ……でも結局、誘惑に負けたけどね。


 先ほど読んでいた「エルディバラン王国シリーズ」は他の完結編がいくつもあって、その登場人物たちのスピンオフが今連載されている。

 私は騎士とか主従関係とかに弱い。なんだか強い絆とストイックさが私のツボなんだよね。

 あぁ~ガイルとリリア、離れ離れだけどどうなるのかなぁ。たぶん再会すると思うんだけど…。まだ、キスもまだなんだよこの二人。どうにかしてあげてよ、とか本気で思ってしまう。

 更新の早い作者さまではあるけれど……あぁ~続きが気になるなあ。

 はやく更新されないかなあ。


 さてさてベッドでバタバタしていてもしかたないので、何か飲もうとダイニングに行く。

 時計をみると、もうすぐ0時だった。


 ……数巳かずみ遅いな。明日は土曜日で休みだし、ゆっくり羽のばししてるのかな。 

 ……ま、いいけど。


 冷蔵庫から野菜ジュースを出して飲んで、グラスを洗ってると、ガチャっと玄関で音がなった。


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