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はまってワンだふる。〜夫婦二人の過ごし方〜  作者: 朝野とき
第一話 私がネット小説にはまったら。
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第一話


 やば、はまってしまった。

 ……ネット小説。


 う、わぁぁぁ。こんなの、絶対はまらないと思ってたのにっ。


「私は紙の本が好き!」

「ちゃんと編集されてないとねっっ!」


 なんて強気に言ってた過去の『自分』が、すっっごく恥ずかしい。


 いや、スマートフォンで一人寝室でこそこそ読んでるだけだから、私のネット小説のはまり具合なんて、旦那もしらないくらいで、恥ずかしがるほどのこともないんだけど。


 でも。

 もうあと2年で三十路にはいる結婚二年半の兼業主婦~なんて女が(私なんだけど)、「恋愛小説★」「ろまんす小説★」なんかにはまって、ドキドキしたりして……。

 なにやってんだろ…って読み終えたら、思うわけ。


 今みたいに、一日終わった湯上りのすっピン時に鏡なんか見たら、目尻のたるみやうっすらできてきているシミは存在感バツグンの私、28歳。

 いっくら日中、オフィスですましていても、「先輩、どこの化粧品使ってるんですか?すっごく調子いいですね!」って素肌じゃなくて化粧品を聞かれるお年頃。このむなしさ…わかる?

 そういう「おばちゃん」と呼ばれつつあるあたりに、そろそろと足を突っ込みつつある既婚オンナが、小説の触れるかふれないかのキスシーンに目をうるうるさせてたりしてるわけで。


 ……自分いつくと思ってんの?って感じよねっ。自覚してるわよ!


 そもそも私自身だって、端末にぎって画面凝視して読み進めてるわけだから、手がガチガチで肩こり&眼精疲労まっしぐら。

 目は血走ってて、翌日しんどいったらありゃしない状態。

 もう若くはないし、乙女でもないのよ。


 でもね、また次読んじゃうんだよね…。

 しかも、恋愛もののネット小説ばっかりを、お腹いっぱいになるまで。


 ありえない逆ハー、ありえないイケメン軍団にときめきめいて。

 なおかつ、どっか昔気質な私は純愛にあこがれてて、すぐさまベッドインはいやだっっとか思っちゃって。

 相思相愛&溺愛しているのに、どこかストイック…なんていう私好みのストーリーを探しだそうと、ネットの海を果てしなく泳いでいるわけです。

 そんな中で自分好みの世界に出会えたら、「ラッキーっ!」とどんどんくいついちゃうっ。


 というわけで。


 あぁ、今晩も至福のときよ~日中の仕事や家事の山は忘れて、ラブで純な世界へれっつごー!しますっ。ちかごろこれが毎夜の習慣。

 パジャマ姿で、ごろんと寝転び、スマホでブラウザ起動する私。


 ……ちなみになんでスマートフォンを使って読んでるかというと、スマホなら、仰向けとか横向きとか自堕落ごろごろしながら読めるってことで落ち着いたスタイル。PCは、仕事のこと思いだしちゃってNGだし、持ち運びに不便だし。

 ……ごろ寝で読めるのを選択してるなんて……どこまでもおばちゃん化していってるっていうところは、スルーよっ!


 さてさてこうして

 私は、花が飛び交う恋愛の世界へむかうべく、今晩もニマニマとベッドの上で寝っ転がって画面を見つめていたら……。


 ガチャっ


 突然ドアノブがあいて。


「何してんの?」


と、いう声。


 あー、やだやだ。

 いくら旦那といってもね。

 ノックくらいしてよねー。


 お風呂あがりの旦那が、ドアをあけ。タオルで髪をふきながらじっとこちらを見たのだった。


 ……『恋愛小説』なんてものを読んでいるの、旦那にばれたらこっぱずかしいし、こんなニマニマしている顔をされけだせないしで、私はさっと画面消してそそくさとスマホをベッドサイドにおいた。


「ん~ちょっとツイートみてただけ~」


と、適当にごまかして、ごそごそと布団に入る。

(ほとんど呟いてないけど、流行のツイッターにだってスマホを利用しているのよっ!…まぁ、ほとんどネット小説に使ってるんだけどさ)


「ふぅん?」


 関心なさそーな声で返事して、私の旦那…東条数巳とうじょうかずみ29歳は隣のベッドにすべりこんだ。


 ここで注意。

 私の寝ている隣に、じゃないのよ?

 隣の「ベッド」に寝転んだの。

 私たちの寝室は、つまり、シングルベッドを並べてるってわけです。


 私たちは、結婚二年と半年。

 仲は悪くないけど、先月分譲マンションを購入して引っ越し、家具を新調したときにダブルベッドじゃなくてシングルベッドを並べることにした。


 それがねー、どうも旦那のお気に召さなかったらしく。

「夫婦仲がわるいみたいじゃないか」

 とかいうんだけど。


 でも、共働きで就寝時間や起床時間がずれることも多い私たちがダブルベッドなのは、正直しんどいのよ。気を使うし。


 ……という、たてまえはおいといて。


 やっぱり……ネット小説よみづらいじゃない?

 ベッドが違えば、私は一人布団にもぐりこんで小説をよみふけられるけど、ダブルベッドで夫が隣にいるのに、煌々とスマホでネット小説を読み続ける勇気は私にはない。

 だって、私、ぜったいニヤニヤして、じたばた足をならしたりしてるもの。

 恋のじれじれを全身で堪能してるもの!!


 そのニマ顔を目撃されるのも恥ずかしいし、かといってダブルベッドで夫が横でぐうすか寝てくれたとしても、それはそれで恋話にひたれなーいっ!

 ここは自分が28才既婚オンナの現実は脇に置いといて、うっとりと小説に中に思いっきりダイブしたいわけです。一日の終わりの楽しみとして。


 ……そんな本音は隠しつつ、新しいマンションを購入し家具選びをするときに、

「寝起き時間がバラバラで疲れるし、気をつかうからね、シングルベッド並べようよ~。別に寝室を分けるわけじゃないんだし、ね?」

と、説得したわけです……。


 でもでも。

 あれから、なあんか不穏な旦那。

 律儀でマナーの良い温厚な、まさにゴールデンレトリバー並みのほんわか旦那が、さっきみたいにノックなしに部屋に入ってきたりとかするようになってしまった。

 そういうの、前はまったくなかったんだけどなぁ……。


 あーやだやだ。

 自分の希望が通らなかったからって行動であてつけるのやめてよね!と、内心おもってしまう。

 これも声にはださないんだけど。


 ネット小説の王子さまが現実にいないのはわかってる。

 なあんにもじれじれもやきもちもハプニングもすれ違いもない、ただすぎていく結婚生活に加えて、たがいにだんだん礼儀を失ってだらしなくなっていく夫婦の姿。これが現実。

 私も、しわが増えて、あつかましくなっちゃって。

 恥じらいとかどきどきとか大切にしたいとは思うけれど…でも、夫の前で服を着替えるのをためらった頃には……正直、戻れない。

 朝の出社前の忙しい時、夫の前でストッキングをどうどうと履いちゃう自分になってしまっている。


 だからかな。

 夜だけは。

 妄想かもしれないけど。

 空想かもしれないけど。

 ネットの海のもくずかもしれないけど。

 思いっきり乙女の世界に浸っていたいんだ……。



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