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ショートショート8月2回目

今日のおやつ

作者: たかさば

今日のおやつは何だろな♪

待ちに待った午後3時!


トン、トン、トン、トン……

おかあさんの階段を登ってくる足音!


ガチャ!


「おやつよ、ちょっと休憩したら?」

「うん!」


僕は手を休めて、おかあさんからお盆を受け取った。


うわあ!美味しそうな正義!


モグ、モグ、モグ…この、全部引っくるめて自分以外を悪にする感じ、たまんない♡


アアア、食べる手が止まんないよぅ、もう最後の一口だ…。

最後は、じっくり、ゆっくり、舌の上でころがして……んぐ。


ああ、この、自己満足をごり押す感じ…本当に、おいしかったぁ……♡


よーし、午後からもはりきってお勉強、がんばるぞ!!!



今日のおやつは何だろな♪

待ちに待った午後3時!


トン、トン、トン、トン……

おかあさんの階段を登ってくる足音!


ガチャ!


「おやつよ、ちょっと休憩したら?」

「うん!」


僕は手を休めて、おかあさんからお盆を受け取った。


うわあ!美味しそうな愛!


モグ、モグ、モグ…このとにかく思い込みで自分の気持ちを押し付ける感じ、たまんない♡


アアア、食べる手が止まんないよぅ、もう最後の一口だ…。

最後は、思いっきり牙をたてて噛み砕いて……んぐ。


ああ、この、相手の感情を握りつぶす感じ…本当に、おいしかったぁ……♡


よーし、午後からもはりきってお勉強、がんばるぞ!!!




今日のおやつは何だろな♪

待ちに待った午後3時!


トン、トン、トン、トン……

おかあさんの階段を登ってくる足音!


ガチャ!


「おやつよ、ちょっと休憩したら?」

「うん!」


僕は手を休めて、おかあさんからお盆を受け取った。


うわあ!美味しそうな夢!


モグ、モグ、モグ…この周りの人間は全員味方って信じ込む感じ、たまんない♡


アアア、食べる手が止まんないよぅ、もう最後の一口だ…。

最後は、丸飲みして喉ごしを楽しもう……んぐ。


ああ、この、全部うまく行くって信じるふりをする感じ…本当に、おいしかったぁ……♡


よーし、午後からもはりきってお勉強、がんばるぞ!!!



今日のおやつは何だろな♪

待ちに待った午後3時!


トン、トン、トン、トン……

おかあさんの階段を登ってくる足音!


ガチャ!


「おやつよ、ちょっと休憩したら?」

「うん!」


僕は手を休めて、おかあさんからお盆を受け取った。


うわあ……エグそうな、言い訳だ……。


あんまり、食べたくないなあ……。

でも、せっかくおかあさんが持ってきたから、食べないと。


モグ、モグ、…頑なで、トゲのある食感……。


でも、食べ続けてたら……、意外と、悪くない、かも!


全部食べ終わってみれば、……んぐ。


ああ、この、突拍子もないところから引っ張ってくる感じ…わりと、おいしかったぁ……♡


よーし、午後からもはりきってお勉強、がんばるぞ!!!



今日のおやつは何だろな♪

待ちに待った午後3時!


トン、トン、トン、トン……

おかあさんの階段を登ってくる足音!


ガチャ!


「おやつよ、ちょっと休憩したら?」

「うん!」


僕は手を休めて、おかあさんからお盆を受け取ろうと。


「キャア!」


うわあ!!せっかくの、美味しそうな良心が!


窓の外に吹っ飛んでいく、薄っぺらい外面!どす黒い本音!隠しきれない欲望!


アアア、もったいない、あんな濃厚なやつ、もう二度とお目にかかれないよ……。


思いっきり、唾を、飲み込んだ……、ごくり……。


「ごめんね、おやつ、なくなっちゃった。」


落っこちた良心を、野良キマイラが食い散らかしてる。

すごく、美味しそう……。


ああ、おなか、空いたな……。


あーあ、午後から、はりきってお勉強、できそうに、ないよ……。


ちょっとだけ、恨めしい目で、おかあさんを見上げると。


「ちょっと、早いけど、ご飯にしようか。……刈ってみる?」

「うん!」


……さっきから、美味しそうなにおいがしててさ。


勉強するより、実践したいなって、思ってたんだ。


しっかり、学んだ、僕なら、……刈れるはず。


……くん、くん。

……くん、くん。


後悔を、ぱくり。

願いを、ぱくり。

嘲笑を、ぱくり。


……くん、くん。

……くん、くん。


驕りを、ぱくり。

祈りを、ぱくり。

秘密を、ぱくり。


……くん、くん。


誓いを、ぱくり。

目標を、ぱくり。

結論を、ぱくり。


しまった、ついつい、つまみ食いしてたら、魂本体食べる前におなかいっぱいになってきた……。


ヤバいなあ、旨味のない、つまんない魂食べる余裕、なくなっちゃった。


「もう、美味しいところだけ摘まんじゃ、ダメじゃない!」


……おかあさんに、怒られちゃった。


まだまだ、僕は、未熟だなぁ。


魂にこびりついてる愉快な感情は、すごく美味しいけど……、すぐに昇華しちゃうんだよね。


一瞬の満足しかできないって、学んでたのに。

ついつい、目の前の、ぷりぷりの感情に…ガマン、できなかった……。


「魂刈りは、もうちょっとお勉強してからにしようね。」

「はぁ~い……。」


ごてごてと、感情にまみれた、魂。

だけど、感情を剥がしてしまえば。


つるっつるの、中身のないものだったり。

かっちかちの、歯が立たないものだったり。

すっかすかの、手応えのないものだったり。


あーあ、感情をなくした、すっからかんの魂が……ふらふらと歩いて行っちゃった。


あれじゃあ、この先、無気力に生きて…何も残せず腐るだけだろうなあ……。


感情食べなければ、そうとう周りに毒を撒き散らしてくれたはずなのに。


……あいつは、今手を出すべきじゃ、なかった。


ああ、失敗した……。


ちょこっとだけ、薄っぺらい誓いだけかじって放牧しておけば……かなりの食べごたえのある魂になったはずなのに。


……完全に、勉強不足だ。


「お夜食持っていってあげるから、もうちょっと頑張ってお勉強しなさいね?」

「……はぁい。」


ぼくは、ぽんぽんに膨らんだおなかをなでながら、勉強机に向かった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] プリプリw 魚みたい [気になる点] なんの勉強ですかいな。 [一言] 夢ってのが、馴染みない感覚ですね
[一言] 愛とか正義とか夢とか、まぁ、押し付けですよね。かも自分側が正しいかのようなね。 癖のあるものは、癖のある味に育ちそうですよね。 まぁ、いずれにせよ、刈り取られる……おおぅ。
[一言] なんてブラック!! 面白かったです!!
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