今日のおやつ
今日のおやつは何だろな♪
待ちに待った午後3時!
トン、トン、トン、トン……
おかあさんの階段を登ってくる足音!
ガチャ!
「おやつよ、ちょっと休憩したら?」
「うん!」
僕は手を休めて、おかあさんからお盆を受け取った。
うわあ!美味しそうな正義!
モグ、モグ、モグ…この、全部引っくるめて自分以外を悪にする感じ、たまんない♡
アアア、食べる手が止まんないよぅ、もう最後の一口だ…。
最後は、じっくり、ゆっくり、舌の上でころがして……んぐ。
ああ、この、自己満足をごり押す感じ…本当に、おいしかったぁ……♡
よーし、午後からもはりきってお勉強、がんばるぞ!!!
今日のおやつは何だろな♪
待ちに待った午後3時!
トン、トン、トン、トン……
おかあさんの階段を登ってくる足音!
ガチャ!
「おやつよ、ちょっと休憩したら?」
「うん!」
僕は手を休めて、おかあさんからお盆を受け取った。
うわあ!美味しそうな愛!
モグ、モグ、モグ…このとにかく思い込みで自分の気持ちを押し付ける感じ、たまんない♡
アアア、食べる手が止まんないよぅ、もう最後の一口だ…。
最後は、思いっきり牙をたてて噛み砕いて……んぐ。
ああ、この、相手の感情を握りつぶす感じ…本当に、おいしかったぁ……♡
よーし、午後からもはりきってお勉強、がんばるぞ!!!
今日のおやつは何だろな♪
待ちに待った午後3時!
トン、トン、トン、トン……
おかあさんの階段を登ってくる足音!
ガチャ!
「おやつよ、ちょっと休憩したら?」
「うん!」
僕は手を休めて、おかあさんからお盆を受け取った。
うわあ!美味しそうな夢!
モグ、モグ、モグ…この周りの人間は全員味方って信じ込む感じ、たまんない♡
アアア、食べる手が止まんないよぅ、もう最後の一口だ…。
最後は、丸飲みして喉ごしを楽しもう……んぐ。
ああ、この、全部うまく行くって信じるふりをする感じ…本当に、おいしかったぁ……♡
よーし、午後からもはりきってお勉強、がんばるぞ!!!
今日のおやつは何だろな♪
待ちに待った午後3時!
トン、トン、トン、トン……
おかあさんの階段を登ってくる足音!
ガチャ!
「おやつよ、ちょっと休憩したら?」
「うん!」
僕は手を休めて、おかあさんからお盆を受け取った。
うわあ……エグそうな、言い訳だ……。
あんまり、食べたくないなあ……。
でも、せっかくおかあさんが持ってきたから、食べないと。
モグ、モグ、…頑なで、トゲのある食感……。
でも、食べ続けてたら……、意外と、悪くない、かも!
全部食べ終わってみれば、……んぐ。
ああ、この、突拍子もないところから引っ張ってくる感じ…わりと、おいしかったぁ……♡
よーし、午後からもはりきってお勉強、がんばるぞ!!!
今日のおやつは何だろな♪
待ちに待った午後3時!
トン、トン、トン、トン……
おかあさんの階段を登ってくる足音!
ガチャ!
「おやつよ、ちょっと休憩したら?」
「うん!」
僕は手を休めて、おかあさんからお盆を受け取ろうと。
「キャア!」
うわあ!!せっかくの、美味しそうな良心が!
窓の外に吹っ飛んでいく、薄っぺらい外面!どす黒い本音!隠しきれない欲望!
アアア、もったいない、あんな濃厚なやつ、もう二度とお目にかかれないよ……。
思いっきり、唾を、飲み込んだ……、ごくり……。
「ごめんね、おやつ、なくなっちゃった。」
落っこちた良心を、野良キマイラが食い散らかしてる。
すごく、美味しそう……。
ああ、おなか、空いたな……。
あーあ、午後から、はりきってお勉強、できそうに、ないよ……。
ちょっとだけ、恨めしい目で、おかあさんを見上げると。
「ちょっと、早いけど、ご飯にしようか。……刈ってみる?」
「うん!」
……さっきから、美味しそうなにおいがしててさ。
勉強するより、実践したいなって、思ってたんだ。
しっかり、学んだ、僕なら、……刈れるはず。
……くん、くん。
……くん、くん。
後悔を、ぱくり。
願いを、ぱくり。
嘲笑を、ぱくり。
……くん、くん。
……くん、くん。
驕りを、ぱくり。
祈りを、ぱくり。
秘密を、ぱくり。
……くん、くん。
誓いを、ぱくり。
目標を、ぱくり。
結論を、ぱくり。
しまった、ついつい、つまみ食いしてたら、魂本体食べる前におなかいっぱいになってきた……。
ヤバいなあ、旨味のない、つまんない魂食べる余裕、なくなっちゃった。
「もう、美味しいところだけ摘まんじゃ、ダメじゃない!」
……おかあさんに、怒られちゃった。
まだまだ、僕は、未熟だなぁ。
魂にこびりついてる愉快な感情は、すごく美味しいけど……、すぐに昇華しちゃうんだよね。
一瞬の満足しかできないって、学んでたのに。
ついつい、目の前の、ぷりぷりの感情に…ガマン、できなかった……。
「魂刈りは、もうちょっとお勉強してからにしようね。」
「はぁ~い……。」
ごてごてと、感情にまみれた、魂。
だけど、感情を剥がしてしまえば。
つるっつるの、中身のないものだったり。
かっちかちの、歯が立たないものだったり。
すっかすかの、手応えのないものだったり。
あーあ、感情をなくした、すっからかんの魂が……ふらふらと歩いて行っちゃった。
あれじゃあ、この先、無気力に生きて…何も残せず腐るだけだろうなあ……。
感情食べなければ、そうとう周りに毒を撒き散らしてくれたはずなのに。
……あいつは、今手を出すべきじゃ、なかった。
ああ、失敗した……。
ちょこっとだけ、薄っぺらい誓いだけかじって放牧しておけば……かなりの食べごたえのある魂になったはずなのに。
……完全に、勉強不足だ。
「お夜食持っていってあげるから、もうちょっと頑張ってお勉強しなさいね?」
「……はぁい。」
ぼくは、ぽんぽんに膨らんだおなかをなでながら、勉強机に向かった。