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ウワサのモリヤ  作者: コトサワ
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裏 男3人モリヤん家 (小川君側 その21)

小川くんの心情は、ご想像に難くない?

キャンプの帰りのあの時よりかは、格段にマシだった。それはホントにそう。水本の浮かれっぷりの話ではない。(いや、それもそうなんだが。)モリヤだ。モリヤの色気だ。

さすがに覚悟はしていた。雨の予報、見ていたからな。腹をくくっていたつもりだった。けど朝、実際雨が落ちてきたのを見て、恐怖に引きつってしまった。

さらに電話の音で、心臓爆発するかと思った。

予想通り水本からの電話だった。そりゃそうだ。雨が降ってんだから。俺がかけろと言ったんだから。

待ち合わせ場所で、水本の方は心臓じゃなく、喜びを爆発させてる感じだった。なんでここまで憂いなく嬉しそうなんだ···。しかもナゾなのはモリヤと二人きりではなく、あきらかに邪魔者の俺がいるというのにそれが、3人であることが嬉しいなどと言うのだ···。

モリヤん家に着いた時、水本はまるで感動したように森の家を見つめて立ち止まっていた。雨の日にモリヤん家に来たのが久しぶりだからか? そこまで嬉しいことなのか···?

俺は嬉しくなんかない。感動なんてするわけない。ただただ恐怖との闘いだ。けど··· 水本がいるから、若干マシなのも事実。水本がいるから、別の恐怖があるのも事実。

そして現れたモリヤが──── 格段にマシ、だったのだ。だけど、マシなだけだ。マシなだけで、色気は出てるし、浮わついているし、おまけに色気と同時に出るとかなり厄介な方の匂いが·····。こっちの匂いは、色気と重なると相乗効果が出てしまうのだ。たのむからやめてほしい。

そして水本は、相変わらずモリヤの色気に気付かない。いっそそれは才能なんじゃないのか? そうして、色気にも気付かない水本は、不用意にモリヤを喜ばせるセリフを吐く。ただでさえ色気が出てんだぞ? ただでさえ浮わっついてんたぞ? やばいったらない!

あと、これは当たり前と言えば当たり前だが、モリヤの俺への当たりがキツイ。恐怖値マックス。ただ··· 善良水本の思うような心配をしていたわけではないが、俺も気になることはあった。なにせキャンプの帰りのモリヤの色気は、尋常じゃなかった。水本がモリヤの疲れをとても気にしていたことを今日知ったけれど、色気が出ると熱も出る、と知っている俺の方こそ、モリヤの体調を気にしなければいけなかったのかもしれない。あんなひどい色気が出て、セットになっている熱が出ていない訳がないのだ。どこまで色気の強さと比例するのかは、知らないけれど。

けれど、そんな話をすると水本が心配しすぎるし、モリヤは水本を心配させる俺に敵意を向けるしで、きちんと問いただせない。よって俺はモリヤを水本のいない場所へ誘ったのだが────

まあ怖い! 真っ暗闇てなかったから油断した。家の奥の方が、元いた部屋より暗い。そしてモリヤは、熱が出なかったのかとの俺の質問に、やはりちゃんと答えやしない。ニヤニヤ笑った声で、さほどでもないとか言うだけ。計ってないから確かなことは分からないとか。いや、だいたい分かるだろう?! 高熱かそうでないかぐらいはさ! 

ハイなモリヤが俺をからかうようにマトモな返事をしない内、ふうっと闇が深くなり、ほぼ見えなくなった!!と思ったら、ひょいとモリヤがアカリを取り出した。例の小さいアカリ。ホッとしかけた俺の目の前から、一度見せたアカリをモリヤは不意に隠したのだ! おもしろがるように。いや、ようにじゃなく、完全におもしろがってたんだな。浮わついてるからな。けど、モリヤは俺のすぐ前にいたのが分かっているから、肩を掴んでアカリを出させた。全く、モリヤは悪趣味である。もう、今現在、ここまで元気なら良い! 熱の話は終わりだ! 

で、水本のところへ戻ったはいいけれど、その後も、まー モリヤの怖いこと!! それを感じない水本の鈍感なこと!! みんなで昼飯のパンを食うという、この上なく健康的な行動ですら···。

どうやら俺の存在が、モリヤのハドメ、自制心を緩めているようなのだ。それも少しは覚悟してもいたけどだけど、「ここまで?!」もう、何度俺の心の声が、そう叫んだことか! そして水本の無自覚なモリヤを喜ばせる言動。妬かせる言動。さらには────

「ぼくは知ってしまった」とモリヤは言った。何をと聞いた俺に「幸福を」って言ったけど。実は俺も知ってしまった。モリヤが、水本を家に呼んで暗闇の中で、何を見ているかということを。それは───表情。水本は、ずっと喋っている訳ではない。会話を楽しんでいるというより、むしろ、水本にとって心地よいモリヤの家で、黙っていろんなことを心に思って楽しんでいる。それが本当に楽しそうなのだ。全然ぼーっとしていなくて、ずーっと何か考えている。それは、表情がくるくると変わるから良く分かる。もちろん何を考えているのかなんて分からない。けど、楽しい何か。嬉しい何か。時に何かに気付いたり驚いたり。モリヤはその水本の様子を、表情を、ずっと、ずっと見ていたんだ。キャンプの日、電車の中でモリヤは「心の声を口に出して言って」と、そう言っていたけれど、···うん、分かる気がする。あれだけ楽しそうな顔をされたら、何考えてるのか聞きたくもなる。そして実際、電車の中でも水本は、だいぶ面白いことを考えていた。

俺が、モリヤの見ていたものが水本の表情なのだと気付いてその後、マシになったと思われたモリヤの色気が、増した瞬間があった。無自覚水本が又もモリヤを喜ばせ発言の直後。···噴き出したのが色気なのか高揚なのか、判別つきにくくなってはいたが、とにかく俺にはもうキツくて、さらに水本から一回モリヤを離したくて、俺はモリヤをトイレに付き合わせた。2人になるのはイヤだが、水本と2人にさせるよか、全然マシだし、あと家で3人でいる時に、100の存在の水本より、0の俺に対して何か仕掛ける可能性は低いと思われたし。····少しは嫌がらせはするだろうが···。との算段で2人でトイレに行ったのだが、トイレから出てくるとモリヤか消えている。アカリとともに!! 俺はもちろん動けない。モリヤを呼んだが出てこない。二度目の呼び掛けで戻ってきたが···絶対水本の所へ行ってたと思った。だってわざわざ俺のそばからアカリを隠してったんだから。水本はそれに気付いてなかったし、だからモリヤは何もしてはいないのだろうが、それでも俺には恐怖。

そうして、さらにこの後、マックスな恐怖がやってくるのだ。水本が··· 俺に帰るかと聞いた! 当然俺は一人で帰るわけがない。なんのために必死で来たのか分からない! 「水本も帰るなら」と、もちろん言わせてもらう! 水本が、俺と一緒に帰ってもいい、みたいに言った途端、モリヤが怒るのが分かった。もちろん俺にだ。そして正直にもそれを言葉にした! すると又も水本が、俺を送って又モリヤん家に戻るなどという、恐ろしい提案をしたのだ! たのむよ、もう···。

なんとかそれを回避したら、次の恐怖は、次回の雨のモリヤ家の話。「小川は来るな」と、やっぱりきっぱりモリヤほ言った。が、まさかの次々回のモリヤ家に同行OKが出た。水本ナイス!!

水本は実際にではないけど、ケサランパサランを見たことがあった。やっぱりだ。そんな気がしたんだ。水本は幸せなんだ。小さいことでも、他の人がそうは思わないことでも、水本は幸せを大きく感じることができるのだ。そして水本の座右の銘は「ケ・セラ・セラ」なんだと。ふ〜ん。なるほどなァ。水本のなるようになる方向は、きっと幸せに向いているに違いない。

この日のモリヤ家でも、水本はずっと幸せである。俺はずっと恐怖である。ずっと早く帰りたいと思い続けている。どんな小さなきっかけも逃したくない。もちろん水本も一緒に、2人で帰るきっかけだ。雨がやんだと聞いて、ここぞとばかりに切り出すと、思いがけずモリヤが「しおどき」と言った。一人になりたいなどと。

水本が心配する。モリヤが大丈夫だと答える。そんな2人のやり取りを見つつ、俺は又しても分かってしまった。正直キツイと言ったモリヤの気持ち。モリヤは、そうとうにかき乱されている。水本の言動によって、前後左右にめちゃめちゃに振り回されている。そりゃ、心疲れるわなァ···。くったくただわ。振り回されての強烈な喜びもつかの間、それを自制するなどと、地獄か···。

モリヤは、疲れたのは俺のせいなどと言ったが、いや違うだろ!! 明明白白に水本のせいだろ!! モリヤは水本のせいではないと断言していたが。モリヤもウソをついたのか? まさか本心か?? そして、水本がカウだと言ったが··· ”カウ“? 何なのか分からない。水本も分かってなかった。牛?だって。アハハ。なんだよ牛って。 カウ···ねぇ? 過···浮? 過ぎるほどに浮わつかせる存在、とか?

俺は尋ねることをしなかった。それより何より、早く帰りたいのだ、去りたいのだ。聞いて又、怖いことを言われるのは、イヤなのだ。

でももっと、それよりもっと怖いことがあったんだよ。いや分かるよ。モリヤだって、とんでもなく水本を帰らせたくなかったんだ。とんでもなく帰らせたくないが、帰らさなければ苦しくてたまらなかったんだ。だけどそれでも、俺と2人で水本を、家から出すのが悔しすぎたんだろう。せめても1ツ、もう1ツだけ喜びを得たい、というのか、それとも俺に一矢報いたいという表現が正しいのか···

前にモリヤが言っていた。水本の口がアイシテルと動くところを見たいと。

「水本に、“アイシテルって言ってみて”とぼくが言ったら、きっと水本は”アイシテル? なんで?“って言うよ。」

本当に、そのまんまだった。そのまんますぎて恐ろしい。想像の通りに、欲しかった言葉そのままに水本の口が動いた時、モリヤの心情はいったい·····

よくぞ、よくぞ扉を閉めてくれた。閉めた扉の中で、モリヤから何か恐ろしいものが噴き出している光景が頭の中に広がって、水本を必死の思いで掴んだまま俺は、動けなくなっていた。

水本が俺の手を叩いてくれるまで、ほぼ気絶状態と言っていい。我に返っても、しばらくドキドキが止まらなかった。水本が笑わせてくれたので、ようやく息がつけた感じ。

けれども既に次の恐ろしい不安の波が押し寄せてきていて、俺はそれを振り払いたくて、水本と穏やかな、平和な、幸せな約束を、交わした。それによって俺は、気持ちを強く持つことができ、次の不安に立ち向かってゆける。···はず···。····· 多分。

次こそ誕生日デート?

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