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パラレル・トモダチのトモダチ

 retake.1

 わかってる。ヘンメイがゲーム内(ここ)にいる限り、誰も殺されない。

 現実に戻りさえしなければ、我慢していれば、命に問題はない。

 けど、心はそうじゃない。



 retake.2

(【椿(つばき)オイル】……あれって確か、ヘアトリートメントだろ!?)


 二人のコンビネーション技にも驚いたが、それよりも未来が使っていた金の液体に目がいく。

椿(つばき)オイル】。未来が髪の手入れ用に作り出した、日常にしか使ってなかった技のはず。ボトルに入れて脱衣所に置いてあるから間違いない。

 撥水と保湿力に特化した、椿の花から抽出して作る未来オリジナルの洗い流さないトリートメント!


「未来、それっ、あれか!? 前に斎と素体バーサスキューブありで戦った時に【ジェット】を素手で払ったのも!」

「そう、髪をくくった時にそれとなく手に移してた。さすがに生身であれを受ける自信はなかったからね」


 未来の肯定に俺は唖然とする。

 キューブで作り出した技でも、素手でどうにかできるやり方があるんだと思ってずっと水道と睨めっこしてたのに。

 なんで俺はできねぇんだろってずーっと触って弾いてを繰り返してたのに!


(母さんに断ってまで水を使う必要なかったじゃねぇか!)


 帰ったら全力でごめんなさいだ。俺がバカでしたと素直に謝る決意を固めると、未来がふらつく。

 ハッとして倒れかけた体を支えた。


「どうした」

「大丈夫。ごめん」


 未来はすぐに俺から離れる。だけど、明らかに顔色が悪い。ついさっきまではなんともなかったのに、急に不調が見え始めた。



 retake.3

 ……未来と俺以外、やられた。


 わかってる。ここでHPがゼロになっても死なない。反転の技で体力ゲージを全部削られたあいつらは、今ごろ現実に戻ってやらかしたと思ってるはずだ。問題なのは……


『どいて、ナイトくん。どいて』

「やめてくれヘンメイ。頼む、未来を殺さないでくれ」


 元に戻せていないヘンメイが、未来に執着しだしたこと。


「やめてくれヘンメイ。頼む、未来を殺さないでくれ」



 retake.4

『……メイは殺す。ハズレを殺す。命令、受けた』

『主君との絆、切られた。代わりに命令、受けた』


 カタカタと震える手が、俺と未来の前に突き出される。

 その手に生み出された剣も、同様に震えていた。

 艶やかな銀に映るのは、涙を溢れさせたヘンメイの顔。


『逃げて。メイ、殺したくない』


 剣が走る。

 切っ先が一度横に向いて、薙ぐ。

回禄(かいろく)】を突破したヘンメイは、泣きじゃくっていた。


「お前が誰かに命令を受けたのは知ってる。未来がお前になにかしてしまったのもわかる。けど、未来は……最初から、お前を理解しようとしていたはずだ」

「今だってそうだよ。先陣切って、お前の幸せを願って上に噛み付いた。お前をできるだけ、◼️って」

「お願いだヘンメイ。未来を殺さないでくれ。俺は、お前を恨みたくない」



 retake.5

 いつからかはもう覚えてないが、ヘンメイは守護者(ガーディアン)を使わなくなっていた。

 さっきの水の弾丸だって、あの銀の扉を使えば全部とは言わなくてもある程度は消し飛ばされずに済んだはず。多分、ヘンメイは自分の意思でチビヘンメイを消されることを望んでいた。

 もう、やめてやってくれ。



 retake.6

 目の前にパネルが浮かぶ。いくつも浮かぶ。

 槍を作って体を支え、無理やりに近いが立ち上がった。

 怒りはいらない。躊躇いもいらない。



 retake.7

 考えられる理由の全てを頭に広げて、一つずつ否定する。

 ハッとして顔を上へ向ける。

 天井に表示された時計は14時10分。

 Death game(デスゲーム)で模擬戦を始めた時から計算すると、ゲームに入ってから四時間十分。

 鍛錬のために未来と来たあの日、恵子(けいこ)おばちゃんがカツカレーを作ってくれたあの日は、四時間という滞在時間で未来はかなりクタクタになっていた。

 なら今日だって、本当はもっと前から不調だったんじゃないか?

 それに加え、ここにいる誰よりも長い間ヘンメイと戦っていた。

 阿部の【痛み無し(ノーペイン)】で怪我は治っても、蓄積した疲れは取り除けない。

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