パラレル・斬撃と油分の弾丸
retake.1
しかも、笑える話よりも戦いに重きを置くようになった。
retake.2
どうやら食欲の方が強すぎて長谷川の意図は汲み取ってもらえなかったらしい。
retake.3
「斬っても斬っても……纏めてやる方が早いか。 斎! 【ジェット】、私に向けて撃って!」
「はっ!? いや、けどお前さっきは大きな技は使わない方がいいって!」
「大丈夫! 死人化される前に済ませる!」
retake.4
「相沢、『弾丸』!」
「──なるほどね。斎! 【ジェット】、私に向けて撃って!」
retake.5
おそらく本体を叩かない限り延々と繰り返されるんだろう。もう一度心臓を斬ることができれば状況を変えられるかもしれない。
「【火炎の剣】!」
腕では殴打の衝撃を緩和し切れない。そう思って【大賢の槍】で粘っていたところを、攻め重視の剣に切り替える。
未だにヘンメイのスピードについていけない俺は、残念ながら槍の補助がないと攻撃を躱せない。
動いたと思った時にはもう《ヒット》のパネル。体力ゲージが削られている。
殴られるのも斬られるのも痛いけど、そこは我慢。
できるだけ周囲の駒を使いながらヘンメイへ近付いて、飛びかかる。
retake.6
刀を振りつつ目を輝かせる未来。
残念だったな長谷川。食欲と鍛錬バカの未来がヤキモチなんて焼くはずないだろ。
retake.7
「んっ……!? マズイ、コイツら心臓が出来てきてる!」
斎の驚嘆。
殴られて外れた肩を感覚ではめ直した俺は、その光景を見て戦慄した。
チビヘンメイの体の一部に光が集まって、その光が微細な青い欠片にゆっくり変化している。紛れもなく、死人の心臓。
固有の死人になりかけている瞬間だ。
(マズイどころじゃない、最悪だ!)
胸騒ぎ。額に汗が滲む。
もしチビヘンメイ一人一人に完全な心臓が出来上がったとして、強度が本物と同じくらい強かったら?
斬れば斬るほど固くなる性質を、あいつらも持っていたとしたら?
数え切れない量のチビたち。それを一人ずつ粒子レベルまで粉砕するなんて、不可能に近い!
「だめ、完全に仕上がる前に止める! 斎、私に向けて【ジェット】を撃って!」
「はっ!? いや、けどお前大きな技は使わない方がいいってさっき……っ!」
「心配してる暇はない、死人化される前に終わらせる!」
何か閃いたらしい未来。
けど、手を翻すだけでこちらの技を死人化させると未来は言っていた。多分その能力は、目に書かれていた文字が今見えていなくても使えるはず。
「【難燃の紐】!」
続けて襲いかかってくるヘンメイの手を、燃えない紐で縛り上げる。
あまり痛くないように、彼女がつらくならない程度を意識して、けれど動かせないように。
「──ありがとう」
未来の小さなお礼の言葉。
続くようにして、斎から螺旋状の水が未来へ向かって放たれた。
retake.8
「ありがとう、隆」
殴られて外れた肩を感覚ではめ直した俺の、すぐそばで。柔らかなお礼の言葉に次いで、圧縮した螺旋状の水流、【ジェット】が、隣にいる未来へ向かって放出されていた。
「【椿オイル】」
俺は目を見開いた。
未来の手に金色の艶やかな液体が纏って、斎から飛んできた水流を力いっぱい殴ったから。
ただそれだけで、斎の【ジェット】が細かく分割されて、勢いは強いまま広範囲へ飛んでいく。
まるで弾丸のように、金の液体を纏った小さな螺旋状の水が、周囲のチビヘンメイを残らず無に帰した。
retake.9
「けどお前、手を振ったら死人にされるから大きな技は使わない方がいいって言ってたろっ?」
「さっきも心臓を斬った直後は死人化されなかった。多分治癒に専念してるからだと思う」




