パラレル・使わなかったハズレシリーズ①
「相沢を庇いながらだと、土屋が全力を出せない。かと言って相沢をゲーム外へ出してしまうと、奴が同じように外へ出てくるでしょう」
「……阿部が、いてくれたら」
「実はさ……新しいキューブ、もう完成してるんだ」
「えっ?」
「ごめん秀、言ってなくて。使用者への安全と、上手くいくかどうかきちんと確立してから伝えようと思ってた」
「けど……まだ全然試せてなくて。ちゃんと使えるなら多分相沢の熱を取り除いてやれる。けど……もし、ダメだったら、二人とも……」
「応えてくれるよ。お前の思いに」
斎が立ち上がった。
「現実に戻る」
「んで、どうする?アイツどうやって倒そうか」
「それなんだけどさ……」
「あの死人……ヘンメイって言ったか。本当なら善良な死人なんだろ?」
「なんでこうなってるのかわかんねぇけど……もし、今こうしてるのが自分の意思じゃないとしたらさ。どうよ」
「どうって……そりゃ、かわいそーだけど」
「未来もさ、理解しようとしてただろ。怒ってたけど」
「話聞いてやりたい。聞いて、どうにかできるならどうにかしてやりたいなって思うんだけど」
俺がそこまで言うと、長谷川は苦い顔をして、一言。「……はぁ?」
「あっきれた。つっちーさぁ、未来ちーこんなにボロボロにされて、加奈もヤバい状態にされて、人も二人殺されてんのよ?なのにアイツの心配なわけ」
「だ、だってしょうがねぇだろ!?こいつのそばで育ってんだから俺は!」
しょうがねぇだろ、死人の気持ちファーストの未来が隣にいるんだぞ。
「……で、作戦あるんでしょうね」
「えっ?」
「のってやるって言ってんのよ。つっちーのーーにさ」
「というか、僕の意見は求めないんだね二人とも」
「「……失礼しました」」
「それでさ、これ」
「ドロップアイテム?」
「うん。模擬大会してた時に阿部と戦って、勝った時に貰ったやつなんだよな」
「使えんじゃないかと思って」
「……ありだね。いいんじゃない」
「ただ、鍵型なんだよな。多分直接差し込まないと使えない。ヘンメイに接触する必要がある」
作戦を立てながら、
ぐー。
「……ねぇ」
「ん?」
「お腹すいた」
「……それ、今言う?」
「すいたものはすいたんだもん。だって今お昼時よ?模擬大会終わったらおいしーいご飯が待ってるはずだったんだもん……」
「みんなで……お昼食べたかったのにな」
「今度さ、改めてメシ行こうぜ。阿部の快気祝いも兼ねて」
「つっちーのおごり?」
「え」
「そうだね。言い出しっぺに払ってもらおう」
「はっ!?き、聞いてたかお前らっ!?快気祝いだぞ、阿部はともかくなんでっ」
「メシ行こうって言ったのはつっちーだもーん。財布係よろしく。アタシ焼肉〜」
「ちょっ」
「僕はお寿司。回るやつでいいよ」
「聞けよ二人とも!?」
二人が笑う。
「お寿司いいねぇ。アタシは大トロが好きでさ」
「何言ってるの。至高は中トロでしょう」
「大トロ!」
「中トロ」
二人が睨み合う。
そして、くるりとこちらへ向いた。
「つっちーは!?」
「えっ?」
「土屋はどっち。中トロと大トロ!」
ずい。
近い。近い。
「加奈は、たまごが好きみたいよ。前に言ってた」
「元気になったら、たくさん食べてもらわないとね」
「……うん」
『見つけたよー少年少女』
「秀ッ!」
「大丈夫!いいから相沢を隠して!!」
「つっちーはここで少し見学しときな」
「は?なに言って……!」
「つっちーにはつっちーならではの戦い方があるでしょ。アタシらの戦い見て相手の動きしっかりインプットしな。結局最後はつっちーがどうにかしないといけないんだからさ」
「今回の作戦、全部アンタにかかってんだからね。ミスったら焼肉なんかで済ませないから、覚えてなさいよ」
「あと、未来ちーにこれ以上怪我させないこと」
「……お願いね。」
想像しろ。神の名を持つ炎の盾を。
今まで以上に強く、強く、作りあげろ。
「──【回禄】」
いつものような赤色ではなく、静かな青色の炎の球。
未来の髪が、肩からさらりと落ちる。
その瞬間、ハッとした。
「ごめん未来、ちょっと触るぞ」
【回禄】の一部に切り目を入れて腕を突っ込み、未来の髪の毛に触れる。
少し握るようにして手のひら全体にーーしたあと、奴からの攻撃でできた水たまりへ手を突っ込んだ。
「……やっぱり」
閃いた。あの水流を突破する方法を。




