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83/176

パラレル・朱雀⑴

 retake.1

『死人一体で色々できるので、利用しないテはない……といったところですかね。ただ、持ち主がその場にいないので扱える能力はかなり狭まっていますよ』


 retake.2

 斎が反転の技について共有する。

 けれど国生先生に動揺は無かった。


 retake.3

『皆さんもう見たと思いますが、ヘンメイの能力はゲームに因んだもの。世間に出回っているゲームなら何でも能力として使えますが、カードゲームを元にした【手札】を主な戦法にしています』


 retake.4

『とまぁ、そんなわけで。皆さんが耐えられそうなら、このまま細かい説明をさせていただきたいのですが……よろしいでしょうか〜』

「未来、どうだ。いけるかっ?」


 負荷を一身に受けている未来へ聞く。

 額には汗があるものの、【木製銃(もくせいじゅう)】を増やして吸引力が二倍になったのはかなり大きいらしい。

 にっと笑顔を作った。


「大丈夫。お願いします、あいか先生!」

『ありがとうございます〜。では早速……と、あら? あぁ、一旦代わりましょうか? ……えぇ。どうぞ〜』


 いざ話に入るかと思いきや、先生の声が少し遠くなる。

 誰かとなにか話してるっぽい。内容は聞こえなかったが、電話の向こうから今まではなかった戦闘の音がした。


『──弥重です』


 すっ、とみんなの空気が締まる。

 思いもよらない人物の、とても静かで厳かな声に、背筋がしゃんと伸びた気がした。


『こちらの不手際で君たちを危険に巻き込んでいること、本当に申し訳ない。本来なら死人の使用者、もしくは精鋭部隊に対処させるべきだけど、本人はわけあって今は音信不通。みんなも任務に出ていてすぐには応援に行けそうにないんだ。本当にごめん』


「み、弥重先輩が謝ることじゃっ……」


『いや、使用者のミスは僕の指導不足だから。同じことだよ』


 尊敬する凪さんに謝られたのが◼️、斎は

 凪さんが悪いわけじゃない。だけど、上に立つものとしては◼️ない義務なのかもしれないな。


『個々の能力を鑑みて、ゲーム内にいた他のマダーは撤退させてもらった。死の訓練場にいた君たちの友だちも避難してる。……司令官が動いてくれてるから、周りのことは心配しなくていい』


「凪さん、加奈子は」


『無事だよ。施設には完治薬(かんちやく)を常備してるからね。念のため安静にと言われたけど、またゲーム内へ行こうとするからってクラスメイトに止められているらしい』


 大丈夫だよと、みんなを安心させるように凪さんは再度伝えてくれた。

 責任感の強い阿部を必死に押さえてくれてるのは、多分加藤なんだろう。頑張ってもがくもロックされて動けない阿部の姿が目に浮かぶ。

 ……良かった。元気で。


『そこにいる死人については、あいかさんがよく知っている。安心して任せてほしい』


 ◼️して、よろしくお願いしますと最後に告げた凪さんは国生先生を呼んだ。

 背景の音が変わる。戦闘の音は聞こえなくなった。


『ふふ、律儀ですね。九州から連絡だなんて』


 通話の声が先生に変わる。

 凪さん、大変なのに連絡くれたのか。

 しかも回復まで……


「すげぇ……」

「うん。さすがだね」


 状況が状況なのに、凪さんの声やすごさで興奮してる。

 ◼️


『では皆さん。よく聞いてください』


 国生先生の前置きも、心無しかハッキリとした◼️。

 みんながしっかり聞くモードに入る。


『そこにいる死人の名前は、ヘンメイ。捨てられた()()()()()()から生まれた、ゲームの死人です』


 先生は◼️になって説明していく。

 あの死人……ヘンメイは、精鋭部隊所属のとある人の持ち物で、使い魔的存在なのだと。

 死人を倒した際にできるガラス玉をキューブの能力でまた死人に戻して、操って戦っているらしい。

 直接自分の能力としてガラス玉を使える未来とは少し違うみたいだ。


『そのためにガラス玉をいつも本部に送っていただいているのですが、戦い方に賛否があるため公にはしていないのですね』


 額にある赤い朱雀の模様。それが仲間の印だと◼️補足される。


『皆さんもう見たと思いますが、ヘンメイの能力はゲームに因んだもの。何でもありですが、主に攻撃として使ってくるのは【手札】というカードゲームから引っ張り出した大砲や剣、シールドをイメージしている守護者(ガーディアン)。持ち主がその場にいないなら扱える能力も狭まっているはずです』


「先生、他にも。相沢が見ていますが、奴はこっちの技を死人に変えるそうです。反転の能力を使って、ついさっきは全員まとめて殺されそうになりました!」


 斎が考えていた反転の技について共有する。

 けれど国生先生に動揺は無かった。


『それがキーです。オセロという酷似した能力には覚えがありますが、あまりに危険すぎるため◼️が彼女の能力、記憶共に消去させている。現在の彼女は使えないはずの技なのですよ』


『更に、彼女の言動。性格こそいつものヘンメイのようでしたが、一部一部、裏に何者かがいるような話し方でした。反転の技同様、ヘンメイ自身が操られていた線が濃厚かと思われます』


「」

 ふむ、と呟いて、またすぐに明るくなった。


『ちなみにですが、ヘンメイは心臓を潰しても死にはしません』

「えっ?」

『ミクロレベルで破壊しないと死にません。仲間にした際、結衣さんがそういうふうに作り替えていますぅ』


 ごめんなさいね〜と通話を始めた頃と同じくらい◼️で先生は笑う。

 結衣さん。俺が知っている中でその名前の人物はたった一人。

 まさか……まさか、な。

 ちらと斎を見てみる。……顔面蒼白。

 可哀想に、今にも吐きそうな顔をしていた。


「ごめん土屋、みんな……犯人、俺のオカンです……」

「ど、ドンマイ斎……」


 顔を手で覆って完全に下を向く斎を慰める。

 ミクロレベル。そりゃ一回斬った程度じゃ再生するよな。


『けれど、結局死人の弱点が心臓であることに変わりはありません。土屋くんが一回斬ってくれているので、ヘンメイの再生力も随分落ちたはずです』


「え……」


 こちらからはまだ何も言ってないのに、先生は見ていたかのように俺と未来へ礼を言った。

 俺と同じで少し驚いている未来を見る。



 retake.5(連絡あいかだけバージョン)

 斎が考えていた反転の技について共有する。

 国生先生はここにきて初めて動揺の色を見せた。


『ヘンメイにそんな力はないはずです。オセロという酷似した能力には覚えがありますが、あまりに危険すぎるため◼️が彼女の能力、記憶共に消去させています』


「あいか先生っ! あの子、ウミツキに力を貰ったって言っていました。こんなにも強いなんて思わなかったよって……!」


 ──ウミツキ?


「いっ……!」

「土屋っ? どうしたの」

「だ、大丈夫だ。なんか一瞬だけ頭痛が……」


 頭をでかい針で刺されたような痛みが、ほんの一瞬だけあった。

 ウミツキ。なんだろう、どこかで聞いた覚えがあるような、ないような……


『……わたしは初めて知る名ですね。けれど……そう。なら操られていた線が濃厚か……』


 先生の声が少し小さくなる。

 ふむ、と呟いて、またすぐに明るくなった。



 retake.6

「あいかセンセー、その持ち主の人って、今は?」

『寝ています』

「……は?」

『寝てますねぇ。昼がめっぽう弱くて、普段から昼夜逆転生活をしているので』


 今頃夢の中だと、固まってしまう長谷川に先生は申し訳なさそうに謝った。


 retake.7

『未来さんも、話を聞こうとしてくれてありがとうございます。耳と手首……他にも怪我はかなりあるでしょうけれど、どうか、労わってあげてくださいね』


 こちらからはまだ何も言ってないのに、先生は見ていたかのように俺と未来へ礼を言った。

 俺と同じで少し驚いている未来を見る。

 服は長袖だからさっきはよくわからなかったけど、今は服がはためいていて中がちらちら見える。

朝顔(あさがお)】の弦で固定している未来の右手首は、赤く腫れ上がっていた。


「あいか先生……あの、こっちの状況どこまで把握してるんですか? なんだか、全部見てたみたいに言ってますけど」


『ふふ、あながち間違いではありませんね。技で勝手に観させていただいていたので』



 retake.8

『隆一郎』

「……はい」


 優しく、けれど真剣な声で俺に呼びかけた凪さんは、一呼吸置いて俺に問いかけた。


『帰らなくても、大丈夫だね?』


 勝てると信じてくれている。


「大丈夫ですよ。相手わけわかんないくらい強いですけど、倒せなかったら凪さんの課題なんて絶対クリアできないので」

『ふふ、さすが。肝が据わってる』

「誰が師匠だと思ってるんですか?」



 retake.9

『敵となってしまったのなら、話は別です。何が起きて今こうなっているのか、情報を全て吐き出させた上で討伐。これは避けられません。味方側になった際、司令官も最初に伝えています』


「情報を吐き出させるって……完全に理性ぶっ飛んでるのに、どうしたらいいの!?」


『ふふ、簡単ですよ。すこぉしだけ……遊んであげたらいいんです』


「あ、遊ぶ?」


『ええ』


『ヘンメイは構ってちゃんなんですよ。なので今広げているゲームで遊んであげるのが一番です、

『ふふ。そこは適任がいるでしょう?未来()()、お願いできますか?』


「あいか先生、ごめんなさい。多分ですが、私はもうあの子から話を聞けないと思います。一度拒否されてしまったので」

『あら……珍しいですね。焦りましたか?』

「はい。◼️な言い方に、つい」



 retake.10

「隆……っ! ごめん、右側の銃、一緒に支えてっ!」

「お前、右手パンパンじゃねぇか!

「さっき、折れちゃってね。【朝顔(あさがお)】が無いと手使えないんだ」


 retake.11(連絡凪だけバージョン+怒られる)

「俺ら命懸けなんですけど!? なんならついさっき三途の川見たんですが!!」

『僕らもそうだ。九州(こっち)も死人で溢れかえって、今の連絡だってギリギリなんだよ!』


 もっともな返答を凪さんはしてくる。

 電話の向こうから聞こえる声や戦闘の音。数日前に凪さんと話した時の様子から思っても、今連絡してきてくれているのがどれだけ必死なのかは想像がつく。

 こっちは数時間前まではゲームで遊んでいて、その間も凪さんたちはずっと戦っていた。

 そんな中で、『じょう』の子からされた連絡ですぐさまこちらに連絡してくれている。

 むしろ感謝すべきだろ、俺!


「ごめんなさい。指導お願いします!」

「うん、よく聞きなさい」

「はい!」


 奴からの攻撃はやはり目で捉えられない。たださっきよりも強い殺気があるからそれを頼りにどうにか攻撃の範囲を予想して、みんなでフォローし合いながら話を聞いた。


 心臓を斬るだけじゃヘンメイ持ち前の再生力でどうにかしてしまう。粉砕して粉々にしないといけないと。



『そもそも、プロジェクトに参加した時自分で言ったんじゃないのか! 命のリスクがあってもやると!』

「それはっ、自分のことであって周りのことはまた別で!」

『◼️なんて大口を叩いていたのは誰だ!』


『ヘンメイを正気に戻せ。情報を絞り出した上で討伐、それ以外は許さない! いいね!』


 横暴、横暴! けど正論!!


(くそカッケェ……!)


 反論する気なんてもう起きない。

 つい口角が上がって、了解ですと返事をしていた。


「精鋭部隊のこと、『じょう』の子のことも、あとで全部教えてもらいますからね!!」


 一方的に約束を取り付けて、通話を切る。

 通信機をポケットにしまいこんだ。


「おい斎、お前の大好きな凪様からの命令だ。正常に戻してから討伐しろとよ!」

「いぃ……っ!? 普通に討伐じゃダメか!?」

「ダメだ、怒られるぞ!」


 心臓までは再生してないだろうって話だ。何度かやれば、確実に再生力は落ちるしスピードも落ちる。


 retake.12

 本音を言うと、手助けしてもらいたかった。

 だけど電話の向こう側の声や戦闘の音。あと、数日前に凪さんと話した時のことを思うと、俺たちが苦戦するからといってこちらへ戻ってきてもらうのは、気が引けた。

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