パラレル・ハズレ⑧
retake.1
「だからお願い」と頼みながら、膨大な量を取り込んでパンパンに膨れ上がったライフルと新たなライフルを器用に入れ替える。
二つ目の【木製銃】で銀のエネルギーを吸収し始めた。
retake.2
掃除機のごとく銃口から技を吸い込んで、未来の体が後ろに下がってくる。
「未来ちー頑張って!」
「援護する。斎、そっちから【津波】! 僕はこっちから……」
「待って二人とも! あの子、こっちの作り出したものを死人化させてくる。大きな技はできるだけ使わない方がいい!」
手助けに入ろうとすると、長谷川に体を支えてもらった未来が俺を一瞥した。
「特に隆、【炎神】は絶対使わないで! さっきは全開じゃなかったから操られはしなかったけど、もしあの技を死人化されたら鎮静が難しいと思う!」
「相沢、【過度を慎め】も効かないのか!?」
「それは効くかもしれない! だけど、もう使わないって決めた!」
斎の問いに答えた未来は右手をライフルから離す。
二つ目の【木製銃】を新たに作り出した。
「やっぱり私は、どんな死人でもわかりあえると信じたい。たとえ理性を失っても、憎悪で人を殺そうとしていても! 哀しみを理解して、できることは全部やって、あの子たちが望む本当の生き方を一緒に探したい!」
「だからお願い」と頼みながら、膨大な量を取り込んでパンパンに膨れ上がったライフルと新たなライフルを器用に入れ替える。
二つ目の【木製銃】で銀のエネルギーを吸収し始めた。
「……らしさが戻ってきたじゃねぇか」
「えっ?」
今現在危ない状況にも関わらず、あるかもしれない希望に瞳を輝かせる。
それでこそ、相沢未来だ。
retake.3
俺の後ろで屈む斎が、「そうか」と呟いた。
「相沢が頭につけてたピーマンの花言葉は、確か海の恵み。死人の目玉に書いてたreversalの訳は、反転。反転されて文字の配列を逆にしても、恵みの海。技としての意味合いはどちらも変わらない」
「人は海から生まれたって説がある。だから、死の技と生きる技のぶつかり合いで相殺してくれた?」
「ああ。反転って言うなら、地獄の海とかで余計に危なくなりそうだけど」
「まぁ、そこは未来ちーだからでしょ」
「◼️と心の底から考えているあの子が、海に対して死のイメージを持つはずがないから」
retake.4
「それに、そろそろだと思うしな」
「なんのこと?」
秀に聞かれて答えようとすると、いいタイミングで俺の右ポケットの中身が震えた。
「予想通りだね、隆」
「おおよ」
口の端を上げた俺は手を突っ込んで、取り出した。
「……一般人が多い休日の昼間。そんな中で死人が暴れてるなんてさ、本部が動かないわけねぇんだよな」
「ほれ」と秀に見せてやったのは、ゲーム内のデータとして俺の体や服と一緒に転送してくれていた、昼夜問わず持ち歩いているイヤーカフ状の通信機。
『緊急回線』と小さな画面に映し出された、◼️だ。
retake.5
「相沢の説明で腑に落ちた。あの死人の目玉に書いてたreversal、意味は『反転』なんだよね」
「相沢がさっき髪につけてたのって、ピーマンの花でしょう。花言葉は海の恵み。反転されて文字の配列を逆にしても、恵みの海。技としての意味合いはどちらも変わらない」
「えと、つまり?」
「人は海から生まれたって説がある。だから、死の技と生きる技のぶつかり合いで相殺してくれたわけさ」
自信ありげに秀は解説した。
反転って言うなら、地獄の海とかで余計に危なくなりそうだけど、そこは未来だからこそなんだろう。
◼️と心の底から考えている未来が、海に対して死のイメージを持つはずがないから。
「相沢の勝利だね」
「ふふ。気持ちの面でだけ、ね。私だけじゃ気付かなかったし」
retake.6
俺の右ポケットから何か音が漏れていた。
そこに入っているのは、俺たちが昼夜問わず持ち歩いている通信機。
そうか、デスゲームの中でも使えるのか!
確認すれば良かった、外部と連絡が取れたのに。
考えてみればそうだよな、データとして送られてるのは自分とキューブ。そうでなければ素っ裸でゲーム内に入ってしまうわけだから。
とにかく応答しようと、イヤーカフ状の通信機を耳にかけた。
『隆! 良かった、繋がった!』
連絡の主は聞き慣れた声。
焦りを前面に出した凪さんが、「よく聞きなさい」と◼️
retake.7
未来の前に、黒い影。
「だらぁあっ!!」
【大賢の槍】を瞬時に生成、未来の前に滑り込ませる。
衝撃が手にまでビリビリと伝わってきた。
「隆、見えるん!?」
「見えねぇ! けどさっきよりも瘴気が強いせいか、なんとなく肌がザワザワしてわかる感じだ!」
槍を大きく回して奴を弾き飛ばす。
見えた奴の目には、刺さっていた槍がなくなっていた。
「目潰ししたら反転されないって思っていいよね? 再生される前にやるよ!」
「未来ちー。アタシ、つっちーのフォローに入るわ」
「労りなよ、体」
「……ありがとう。凛ちゃん」
retake.8
「隆、止血して」
「血が出るだけでもHPが減るから」と、未来の【綿花】と【朝顔】の弦が、俺の左の上腕を少し締め付けるようにして◼️。
転がった際の勢いでずるむけていたみたいだ。
「ごめん、本当なら【治癒】で治してあげられるはずなんだけど……頭、回らなくて」
「いや、むしろこれだけですげぇ助かる。お前の方がやべーんだから気にすんな」
未来の横に表示されている体力ゲージに表示されている数字は、2。
0も同然だった。
「ふふ……疲れてても【痛み無し】を使える加奈子が羨ましい。想像力豊かなんだね」
頭にしっかり想像できないと技を生み出せないキューブの特徴は、あまり怪我を治すことのない未来にとって、◼️
そこに追加された体の痛みや疲れは、もっと顕著なものにさせてくる。
青白い顔で笑った未来は、大きな【玄翁】を作り出して死人へ投げる。
銀の扉に吸い込まれてしまう槍と風車の後を追って、それも亜空間へ消えていく。
『ァアアアッ、ギキキキィッ』
「……ッ耳が痛いな」
斎が水を撃てる銃を持ったまま片耳を塞ぐ。片手で【津波】を起こした。
「待って、斎! それは使わない方がっ!」
未来の止めに斎がえっ、と声を出す。
斎が起こしたはずの【津波】に、青い大きな目がついた。
「な……ごめん!?」
「未来ちー、どういうこと!?」
「あの子、こっちの作り出したものを死人化させてくる! だからみんなも得意な技はできるだけ控えて! 特に隆、【炎神】は絶対ダメ! さっきは全開じゃなかったから操られはしなかったけど、もしあの技を死人化されたら鎮静が難しいと思う!」
こちらへ近寄れないよう◼️で牽制しながら、未来はダッシュで説明した。
「【過度を慎め】は……もう使いたくない。もし隆の炎まで死人として悪意を持っていると知ってしまったら、私はあの子たちを信じられなくなる」
「だからお願い」と、未来が◼️していると、秀が何か納得したように頷いた。
retake.9
【過度を慎め】が使えたら、いいんだけど……多分今の私じゃ、使えないから。
もし隆の炎まで、死人として悪意を持っていると知ってしまったら、私は……あの子たちを信じられなくなる。
retake.10
「かはっ……う、ゲホ、ふ……っうぇ!」
吐き出したのは胃液。咳が止まらないまま動いたのも相まって、◼️
retake.11
(反転……全てを逆にする。水の中で呼吸ができなくても、相手のわあが発動してる場合それすらも逆になるから呼吸ができる)
「だけど、あの世界と相殺されたみたい。波で駒まで流せたら一番良かったんだけど」
retake.12
「『海の恵み』……人は、海から生まれたって説がある。
「絶対的な海の力を前に、あなたの殺しの技は効かない」
理性を失ってしまった死人へ、未来は説明する。
相手は言葉まで失ってしまったらしい。なんの返答もせず、瞳孔を■にして未来を睨んでいた。
(反転……全てを逆にする。水の中で呼吸ができなくても、相手のわあが発動してる場合それすらも逆になるから呼吸ができる)
今の一瞬で、相手の新たな技を理解して、俺たちを守った。
想像力、理解力、対応力。
体はもう疲弊し切ってるはずなのに。




