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パラレル・ハズレ⑦

 retake.1

 どうにもならないこの死の世界で、未来だけが、突破する方法を持っていると知らせるために。


 retake.2

 目も開けられなくなってついに限界かと思われた頃。


 retake.3

 本来できるはずの、できなければならない生きるためのシステムが、壊れていた。



 retake.4

「……退避」


 未来の小さな声が、逃げるべきだと告げる。

 けれど動けなかった。誰一人。

 斬られたところで痛くも痒くもない。そう言われそうなほど大きくなった負の感情と、地面を張っていた状態から立ち上がって笑う姿に、誰もが恐怖していた。


『キ、キキ……アリ、アリ……ア、ト』


 奇怪な声が耳を触る。

 今の一瞬で俺との距離をゼロにした死人は、笑って、感謝のような言葉を口にした。


 部屋が白と黒の二色に変わる。

 体に違和感。喉と胸に手を当てる。

 何も付いていない。代わりに、何も動いていない。

 脈を打っているはずの■や、呼吸をする際の僅かな喉の振動も。なにもない。

 声が出ない。息ができない。

 止まっている。

 心臓と呼吸が、俺の意思に関係なく止まっていた。


 ──バイバイ少年少女。ハズレもろとも、生と死が逆になる世界へ……生きることを許さぬ絶対の死の世界へ、行ってらっしゃい。


 そう、奴の口からではなく脳に直接響いた直後。

 モノクロに塗りつぶされた世界に、神秘的な青色が差し込んだ。

 一瞬のことで、なにが起きたのかわからなかった。

 だけど体が楽になってくる。

 息ができるようになって、鼓動が戻ってきた。

 目をうっすらと開けてみると、青い水が球状になって俺たちを覆っていた。


『ウ、ァ……?』

「逃げるよっ!」


 なにが起きたかはわからない。

 だけど、きっと次はない。

 狂気に染まる死人から一歩下がった長谷川が、全員を風で包んで部屋を脱出した。


『ゲ、ウナ……ニェルナァアアアアアア!!』


 取り残された死人の、声とも言えない雑音のような叫びが、ビリビリと追いかけてきていた。



 retake.5

(リバーサル……?)

 視界いっぱいに映る青い瞳、その下。

 左の頬から右の頬へ、鼻筋を通って浮き上がってきたreversalの文字を、頭だけはフル回転して読み上げた。


 retake.6

「……そうだ」

 未来が呟く。

 何が起きたか恐らく誰もわからないまま、未来だけは左手で自分の髪を触る。



 retake.7

「わるい長谷川。止まり損ねた」

「ごめん、ぶつかった」

「淡白すぎない? 二人とも。大丈夫かの一言も無し?」


 ジロリ、と睨みながら、痛いのだろう背中に手を置いて長谷川は文句を垂れた。


「ま、わかるけどね。もっと重傷な子が目の前にいるわけだから」



 retake.8

「道はぜんっぜんわかんなかったけど、戦ってる音はずっと聞こえてた。未来にしちゃあ、珍しく激しい戦い方してんなって思ってさ」

「でかい音出すわ、揺れるわ。無意識に自分の居場所知らせてくれてた」

「……遅くなってごめんな」


 ──パン、パン。

 死人が手のひらを叩く。


『はいはい、仲良しごっこはそろそろ終わりにしてくれる? メイは今そいつと命のやり取りをしてるんだよ?』



 retake.9

 頭に一度手を置いてから、そっと頬に触れる。

 どれくらい強く殴られたんだろう。

 色が変わって、腫れ上がった頬は熱を持っていた。


 retake.10

 穴からひょっこり、顔を出した長谷川は慌ててこちらへ駆け寄ってきた。その後ろから斎と秀も出てくる。

 どうやら俺が早く未来のヘルプに入ろうと途中で一人駆け出してしまった後は、長谷川が風でみんなを運んで来てくれたらしい。


 retake.11

「土屋、一旦退くぞ!!」

「あ、ああ!」

『逃げるな……』

『逃げるなぁあああああああああアアアッッ!!』

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