パラレル・ハズレ④
retake.1
「それ、でもっ……!」
酸素が足りなくなって思考が纏まらない頭の中、使い慣れた刀を思い浮かべ、振り抜いた。
「それでも、私はあなたをわかりたい。あなたの哀しみを、理解したいと思う」
咳はしない。体力を持っていかれないように。
体の中にーーして無理やり押しとどめ、呼吸を最優先に。
【|木刀】で手首を切られた死人を涙目になりながら睨め上げる。
「わかりあえない……本当にそうだと思う? 私は今、家族として死人と一緒に暮らしてるよ」
未来の言葉に、死人の眉がぴくりと動いた。
「最初はあなたと同じように、哀しみにまみれ、怒りで我を忘れていた。だけど、心を開いてくれた」
『……何が言いたいの?』
僅かな動きを見逃さず、「あなたもそうなんじゃないの」と未来は畳み掛ける。
「あなたと共にいた主人のことが、あなたは大好きだったんじゃないの」
言い切った瞬間、視界が歪む。
殴られた。そう理解した時にはもう地面に叩きつけられていた。
左の頬が熱い。体力ゲージが減る。
死人から、『わかったような口振りを』とーーの声がした。
『お話は終わりだ。付き合うだけ無駄だったよ』
吐き捨てた死人は足裏で地面を蹴った。
retake.2
切り口から見えるゼリーのような体内が、もぞりと蠢いた。
『メイはユーみたいにーーじゃない。自由な存在なんだよ、死人っていうのはさ』
ドロドロの液体に物体が落ちたような、ドプッという音。斬った腕が生えた。復活した。
とにかくこの再生力をどうにかしなければいけない。武器を八の字に回して両端の刃で死人の表面を削いでいく。
原型が無くても、声は届くだろうか。
人の形になるまで哀しみを持って育ってしまった死人でも、心から願えば届くだろうか?




