表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/176

パラレル・ハズレ③

 retake.1

「落ち着いて。加奈子は、きっと生きてるから」


「キューブの表示が死亡になってない。加藤君の声も聞こえない。多分……今、手当をしてくれているんだと思う」


 未来の泣きそうな声が、俺に正気を取り戻させる。

「だからお願い二人とも。落ち着いて」


「嫌だよ、私は……誰も失いたくないよ」


 ふと、放心状態の秀が視界に入って、その横にいる斎と目が合った。

 一つ頷かれ、顎で未来を見ろと指示される。

 長谷川と顔を合わせ、もう一度未来の背中へ意識を向けた。

 俺たちに表情を見せない未来は、肩が動くほどに大きく息を吸い、静かに吐いてを繰り返している。

 そして、意を決したように拳を握った。


「あなたが何者なのか、私は知らない。でも……私が狙いなんでしょう。教えてくれる? 何から生まれたのか。どうしてここにいるのか。私じゃなくて、どうして他の人にも危害を加えるのかを」


 死人へ語りかける。

 混じる怒りを抑えながら、いつものように、相手を理解するところから。


 retake.2

 間合いへ入ることを許さない。

 ただ、死人の快楽の声と衝撃音だけが認識できた。


『きははっ!いいねいいね。やっぱり強いヤツとやるのはいい!!』


 retake.3

 更に文句をぶつける。

 だけど何も返ってきやしない。

 だって、未来はそこにはいないんだから。

 自分から死地へ飛び込んでいったのだから。

 俺たちを来させないための、拒絶の壁なんだから。

 ──で。

 だから、なに?


 retake.4

「【木製銃(もくせいじゅう)】、(やいば)


 二つの鎌を手に持った未来が俺たちの前に立つ。

 こちらを一瞥した。


「【(はぐく)生命(いのち)よ】」

「わっ!?」


 未来の、植物の生命を生み出す技名が告げられた直後、一つの芽が俺たちを纏めて後ろへ吹き飛ばした。

 揃って地面に投げ出される。

 いきなりなんだと言おうとすると、目の前には今まで無かった樹木の壁が立っていた。


「なっ……おい、未来!?」

「ここから離れて。他のエリアにいる模擬大会参加者にも伝えて、今すぐデスゲームから退出」


 retake.5

 己の血のついた服を見つめ、放心している秀を除く俺たちは何度も未来へ抗議する。


「ごめんなさい。私は……いつも、誰かを巻き込む」

 悲しい気持ちが、木を通して伝わる。

 ──違う。

 そんなふうに思うな。

 悪いのはお前じゃない。お前を取り巻くこの世界が、ただただ残酷なんだ。


 retake.6

「弱いところ、見つけよう。力任せにやってもダメだ」


 服についた血から視線を上げ、【可視化(アイスコンタクト)】に浮かんでいた涙を拭った。


「過去に捕らわれて今すべきことをしないなんて、僕らしくない。もしもがあったら阿部にだって顔を合わせられない」


 強い瞳を持って、秀は氷像のモーションをする


 retake.7

(自分一人で背負い込む癖。いつまで経っても抜けねぇんだよな、お前はさ)


 retake.8

「闇雲に攻撃しないで、脆いところを探して。全部が全部同じ強さの防壁なんて有り得ないんだ。いくら相沢でも、三百六十度、百パーセントの力で作れるはずがない。脆い場所が絶対に存在する」


 尻を叩いて気合いを入れ、【可視化(アイスコンタクト)】に光をともす。強い瞳を持って、秀は地面に【氷河(リンク)】を張った。


 retake.9

最善が見える目(アイスコンタクト)で脆いところを探す。全部が全部同じ強さの防壁なんて有り得ないんだ。いくら相沢でも、三百六十度、百パーセントの力で作れるはずがない。脆い場所が絶対に存在する」


 retake.10

 冷静に、沈着に、ここにいる誰よりも死人に怒っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ