パラレル・ハズレ③
retake.1
「落ち着いて。加奈子は、きっと生きてるから」
「キューブの表示が死亡になってない。加藤君の声も聞こえない。多分……今、手当をしてくれているんだと思う」
未来の泣きそうな声が、俺に正気を取り戻させる。
「だからお願い二人とも。落ち着いて」
「嫌だよ、私は……誰も失いたくないよ」
ふと、放心状態の秀が視界に入って、その横にいる斎と目が合った。
一つ頷かれ、顎で未来を見ろと指示される。
長谷川と顔を合わせ、もう一度未来の背中へ意識を向けた。
俺たちに表情を見せない未来は、肩が動くほどに大きく息を吸い、静かに吐いてを繰り返している。
そして、意を決したように拳を握った。
「あなたが何者なのか、私は知らない。でも……私が狙いなんでしょう。教えてくれる? 何から生まれたのか。どうしてここにいるのか。私じゃなくて、どうして他の人にも危害を加えるのかを」
死人へ語りかける。
混じる怒りを抑えながら、いつものように、相手を理解するところから。
retake.2
間合いへ入ることを許さない。
ただ、死人の快楽の声と衝撃音だけが認識できた。
『きははっ!いいねいいね。やっぱり強いヤツとやるのはいい!!』
retake.3
更に文句をぶつける。
だけど何も返ってきやしない。
だって、未来はそこにはいないんだから。
自分から死地へ飛び込んでいったのだから。
俺たちを来させないための、拒絶の壁なんだから。
──で。
だから、なに?
retake.4
「【木製銃】、刃」
二つの鎌を手に持った未来が俺たちの前に立つ。
こちらを一瞥した。
「【育め生命よ】」
「わっ!?」
未来の、植物の生命を生み出す技名が告げられた直後、一つの芽が俺たちを纏めて後ろへ吹き飛ばした。
揃って地面に投げ出される。
いきなりなんだと言おうとすると、目の前には今まで無かった樹木の壁が立っていた。
「なっ……おい、未来!?」
「ここから離れて。他のエリアにいる模擬大会参加者にも伝えて、今すぐデスゲームから退出」
retake.5
己の血のついた服を見つめ、放心している秀を除く俺たちは何度も未来へ抗議する。
「ごめんなさい。私は……いつも、誰かを巻き込む」
悲しい気持ちが、木を通して伝わる。
──違う。
そんなふうに思うな。
悪いのはお前じゃない。お前を取り巻くこの世界が、ただただ残酷なんだ。
retake.6
「弱いところ、見つけよう。力任せにやってもダメだ」
服についた血から視線を上げ、【可視化】に浮かんでいた涙を拭った。
「過去に捕らわれて今すべきことをしないなんて、僕らしくない。もしもがあったら阿部にだって顔を合わせられない」
強い瞳を持って、秀は氷像のモーションをする
retake.7
(自分一人で背負い込む癖。いつまで経っても抜けねぇんだよな、お前はさ)
retake.8
「闇雲に攻撃しないで、脆いところを探して。全部が全部同じ強さの防壁なんて有り得ないんだ。いくら相沢でも、三百六十度、百パーセントの力で作れるはずがない。脆い場所が絶対に存在する」
尻を叩いて気合いを入れ、【可視化】に光をともす。強い瞳を持って、秀は地面に【氷河】を張った。
retake.9
「最善が見える目で脆いところを探す。全部が全部同じ強さの防壁なんて有り得ないんだ。いくら相沢でも、三百六十度、百パーセントの力で作れるはずがない。脆い場所が絶対に存在する」
retake.10
冷静に、沈着に、ここにいる誰よりも死人に怒っていた。




