パラレル・偽物でも女の子だから
retake.1
(なんだこれ……砂でできた長谷川!?)
よくわからない物体へ、とりあえず槍を突き刺してみる。しかし傷口はすぐに再生され、長谷川の体力ゲージにも変動は見られない。
攻撃に使われたのは紛れもない長谷川の【鉄扇】。その持ち主である目の前にいる物体は、まるで分身したかのように長谷川と同じ顔、形をした砂の人形だった。
攻撃の強さも同等。それでいて、こちらから攻撃を加えても再生するしダメージも入らない。
チートもいいところじゃないか。
retake.2
「「だって弥重先輩ロボを見て思いついた技だもーん!」」
「心読むな! 一緒に喋んな!!」
「「本当はもう少し終盤になってから使う予定だったんだけどねぇ。でもここでやられちゃ意味ないから、使わせてもらうよ!」」
retake.3
砂の長谷川による斬撃を躱しながら、俺は未来へ指示を仰ぐ。
しかし未来は未来で手いっぱいらしい。本物の長谷川から【鉄扇】を振るわれていた。
retake.4
言葉を同時に喋りながら、砂は俺へ、長谷川自身は未来へ【鉄扇】を振るう。
出来上がった砂は長谷川の形をしていた。まるで分身したかのように同じ顔、形。体感では強さも同じなようだ。
「くそがっ、未来どうする!? こんなの作戦の中にはねぇぞ!?」
「わ、私だってどうすればええかわからんよ! どうしたらいい!?」
本物の長谷川からの斬撃を躱しながら、未来は俺に聞き返してくる。
飛び出た関西弁は焦りの証拠。パニックになっているのは未来も同様らしい。
(凪さんじゃあるまいし、妙な技、使うんじゃねぇよ!)
驚いたことに、砂でできた長谷川は何度攻撃を加えても再生するしダメージも入らない。あくまで偽物。本体を叩かないと意味がないようだ。
「んっ……隆! 凛ちゃんの動き、同じや!」
「あ!? なんだって!?」
「同じ動き、技名やの! そっちの凛ちゃんと連動してる!」
retake.5
「アタシが考えた技なんだもの、それが弱みであることくらいちゃーんと認識してるよ」
retake.6(隆が未来を飛ばした場合)
今の短時間で未来は長谷川の相手をしつつこっちまで見てたのか? すげぇ。
「【双子】……なるほど、それなら技名の意味も納得だ! 【難燃の紐】!」
二人の長谷川が【風車】を作る動きをした瞬間、俺は燃えない紐で本物の長谷川を先に拘束する。
「未来、別々で戦った方がいい! お互い姿が見えねぇようにするぞ!」
「えっ? それってどういう……!?」
「だからっ、こう!!」
十分な説明も無しに、燃えない紐を未来と砂の長谷川の体に巻きつけ、ぶん投げた。
「わぁああああ!?」
キラーン。なんて効果音がつけられそうなほど空高く舞い、遠くへ吹き飛んでいった未来の悲鳴だけが残る。
「いいの? つっちー。未来ちーと協力できなくなっちゃうよ?」
「いいも何も、これが一番いいんだよ。何から連想したのか知らねぇが、同じ動きしかできねぇってんならもう一人の自分が見えなきゃお前も戦いにくいんだろ?」
俺の予想は当たったらしい。ほんの少し長谷川の眉が動いた。
「そりゃそうだよな。俺からの攻撃と、未来からの攻撃。どっちも同じ技と動きで防御して反撃しないといけないんだからさ」
未来は近距離攻撃に優れている。さっきもずっと【木刀】で戦っていたように、恐らく俺が放り投げた先でもその戦法は変えないだろう。
だからこそ、俺は長谷川から距離を取る。こちらは遠距離から攻撃を繰り出して、長谷川が両方の攻撃を一気に処理できないようにしてやろうという思いつき程度の作戦。だが──
「バッカだなぁ、つっちーは」
ニヤリと笑った瞬間、拘束されている長谷川の隣から、また新たに砂の長谷川が作り出された。
「な……っ!?」
「さっきみたいに動きがないと【双子】は使えないと思った? 残念。もう一人のアタシを生むイメージがしやすいから忍者のポーズをしただけよ」
拘束の意味なんてなかったのではないかというほど【難燃の紐】は簡単に【鉄扇】によって切られ、長谷川が自由になる。
「「さぁ、未来ちーがいない今。つっちーひとりでアタシに勝てるかな?」」
「未来!? なに戻ってきてんだよ!?」
長谷川の後ろから、【羽状複葉】、ソテツで全力で飛んできている未来を見つけた。しかも復活した阿部を抱えて。
「隆あかん! 緊急事態や!! 凛ちゃんも一旦止まって!!」
「ど、どうしたの未来ちー!? ていうか、もう一人のアタシは!?」
「消された!!」
俺たちの近くに勢いよく降り立った未来が、青い顔で叫ぶ。
「斎が来る!!」
言われた瞬間、水の渦が激流となって俺たちの頭部を襲った。
「うわ!?」
辛うじて避けるも、次々に飛んでくる水の攻撃。
「お、おい未来説明しろ! なにがどうなってやがる!?」
「私らが着地したところにな、丁度斎と秀がおってん! でな、砂の凛ちゃんが秀に
「うっそ、つまり精神ダメージ!? そんなのもあるの!?」
「私も初めて知ったよ! とにかくやばいって、斎はホンマに怖いから!」
retake.7(朝顔→接木の場合)
「【接木】」
「うお!?」
急に未来が俺の前に現れて、飛んできた二つ分の風車を未来の改の【木刀】が切り裂いた。
何事かと思えば、俺の左肩に植物の芽が生えていた。物理的に移動手段である草木を俺に作り出して、こちらまで瞬時に移動してきたらしい。
retake.8
「やっば、アタシ怒らせちゃったらしい!」
「おい長谷川、一旦休戦するぞ! 斎をどうにかしなきゃお互いまずいだろこれ!」
「わかってるよ! わかってるけど、本体が未来ちーと戦ってるから勝手に技が……! 【疾風】!」
俺との会話が途中で終わり、長谷川は風を体に纏って空中を飛び出した。
「どこ行くんだよ!?」
「あ、アタシの意思じゃないってば! 未来ちー! ストップ、ストップ! 緊急事態です、止まってくださ……あああああ!!」
本体がぶん殴られたか切り伏せられてんだろう。今度は急に偽・長谷川が落下して地面に頭をぶつけた。
「お前、もう一人の自分が見えないとスッゲェ扱いが大変そうだな!?」
「そうよ、だから未来ちーが引き離してきたのよ!」
retake.9
いる。
撃ち落としたはずの長谷川が、上にいる。
素早く顔を向けると、すでにあいつの目の前には長谷川の姿があった。
「【鉄扇】!!」
鉄の刃物が振り下ろされる。
未来もなんとか『改』の【木製短刀】で対応しようとするものの、彼女の速さはあまりにも桁外れ。
もう片方の手にも【鉄扇】が作り出され、斬撃を受ける。
「んっ……!」
《ヒット:230》
(やばい、未来が三分の一に到達する)
少し動揺すると、どこからともなく現れた人物。
目の前の長谷川と同じ顔形をした、誰かがいた。
「へ……!?」
retake.10
何度も襲いくる斬撃に、背中合わせになった未来が「間に合わないな」と呟いた。
「【木刀・改】」
両手に持っていた短刀を捨て、瞬時にいつもの日本刀のような切れ味のある大きな刀が作り出される。
そして、横に振るう。
「あれー、未来ちーいいの? 細かな動きできなくなるよ」
「そうだね。でも必要ないから大丈夫」
一本の刀で長谷川の【鉄扇】を二つ分受け止める。
「この……対応の早いこと! 【風壁】!」
その声にハッとする。
未来の周りを風の防壁が纏う。
しかし今回はいつものように見方を守る風の盾としての役割としては使っていない。
所謂、捕縛のための防壁だ。




