パラレル・球技大会閉幕と課題
retake.1
「……ところで、お前らは何してんだ?」
「な、なにって、加藤君がっ、強すぎて!」
なぜか息切れして壁にもたれかかっている秀に問いかけると、余裕ゼロの返答が返ってきた。その隣で頬をこけさせた斎が同じく息を乱して俺を見上げる。
「先生が、な。次の競技は、体育館の半面しか、使わないからって、許可くれたんだよ」
「許可?」
「ほら、あそこ。今は、VS阿部……」
ある箇所を指さしてそこまで言った斎は息絶えた。もちろん本当に死んだわけじゃない。ただそう見えるくらい一気に体の力が抜けて、微動だにしなくなってしまったのだ。
「ああ。何かと思えば」
斎が指した方へ顔を向けて見えたのは、バスケットボールを高らかに掲げる加藤と、それを捕ろうと必死でジャンプしている阿部だった。
「加藤からどうにかしてボールを奪うゲーム?」
「そう……けど、阿部は身長差があるからともかく、僕も斎も、ぜんっぜん奪えなくて……」
「よくあんなの捕れたね」と息を整えながら、乱れた髪を結い直す。
そうすると加藤が俺に気付いたようで、ニヤニヤした顔を向けてきた。
「土屋もやれってさ」
「えー。あいつ強ぇもん、嫌だね」
「そう言わずさ……僕らの敵を打ってきて……」
そう言って秀まで息絶えてしまう。
俺の見ていない間にどれだけ走り回ったんだろうか。
「しゃーねぇなぁ」
敵討ちとはまた違うけど、あの顔がムカつくのでとりあえず少し近付いてみる。
頑張りすぎて頬を真っ赤にしている阿部から「お願いします」と言われ、加藤の正面に立った。
「不意打ちでも良かったんじゃぞ?」
「あいにく、そういうのは嫌いだ」
俺の切り返しに加藤は笑う。
高く上げていたボールを胸の高さに下ろし、タンタンとドリブルの音を鳴らす。
「審判は私がやるからねー。制限時間は一分!」
「ルール作ってんのかよ」
ただのミニゲームでもしっかりと。そんな保井はウインクをしてかしわ手の用意をする。
「じゃあいくよ? レディー……ファイッ!」
開始の音頭、次の瞬間。
ボールを突く音は突如として消えた。
「……は。嘘、じゃろぉおおっ!?」
「残念でした。お前の動きはもう見切ってます」
加藤のドリブルしていたボールは既に俺の手の中へ、ニヤニヤ顔のお返しをしてからゴールに向かってぶん投げる。
バシュンッ! ボールがネットをくぐり抜けた。
「良い音だったんじゃねーか?」
「くそぉ……このまま……このままじゃ終われんよ。もう一回じゃ土屋ぁあああっ!!」
retake.2
「……秀。お前、男相手でもその笑顔はやめろ」
「は?」
「そりゃ女子もキャーキャー言うよ」
俺の注意に首を傾げる秀。
retake.3
でもそんなもんだと思う。同じマダーの俺たちだって誰がしているのか知らないぐらい、隔離された役職なのだから。
retake.4
改めて友だちになってくれとお願いするのが恥ずかしかったのか、告白をするかのように真っ赤に顔を染めた瀬戸と、照れ笑いする未来を長谷川は可愛がっていた。
「んで……お前らはどうした」
なにやらオロオロとしながら円になって座っている斎と秀、加藤と保井に声をかける。
「おお、土屋戻ってきたか。ちょっと見たってくれ、阿部の可哀想なこの顔を」
加藤が俺を見上げて苦い顔をする。どうしたのかと思いながら、不思議な光景の真ん中にいる阿部をひょいと覗き込んだ。
「うぉ!?」
衝撃の事態に思わず声を上げてしまった。
目が。阿部の特徴とも言えるぱっちりとした大きな目が、パンっパンに腫れ上がっていた。
「どうしたんだ、それ。大丈夫か」
「えへぇ……感動して泣きすぎちゃった」
retake.5
「阿部さんね。私と一緒に泣いてくれてたでしょ? 泣きすぎちゃったんだねぇ……」
保井が申し訳なさげに阿部の背中をさする。
retake.6
普段はあまり関わりのない吉田と吉住に凄かったと賞賛され、落ち着かない様子の瀬戸をニンマリと笑い、
「そーそー未来ちー。茜っちが友だちになりたいってよ?」
「ちょっ、だからぁっ!」
顔を真っ赤に染める瀬戸。
まるで告白のような雰囲気で言われた「友だちになってくれませんか」の言葉に照れを隠せない未来は、元より友だちのつもりだったと喜んで応じた。




