パラレル・理解者
retake.1
先生の言葉を遮るように、未来に向けられていた手を腕ごとその人が捩じ上げた。
「生徒を指さすのはやめませんか」
自分の目が、これでもかと大きくなったのがわかった。
視界にはっきりと映る、モッサリとした髪型と、少し筋肉質なガタイのいい男性。彼はにこやかに笑い、柔らかな言い方で諭す。
手を振り解けないらしく眉間から鼻筋にまでシワを寄せた先生は、その男性を睨みつけた。
「世紀末。手を離せ」
「ええもちろん。その人差し指を下げていただけたら、今すぐにでも」
さっき保井を保健室へ連れて行ったまま審判役を外れていた世紀末先生。未来に向けていた指を渋々折り曲げた先生に「ありがとうございます」と笑顔を向け、手の力を抜いた。
「ところで木岡先生。私は彼女たちの試合の審判を一旦お願いしただけで、生徒を傷つけていいと言った覚えはありませんよ」
静かに、丁寧に言いながら、しかし軽蔑の目を向ける世紀末先生へ、木岡と呼ばれた先生は反論する。
「ふん、私は公正な試合をするよう指導していただけだ。今のはどうみても一般人の動きではなかった。あんな動きが唯の人間にできるわけが……っ」
続こうとした言葉が、途切れた。
「生徒を傷つけるなと言っているのです」
一度緩められた世紀末先生の手から、ギリギリと締め付ける音がした。
retake.2
もうすぐ前半の試合が終わる時間、今の得点は17対18。なんとかこのまま未来たちの有利で引き離されないように終わらせたい。
彼女らの攻防を見て、前半の試合時間も残りあと少しの時。ふと未来がさっき水を飲み切っていたのを思い出した。
しかも何やら慣れない無茶な動きをして体勢を崩し、顔と胸元からべちっと音を鳴らしてこけたりしてる。
(休憩時間はしっかり休ませてやらねーと持たないな)
長谷川の「未来ちーのダサい姿見るの新鮮」という苦笑混じりのからかいに、「ダサいって言い方は酷いよ」と笑って返す未来のやりとりを見終わってから、水を買いに外へ出る。




