パラレル・Death game『風』
retake.1
本当に悪気はなかった。だけど直前に厚揚げのイメージが頭に浮かんでしまっていたからか、トッピングはねぎ塩ダレか。なんて冷静に考えてしまって内心で笑いそうになる。
retake.2
「やだっ、つっちー顔までやったね!? いったいわぁ!」
「目潰しできりゃ、一番よかったんだけどな!」
retake.3
その瞬間いろんな思考が一緒に流れ込んできた。
負ける、勝ちたい。
よく知っている。それは長谷川の十八番。赤い強風が剣を振るように襲ってくるのだ。
俺の体力はもう既に百を切っている。
【回禄】は火だから水の中じゃ消えちまう。盾には使えない。
あの技は強い。当たれば、負ける。
(負けんのは嫌だな……)
俺が負けたとしたら、ドロップアイテムって何が出るんだろう。
そう考えていると、デスゲームを観戦して帰ってきた未来のことを思い出した。
マダーの中ではあいつの目が青いことは知られていたから安心して送り出して、帰ってきたらどうだったか感想を聞いていた。
今にして思えば俺も一緒に行けばよかったと思う。ただあの頃は、ゲームとはいえ人同士の殺し合いなんて見たくないと蹴っていたせいで、一度も見に行ったことがなかった。
そう思うと、今は切り替えができてるってことなんだろう。
retake.4
「【回禄・連】」
とてつもなく分厚い炎の壁。本来なら動きにくくなるからこんなにも厚みを作ったりはしないんだけど。
「無駄だよ、つっちー。守ったところでアタシの風は止まらない!」
「ああ、そうだな」
止めるつもりなら、な。
【回禄】の中にある酸素が減っていく。
火が酸素を食う。食って、燃えて燃えて。一酸化酸素を作り出す。
(吸うなよ、俺!)
息を止める。
炎の壁の中に一酸化炭素を溜める。
長谷川の風が、五連になった【回禄】を刻み、穴を開ける。
その瞬間を俺は見逃さない。
「【バックドラフト】!!」
「いっ!?」
ドオォォォォンッ!!
長谷川の短い悲鳴の刹那、大爆発が起きた。
開けられた【回禄】の穴から長谷川に向けて避けるのが不可能なほどのスピードで火が噴出する。
バックドラフト。家事の現場なんかで起きることがある、爆発的に燃える現象。
密閉された空間で火災が起きると、空気不足から火の勢いが衰えて、このとき扉を開いたりすると急激に空気が流れ込んで、爆発する。
【回禄】で密閉空間を作り出し、中の酸素を火で急激に吸わせ、長谷川に開けられた穴から酸素を一気に中へ入れることで、それを再現した。
retake.5
気付かれないように体に覆った【回禄】をほんの少しだけ厚みを増す。
【風神の舞】。その技を、俺はお前が思ってる以上に知っている。
その攻撃範囲は『赤い』風にとどまらない。周りを巻き込んでできるその風による攻撃は、赤い部分の周り、もう少し広いところまで殺傷力があること。
retake.6
(ムカつく……マジでムカつく!!)
余裕な顔で薙ぎ払ってくるその武器はあまりにも正確で。
俺の動きの先をよく見ていた。
人相手の戦闘に慣れているのがよくわかる。
retake.7
「めそめそ」とわざとらしく言って。
retake.8
「かくなるうえは……逃げる!!」
「てめ卑怯だぞー!!」
「へっへーんだ! デスゲームでの戦法は知り尽くしてるもんねー!」
回復させてたまるか!
「待てぇえええ!!」
いない
(まだそんなに遠くには逃げられてなかったはずだけど、やられたのか?)




