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パラレル・一章最後の方、全体

retake.1

「……ところで未来さんよ」


家までの帰り道も残り四分の一程になった頃、俺は意を決して足を止め、口を動かした。喋り方が妙に静かだったせいか、不思議そうな声で「はい?」と返答してくる未来へ、直撃。


「さっきからお前の腹の前で蠢いてる細ながーい生き物は……なに?」

「うっ!?」


びくっと未来の体が飛び上がる。


「おんぶした最初の辺りから気になっててさー。もぞもぞ、もぞもぞ。未来以外の何かが俺の背中をなぞる感触。何を連れてるんですかねぇ未来さん?」

「な、何もいないよ!?」


嘘つけよ。


「嘘ちゃう! 何もおらんもん!!」

「関西弁、焦りすぎ。あと心の声読むなアホ」


疑わしい未来にジト目を向けてやろうとすると、視界にひょっこりと、つぶらな青い瞳のヘビが映りこんだ。


「あ!? てめ、未来! お前まさかこのヘビ!!」

「あぁあごめんなさい、ごめんなさいっ!!」


retake.2

「今回はさっき言った通り俺も悪いと思ってたから許すけど、次はマジでないぞ」

「はい、すいませんっ!」


ビシッとさっきの未来みたく腰を九十度に折って謝罪すると、驚いた声とともに背中に乗っている重みが前に傾いた。


「ちょあっ、バカ相沢さんが落ちる!」


retake.3

(校長、温厚でまん丸お腹だけどやっぱ校長なんだよなー)


ちょっと失礼な考えが混じった。


retake.4

俺はあの時、何が言いたかったんだろう。

誰をさして言ったんだろう?


「ねぇ、隆」


考えを巡らせていると、返信を終えたらしい未来が携帯を鞄に戻し入れながら呼びかけてきた。


「ん?」

「あの……私、隆に謝らなくちゃいけなくて」

「謝る? なんで?」

「聞いてたんでしょ? 私と、谷川君がしてた話」

「え……なんで」

「【不知火(しらぬい)】の炎、見えてたよ。人魂みたいなやつ」


どうやら両方にバレちまったということらしい。


「ごめんね。私、あんなやり方しか思いつかなくて」



「それに、どう倒せばいいかヒントまで出してくれてただろ。十分だよ」

「だから謝んな。俺は、未来に感謝してる」


retake.5

「けどさぁ、あいつやっぱすげーやつだよな。あの勘と推理。天才発明家による探偵の館みたいな名前で開業しててもおかしくない」

「ふふっ、なにそれ? 谷川君、名探偵になるの?」

「そ。だってほら、あの観察眼ならやりようによってはめちゃくちゃ稼げそうだろ?」


どんな外観の店にするか考えながら、思いつくままに未来に話す。少し調子が戻ってきたらしい。何度か笑ってくれた。


retake.6

おぶろうかと聞くと「目立つからやだ」と間髪入れずに断られて。

なんか前にもこんなやりとりしなかっただろうかと記憶を遡っている最中、立ち上がろうとした未来はまたぺたんと太ももを床につけた。


retake.7

「途中までは、なんかいい感じに無心になって戦えてたんだけどな。結局最後はいつも通り全力でぶつかっていっちまって。まだまだだなー」


retake.8

(けど、許してくれた理由があれじゃーなぁ。俺ってそんなにわかりやすいのかね)


斎が許してくれた理由。それが、『土屋、相沢さんのこと好きだろ? お前が知らねーのに俺が知っちゃってどうしようって思ってたからさ』というものだったのだ。

斎は斎で俺に悪いと思っていたんだそうな。

そんなわけで、今回はお互い様だしと許しをいただけたのだ。


retake.9

おんぶ

「恥ずかしいから前向いて。にやにやしないで」

「へーへー。悪ぅございました」


retake.10

「この子たちね、本来 に住んでたんだって」

「あっちにできたゴミ箱の中に、圧縮できるなら何入れてもいいよねって発想になった人がいたらしい。廃棄に困るような産業廃棄物までそこに入れちゃって、ゴミ箱が誤作動を起こして。……流れ出たらしい。そこに入れられていたゴミが、全部」

「……それがあのヘビたちの住処にまで流れ着いて、汚染した」

「うん。原因は色々で、もちろんそれだけじゃないんだろうけどね」


retake.11

「まーなんにせよ、相沢さんにはもっと愛情が必要だよ。だーからお前はさっさと告白して愛を囁け。な?」

「はぁ!? おま、何言ってんだよ!?」

「好きなんだろー? 相沢さんのこと。俺の目は誤魔化せねーぞー」

「ま、俺がフォローできる範囲はちゃんとしてやるけどさ。けどできる限りお前がしてやれよ? それが一番安心できるんだろうからさ」


retake.12

「お前、どこまで聞いたんだ」


斎は天を仰いだ。

どの辺りだったかと思考を巡らせているらしい。


「あと、ちゃんと本気でやってたとよ。お前にだけは」

「秀にはさすがに加減してたらしいけど。ちょっと悔しそうに笑ってたよ」


「言ってるじゃねーか」

「だって伝えねーだろ、絶対」


ふと笑う。


retake.13

俺たちを見た後、母さんが言ったのは。


「……お赤飯?」

「ちげぇよ!!」


retake.14

「少し前に死人化したヘビちゃんに会って、あんまり危険じゃなかったのと、生前を知ってたからついキューブの中の空間に家を作ったんだってよ。そしたらすごく懐いたらしくてさ」


「だからお願いして、力を借りたんだって」


「ああ、それでか。未来がガキの姿になってたの。ガラス玉割って能力使うだけならあんまり見た目変わんねーはずなのになってそこだけ疑問だったんだ」


「うん。俺が死人か疑う要因になったひとつも『見た目』があったんだけど、死人化した魂が乗り移っていれば見た目もそっちに寄っていくんだよな」


「お前の意思が死人化したときみたいに」と斎は


「お前、どこまで聞いたんだ」

「あ、えと今の見た目の話は知らねぇから、もう少し前までだと思う。未来が泣いてる間だったから」


「確かに『死人らしく』してたのは相沢さんだったけど、『家族の語り』はベビ子ちゃん自身がしてくれてたんだってさ。だから、お前が教えてくれなかったらあの子が話していた内容を知らなかったんだよ」


「あと、ちゃんと本気でやってたとよ。お前にだけは」

「秀にはさすがに加減してたらしいけど。ちょっと悔しそうに笑ってた」


「あいつ、俺にはそういうの絶対言わねぇからな」

「お前には、今まで沢山弱いところ見せてきちゃったから内緒にしててほしいって頼まれてんだよ」


「お前が誰かを守るために強くなりたいと思っているのなら、一緒に強くなりたいし置いていかれたくない。弱さは見せたくない。負けたくない」


「だから、言っちゃダメなんだってさ」

「言ってるじゃねーか」

「だって伝えねーだろ、絶対」


ふと笑う。


「ありがと」

「おー」

「まーなんにせよ、相沢さんにはもっと愛情が必要だよ。だーからお前はさっさと告白して愛を囁け。な?」

「はぁ!? おま、何言ってんだよ!?」

「好きなんだろー? 相沢さんのこと。俺の目は誤魔化せねーぞー」

「ま、俺がフォローできる範囲はちゃんとしてやるけどさ。けどできる限りお前がしてやれよ? それが一番安心できるんだろうからさ」


retake.15

「俺、土屋に悪いことした気分だ」

「いやむしろ俺からしてみれば、ありがとうって言うべきだわ」

「俺、まだなんにも言ってないんだけど」


「土屋さん? ちょーっと二人で話そうか」


ピキピキ。そんな音を聞いたような気がした俺は震えながら斎に連れられるまま体育館の外に出て、


retake.16

(そろそろ終わった頃かな……)


「おっ」


「もしもーし。凪さんだよ〜」

『ふふっ、なにそれ?』

「お疲れ様。声の調子からみるに、上手くいったみたいだね?」

『でも谷川君にはほとんどバレちゃった』

「はは、さすが谷川氏。勘が鋭いね」

『あれはもう勘っていうよりは推理に近いよ……多分凪のことはバレてないと思うんだけど、もし気付かれちゃってたらごめんね』


凪と呼んでるところから今は一人なのだと知る。

どうやら彼との話が終わったあともう少ししたら合流するからと話をしたらしい。


仲直り、チーム、隆一郎のため。確かに同時に解決しようものなら多少の無茶が必要だものね


「全く、りゅーちゃんのためだからってみーちゃんも無茶をする。本部の足止めがどれだけ大変なのか、ちゃんとわかってるのかなぁ」

『えへ。ごめんね、助かっちゃったよ。さすがにこんな大惨事を引き起こしておいて本部に知れたら処罰は免れないもん』

「僕が本部に用事が無かったらどうするつもりだったの? まあそれでも、みーちゃんはどうにかしちゃうんだろうけど」

「ふふ、でもやっぱりさ。りゅーちゃんはお砂糖みたいな子だよねぇ」

『お、お砂糖?』

「うん」


ブラックトルマリンのストラップを見て、

「甘くて優しい……真っ白なお砂糖だよ」


retake.17

未来=死人と知らなかったとすると

「未来? お前見てたの?」


かちんこちん。


「ううん、みてない」

「ほんとに?」

「うん。みてない」


retake.17

「大丈夫?隆。絞られた?」

「おーよ……」


結局斎にはバレて怒られた。


「まぁいいや。土屋に悪いことした気分だったし」

「や、だってお前……好きだろ?相沢さんのこと」

「お前が知らねーのに俺が知っちゃってどうしようって思ってたから」

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