パラレル・情報の炎
retake.1
俺の反応を面白がりながら優しく注意してきた凪さんは、その後も話題を探しては楽しそうに話してくる。
俺も楽しいから別にそれはいいんだけど、一応仕事中……なんだよな?
「あ、あの、凪さん? 電話、続けてていいんですか? とりあえず先に言っておくべき話はできたし俺はもう大丈夫ですけど」
『えぇーっ、まだ電話しとこうよぉー仕事戻りたくないよぉ〜』
俺が電話を切ろうとしているのを悟った凪さんは、イヤイヤ期の子どものごとくやだやだと言いながら必死に俺を引き止めた。なんだこの可愛い生き物は。
でも納得。あまりにも仕事が忙しくて堂々とサボれないのだろう凪さんは、俺からの電話という体で休憩の時間を作ろうとしてるわけだ。
(そういうことならまぁ、もうちょっと付き合ってあげようかな)
初めて知る駄々っ子状態の凪さんに頬が緩むのを感じながら、俺は少しでも長く電話をするべく話の内容を広げるように努めた。時々こちらからも話を振って。
「そういえば、例の件なんですけど」
言えそうな流れになって、俺は以前凪さんにぶつけた疑問の答えを述べた。
人を守るために仲間を犠牲にするのが本来在るべきマダーの形。それをきちんと頭に刻み込んだ上で結論を出した、俺は目の前の仲間を見捨てないという選択を。
retake.2
『ん、もしかして答え出た?』
「はい。多分なんですけど……」
ポッカリ穴が空くイメージで考えた『白』に対して、正反対にしたらいいとヒントをくれた凪さん。ならば温かみのある技なんじゃないかと思ったこと。
そこから出てきた文字の中で、俺が知ってる凪さんの他の技、不法侵入の技と、一度だけ見た英語の技、【Blessing】。
未来が斎と話してた中で知った、その和訳が『加護』であること。
「凪さん、あの日ヒントをくれましたよね。ポッカリ穴が空くイメージで考えた『白』に対して、正反対にしたらいいって。そしたら温かみのある技なんじゃないかなぁって思ったんです。そこから出てきた文字の中で、俺が知ってる凪さんの他の技を照らし合わせてみました」
『あれっ、他に何か知ってた?』
「家に不法侵入するやつと、一度だけ見た【Blessing】って英語の技。訳、知らなかったんですけど、さっき未来が斎と話してた中で『加護の力』って言ってたから……」
不法侵入というワードに少し凪さんは笑っていたが、それには何も言い返しはせずそのまま俺の説明を聞き続けた。
「【デリート】から温かみのある技ってあんまり想像がつかなくて。でも加護からだと神々しいイメージだったり守る系統だったりして、色々浮かんだんです」
『うんうん』
「で、そんな神様な感じの温かい文字の中から不法侵入できそうなイメージのあるものって、精霊とか、太陽とかが思いついたんですね」
凪さんは相槌を打ち続ける。
「ここまでだったら、どちらかというと精霊の方が近しいように思ったんですけど、あの……単に俺が霊体を信じてないって理由でそっちは削除されました」
『ふっ、ふふ』
「笑わないでくださいっ!」
『ああごめんごめん。ふふっ……ふ、それで?』
笑いを抑えきれていない凪さんに聞こえるようにため息を吐いてから、俺は最後の理由を口にした。
retake.3
『今度土屋家に行く時は、ちゃんと玄関からおじゃまするよ。インターホン鳴らしたら、三秒以内に出てきてね』
……ほう。
「わかりました。ではチャイムが鳴ってから、三十分後にお迎えに上がります」
『うわぁ、この熱い季節に外で放置するつもり? ゆでだこになっちゃうよ』
「ならせめて十秒ぐらいまでは我慢してくださ……って、あ?」
聞こえていた音が急に静かになって、文句を言おうとしていた俺は何事かと耳から携帯を離した。そして画面を確認すると……やらかしたらしい。
「充電、切れちまった……」




