パラレル・俺の答えは⑩
避けるための距離を保ちつつ怒涛の連続攻撃を少女の頭のヘビに向けて撃ち続けるが、全て模造のヘビを盾にされ掠り傷一つ付けられない。
反撃に出た少女の怒声と頭のヘビが持つ牙による噛砕の音は、水の中だと少しだけ鈍く聞こえる。
いや、実際これまでのように本気で叫んでもいなければ全力で牙を突き立てているわけでもないのかもしれない。
俺たちが執拗に頭だけを狙い続ける理由が、自分の弱点だと認知したからだと彼女が気付いているなら、それでいて心の底では自分を倒してくれと望んでいるのなら、必死に抵抗などしなくていいんだから。……ただ。
「うぉわっ、あっぶね!」
だからといって簡単に終わらせるつもりはないらしい。
神速で飛びかかってきた少女の口がガパッと大きく開かれ、俺の肩を牙で食いちぎろうとする。
いくら慣れて反応できるようになったところでくそ速いのは変わりない。間一髪で身を翻して躱し、【炎の槍】で目の前にある彼女の頭部を直接突き抜こうとした。
「なっ、まじかよ」
阿部の【アビリティ】で力の底上げがされていても、槍は頭を貫くことができなかった。一番最初に攻撃した時と同じように手応えがなく逆に押し返されてしまう。
「距離を取れ土屋! まともに刺突や斬撃を加えてもあの弾力じゃ簡単に往なされる!」
「ああ、そうみてぇだな! あと弱くてもいくらだって出せるヘビがくそ厄介!」
痛みに片目を細めた少女が怯んだ隙をつき、【炎の槍】を持ち直して死角になっている左太ももを突き刺した。
『んっ……!』
叫ぶのを我慢するような短い声を出した彼女は槍が刺さったまま後ろへ回転し自ら遠のいていく。
「やっぱ体なら槍も通る! 先に動きを封じてから物理的な攻撃以外で何か頭のヘビを倒す方法を……って、は!?」
ポキンッ。なんて可愛らしい擬音語が聞こえてきそうなほど、簡単に真っ二つにされた【炎の槍】。
突き刺さっていたはずの槍の柄を少女は両手でへし折り無表情で肉から引き抜いた。
周りの水が傷口から出た体液で霧状に赤く染まるが、次の瞬間にはもう傷口はない。閉じている。
瞬き一回するだけの間で、奴は自分の全身の怪我を修復させていた。
十五メートル程離れた場所にいる彼女は一歩水を蹴れば俺たちの首を取れるはずだったが、動く様子は見られなかった。
戦う気が薄れてきているのかそれとも体力を温存しているのか、その正誤はわからない。




