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パラレル・俺の答えは⑧

retake.1

「くっそ、キリがねぇ!」


 倒しても倒してもどこから湧いてくるんだというほどのヘビの大群を討伐しながら走り続ける。

 立て続けに噛みついてくる奴らを側転で躱してから【(ほのお)(やり)】で貫いて倒し、ポケットに手を添え斎に渡された物がちゃんとあるかを確認した。


『まだ完成には程遠くて、長時間使うなら問題だらけなんだけど一時間程度なら持つはずだから』


 つまり短時間でどうにかしなきゃなんねーけどと、そこだけ心配そうにしていた斎を思い出す傍ら、更に周囲から飛びかかってくるヘビを俺は薙ぎ倒していく。


(どちらにせよ長引けば俺たちだって体力的にキツくなるんだし、長期戦ができないのは一緒だ。やるしかねーよ)


 体育館から大分離れ、もうそろそろいいかと踏んで【爆破(ボム)】を使い纏めてヘビを焼き払う。

 広範囲の攻撃でやっと全てのヘビがいなくなり、急いで秀と合流すべく【花火(はなび)】を使おうとすると、「あああああああああ!!」と珍しい大声が聞こえた。

戦意喪失してたらどうしようかと思っていたが、どうやら元気なようだ。


「上等。力を尽くしてくれた長谷川のためにも、キッチリとかたをつけにいこうぜ。【火柱(ひばしら)】!」


 死人を真下から襲う。

ドンッ!! と高く立ち上る炎。いい手応えだ。


「逃げんじゃねーよ。【炎神(えんじん)】!」


悲鳴を上げ水を生み出して姿を隠そうとする死人へ、龍を模した炎を放ち追いかける。

しかし水中での奴の速さはやはり凄まじくなかなか捉えられず、距離があるのも相まってついに俺がいる場所からは見えなくなってしまった。


retake.2

「くっそ、キリがねぇ!」


 倒しても倒してもどこから湧いてくるんだというほどのヘビの大群を討伐しながら走り続ける。

 立て続けに噛みついてくる奴らを側転で躱してから【(ほのお)(やり)】で貫いて倒し、ポケットに手を添え斎に渡された物がちゃんとあるかを確認した。


『まだ完成には程遠くて、長時間使うなら問題だらけなんだけど一時間程度なら持つはずだから』


 つまり短時間でどうにかしなきゃなんねーけどと、そこだけ心配そうにしていた斎を思い出す傍ら、更に周囲から飛びかかってくるヘビを俺は薙ぎ倒していく。


(どちらにせよ長引けば俺たちだって体力的にキツくなるんだし、長期戦ができないのは変わらねぇ。やるしかねーよ)


 体育館から大分離れ、もうそろそろいいかと踏んで【爆破(ボム)】を使い纏めてヘビを焼き払う。

 広範囲の攻撃でやっと全てのヘビがいなくなり、急いで秀と合流すべく【花火(はなび)】を使おうとすると、「あああああああああ!!」と珍しい大声が聞こえた。

 声がする方角を見てみれば、校舎の崩れを利用して技を使わず屋上まで登っていく秀の姿があった。


「まじか、やるなあいつ」


 思わず感心していると今度は死人からの反撃があったようで秀は危うく落ちそうになったが、それでも彼は死人に何か叫んでいた。


「もし戦意喪失してたらどうしようかと思ってたんけど……やっぱすげーな。こっからでもわかるぐらい笑ってやがる」


 なら上等。力を尽くしてくれた長谷川のためにも、反撃開始といこうじゃねぇか。


「【火柱(ひばしら)】」


 何を言われたのか怒っている死人の真下から炎を円柱状に立ち上らせる。

 こういう時こそ心臓を狙えたら良かったのだが、危険を感じて体内へ収納されたのかもう露出しておらず直撃はできなかった。

 それでも体全体を覆う炎は十分ダメージに繋げられたらしく、死人は悲鳴を上げ水を生み出して逃げていく。

 勢いに巻き込まれ流されてしまう秀を【花火(はなび)】を使って瞬時に合流して支え、水の影響がないらしい校舎内へとすぐに避難した。


「遅くなって悪い。平気か?」


 床に足がついてから抱え込んだ状態だった体を放してやると、秀は乱れた息をしながら勢いよく床に尻をついた。


「はぁっ、はぁっ、息、しんど!!」


 肩を大きく上下させて全力で息をする秀を見て俺は思わず吹き出してしまった。


「わ、笑い事じゃないから……」

「ごめんごめん、普段見ないお前の顔がなんか新鮮で。ちょっと面白かったわ」

「性格悪いの僕じゃなくて土屋じゃないの……って、何それ?」


 笑ってしまうのをどうにか抑えポケットから赤い立方体を取り出すと、秀は不思議そうな顔をしてまじまじと見てきた。


「斎が最近作ったっていうもう一つのキューブ。秀も見たことなかったか?」

「うん、全く。色々見せてもらってたけどこんなに小さいものは初めて見る。僕らが使ってるキューブの半分くらいかな?」

「多分それぐらいだな。試作段階だから時間制限があるらしいんだけど、一時間程度なら大丈夫だってよ」


 水が校舎内にも浸食してきたらしい。後ろから水音が聞こえ始めたから手短に説明する。


「半径五百メートルの範囲内なら、これの対を持ってるマダーの力の恩恵全てが()()受けられる。もう片方のキューブは阿部に持たせてきた」


 水が教室を荒らしていく。

 窓が割れて椅子も机も投げ出される。

 秀は右腕をちらりと見て、傷一つない白い肌を手でなぞった。


「つまり……阿部さんがここにいなくても、わざわざお願いしなくても、僕らの能力値は上がったままだし怪我もすぐに治る?」

「ご名答。だからどんな危険も大怪我も心配しなくていい。無敵ってやつだ」


 ニヤリと笑い、俺は秀に手を差し伸べる。


「暴れようぜ」

「……楽しそうだね」


 秀も同様に笑って俺の手を取り立ち上がった。

 襲い来る大きな波に体を預けるよう二人揃って巻き込まれる。


『何カ作戦デモ立テテイタカ? デモモウ遅イ! ココハワタシノ場所。水ノ中デハ勝テンゾ!!』


 笑う。笑う。水の中で反響する笑い声は頭に響くようにぐわんぐわん聞こえてくる。


「土屋。あの子はもしかしたら、人間に育てられていたのかもしれない」

「ペットだったってことか?」

「わからない。でもきっと憎みきっていないんだよ。だからさ」


 一拍おき、秀は俺に言った。


()()戻してあげたい」

「哀しい運命を辿ってしまったけど、せめて満足のいくかたちにして終わらせてあげたい」

「……りょーかい。音を上げるなよ?」

「うん」

「否定しないでくれてありがとう」


 秀の純粋な気持ちだろうから。


 だけど元に戻すというのは、言葉で言うほど簡単ではない。それはつまり、死人の命を奪わず恨み悲しみ怒りの魂だけを浄化するということ。


『余裕ダナ小僧ドモ!!』


 死人はこちらへと大量の大きなヘビを飛ばす。秀が作り出した盾を大きな口が何度も噛む、噛む、噛む。

 鋭い牙に何度も襲撃され、ピシッと音とともに亀裂が入った。


「さんにーいちで解除するよ。さん」


 亀裂の範囲が広がる。


「すぐにカウンター頼む」

「に」


 小さな穴があく。


「いち」


『サア小童タチヨ、尽キルガイイ!!』


 バキッ! と、丁度氷盾が突破されたそのとき。


「【氷像(ひょうぞう)】、キクザトサワヘビ!」


 死人と全く同じ生命体を、氷で作ったヘビでオリジナルをぶち破る。更にオリジナルの頭を貫き長いシッポが全てを蹴散らす。


「【回禄(かいろく)(れん)】!」


 一瞬の焦りに隙が生まれた死人の周りへ俺は円形の炎を三重にして張り、その中に()を起こす。


「【プラズマ】!」


 重ねて張られた炎は雷を跳ね返して何度も何度も死人へと放たれる。

 火は燃料の酸化から高温になって、燃料が電離してプラズマ状態になるとかいうどこかの文面を見て連想したものだが、やっぱりキューブってのは面白いな。想像次第でなんでも作れる。


『あああああっ』


 悲痛な幼い少女の声。

 体がまた一段と黒く焦げていく。


『……ッ! ワタシは……!!』


 刹那、超スピードの死人の大きな牙が俺の肩に噛み付いた。

 だけど俺には当たらない。数ミリの差しか無かったけど、その牙は傷を付けられなかった。


「慣れたね?」

「何度も連続で狙ってくれたからな」


 瞬時に治ると言っても痛いのは嫌だし、阿部だって常時【痛み無し(ノーペイン)】を発動してる状態なわけだからあまり負担をかけたくない。避けられるなら全力で避けてやる。


『アハハ! 凄いネお兄チャン!!』


 その言葉に俺はハッとして【火の粉(スパークス)】を起こし距離をとる。

 そして秀に向かってほぼ叫んでいるような声を上げた。


「秀、頭だ! あのヘビだ!!」

「え!?」


 聞き直す秀を置いて俺は更に【弓火(ゆみのひ)】を奴の頭にあるヘビへと放った。


『ヤメるのだ!!!』


 少女は手をカッと開いて新たにヘビを作り防壁にした。防壁になったヘビ達は四方八方へと無惨に吹き飛んでいく。


「あの頭にいるヘビだけがキクザトサワヘビの魂なんだ! 他に出してくるやつは全部虚像だ!」

「虚像……なるほど。じゃあ頭にいるヘビ達を倒せば」


 気になっていた。一人称はずっと『ワタシ』なのにこちら側の呼び方が変わるのが。年代が変わるのが。声が何重にも聞こえるのが。


 お兄ちゃん、若造、小僧、小童。

 それらはこの死人が単体でできた存在でないことを表していたのだ。


「そう、そしたらあの子は一人になる。元に戻れるはずだ!」

「わかった、だけど頭部の弾力はどうする!? まともに斬撃を加えたって往なされるよ!」

「そこが問題だな、とりあえず頭を狙い続けろ!」


 執拗にそこだけに的を絞る俺たちに少女は怒りを顕にする。それもそのはず。頭にいるそのヘビ達は彼女の仲間で、友達で、家族なのだから。


「くそ、速すぎて全部避けられるっ」

「弱くてもいくらでも出てくるヘビも相当厄介だね……!」


 隣り合って遠距離攻撃を続ける俺と秀は、盾で彼女からの攻撃を牽制しながら作戦を練っていた。


「ねえ土屋、何で本部は僕らをチームにしたんだと思うっ」

「あ!? 仲良いから上手くやれそうとかそんなんじゃねーの!」

「馬鹿なのか。例えどれだけ仲が良くたって能力の相性ってモノがあるでしょう! だからきっと、二人でする攻撃の方が強いものがあるんじゃないかって……そう思わない?」


 ……なるほどね。


 炎と氷。これはゼロ距離だと両方が残ることは無い。炎が氷を溶かす。氷が溶けてできた水で炎を消す。ふたりで同時に攻撃をするとお互いの力で消し合ってしまう。


 だから基本的には違う場所を狙うか片方が防御に入るか、こういう戦法になるわけだけど、それができるなら。


「【吹雪(ふぶき)】!」


 こちらへと近づいてきた少女を遠くへ押しやるように秀の吹雪が彼女の体に放たれた。

 避けるべく後ろへバク転をして距離を取った少女は、こちらをじっと見る。


 出方を窺ってんのか。


「それで? 俺はどうしたらいい?」


「お前は頭がいい。ゆえに断定できないことは言わないやつだ。なんとなくなんかで俺に話したりしない。つまり……勝つ為の作戦を思いついた、そう言いたいんだろ?」


何か言いたげな秀に、俺はその先を促した。

 少し目を丸くした秀は、その後すぐに不敵な笑みを浮かべる。


「……僕の言う通りに動いてくれる?」

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