パラレル・お怒り&バグ搭載①
いつもならretakeでまとめてから投稿するのですが、たくさん書き直しがありどこに何が書いてあるかわからなかったので今回は丸ごと掲載させてください。すみません。(量がやばいです)
retake.1
帰宅した直後、母さんと父さんに謝った。水道代の件、俺の勘違いで意味を成すものではありませんでしたと。
怒られると思って精一杯頭を下げていたのだが、母さんから返ってきたのは怒りの言葉ではなくて。
「良かったじゃないの。日常にあるものが戦いにも使えるんだってわかったんだからさっ」
にっと歯を見せて、それより無事に帰ってきてくれて良かったと未来と一緒に頭を撫でられた。夜遅くまで待っててくれた二人は限界がきたらしく、すぐに部屋へ行っていびきをかきはじめる。それが妙に安心して、ロボ凪さんの課題クリアするために未来と機嫌良く鍛錬場に向かった。……までは、良かったのだけど。
「ごめん! ごめんって未来!」
「何度謝ってもあかんもんはあかん! 言うこときき!!」
「あぁああああっ!!」
ベリベリベリッ!! 違うな、メリリリリッ!!
めちゃくちゃ怒ってる未来に左腕の皮膚を剥がされる。
なぁ、誰か嘘だと言ってくれ。未来もキューブを展開してるとはいえ、人間の力で皮膚が前腕丸ごと取れるなんて思わないだろ! 素手だぞ!?
誰かこの恐怖をともに味わってくれ!!
「ほれみい! こんな簡単にキューブ取れるんや、隆は疲れてんの! こんなんで集中できるわけないやろ!!」
怒りをあらわにした未来は皮膚ごと剥いだ『炎』のキューブの端っこだけを俺の腕に置いて、ギリギリ恩恵を受けられる程度に貼り付けてから治療してくれた。
今日何度目かわからない、未来の【治癒】による回復。
肉が見えかけていた腕が再生して、痛みが引いていく。治している間は大爆発だった未来。だけど、完全に治った途端、文句の嵐が止んだ。
「……あのぉ、未来さん?」
「良案って、なんよ。なんも良くない。怪我しても大丈夫やって、思いながら戦うのがどんだけ危険か、わからんの?」
腕に置かれたままの手が、震える。
ノコギリソウの花言葉で怪我を治せるはずの未来が、戦場では使いたがらない理由が言葉の中にあった。
一度の攻撃が致命傷になるかもしれないやり合いで、そんな不確かなものを信じて戦うべきじゃない。
だからこそ、今の俺のやっていることが嫌で、つらいんだろうと思う。ごめんって、心の底から思う。
「ロボ凪さんの攻撃さ、避けるのはできるんだよ。けど、何度やっても絶対負ける。なんでかなってずっと疑問だったんだ」
右目に未来の手が伸びてくる。機能をほぼ失っていた眼球が徐々に修復されて、半分しか見えていなかった視界が広がる。
両目で見えるようになった未来は、瞳を潤ませていた。
「何時間も耐えられるようになって、課題を始めた頃より強くなったなって実感はある。けど、それじゃダメなんだよ。避けられても倒せなきゃ意味がない。押し切るための何かが、俺には足りてないんだ」
全身にある傷も一つずつ丁寧に治してくれる。
優しい触れ方に、未来に、感謝しながらそう説明した。
「だから全部体に受けてみようって? なんでそんな無茶な考え方になるんよ」
「そうじゃないとわかんねぇことがある。力のかけ方とか、軌道。あと、自分に跳ね返ってくるダメージの軽減も」
強引に殴ったところでマテリアルを壊せるはずがない。この国最強の素材を拳ひとつで破壊できる凪さんは、きっと俺たちとは違う戦い方をしてる。
「俺がわかってるつもりでいた凪さんの攻撃。微妙な認識のズレを百パーセント知るためには、実際に体験してみるのが早い。本当なら徐々に理解すべきだったけど……俺、バカだからさ。全く気付かなくて」
一ヶ月。それだけかけて、自分の動きを完全に理解しろと凪さんは言いたかったんだろう。
危ない土地でも無事でいられる戦い方を覚えさせるため。九年もある経験の差を強引に埋めさせて、自分の力として吸収させるために。
「俺が危ない目に合わないようにって、未来が見てくれてたのはわかってる。やばい攻撃にはストップをかけてもらえたから、今まで大きな怪我はせずに済んだ。けど、今日は。今日だけで全部慣れて、全部物にするから。だから……俺の、わがままに付き合ってほしい」
retake.2
返信届いていた
いいって書いといたのに、律儀。
「……そっか。凪さん、心配してくれたのか」
おかえり。
自分の在り方を大事にしなさい。
一言だけ。この一言に、凪さんの思いが詰まっていた。
大丈夫ですと伝えるために、机の中から取り出したノートの一ページ目を写真に撮って送る。
「……目標ばっかだな。全然達成できてねぇ」
「仲間を失わなくていいように、強くなること。未来を守れるくらい強くなること」
今回の変更点は、選択肢がひとつにならないようにすること。司令官も、多分そう言いたかったんだと思いたい。
retake.3
未来の部屋の前へ。
扉をノックする。
出てきた未来は、おキクを肩に乗せて、寝ているケトを抱っこしていた。
「お願いします」
頭を下げる。
「……返さないよ。キューブ」
「素体でやって。これ以上の怪我は許さない」
「──はい」
扉の前に立つ。
遠征へ出る前に凪さんに言われたことを、今更ながら思い出す。
──隆一郎だけが持ってるその力を、最大限に引き出すための課題だ。自分の強みを活かしなさい。
自分の強みをしっかりと活かすことができたなら、きっと課題はクリアできるからと。
あの時は何を言っているのかよくわからなかった。
けど、今ならわかる。
「僕を倒してごらん……か。凪さんらしいな」
微笑して、目の前に立つロボ凪さんに目を向ける。
いつもと変わらない佇まい。動き。隙のない構え。
「よろしくお願いします」
見る。見て、学ぶ。動きの中にある、クセ。僅かなほころび。
何が凪さんを強くしているのか、俺が足りていない部分は何か。
そして、俺だったら、どうするか。
拳、拳、蹴り、拳
回し蹴り、次、拳!!
横に避ける
頭をぶち抜かれそうな打撃の連打を分析しながら躱し続ける。
ロボ凪さんの攻撃は不規則。縦横無尽、どこからでも飛んでくる拳と蹴り。
思いもよらないところから攻撃を繰り出してくるのはおそらくこの人の柔軟性。
ギリギリで避けるのはダメだ。もっとしっかり避けないと!
掠るだけで皮膚を引き裂く。拳は少し余裕を持って長い足は付け根を見て攻撃範囲を絞り出せ!
反撃は早く、というべきなんだろうが、隙がねぇ!
右の拳、目の前にスローモーション
どんどん拳大きくなってあと少しで顔面
これに当たってしまえば俺の首……とぶ?
いやだ。嫌だ嫌だ。
考えろ、最後まで!!
視線は飛んでくる拳とロボ凪さんの体
目の前の拳につながる手首を掴んだ
「ああああああああ!!」
ロボ凪さんのこちらへかかる力を利用して、拳を軸に後ろへ投げ飛ばした。
宙に浮いたロボ凪さんが頭を下にして落ちてくる。
拳を全力で握った。
無防備になった腹へ、ぶっ放す!!
入った感触がしてあと一発。蹴り上げた。
「らぁ!!」
瞬間、悟る。
「あ」
ちーん
壁のほうに吹っ飛ぶロボ凪さん。倒した、嬉しい。
嬉しいはずなのに、冷や汗
つまり何が起きたのか。冷静になる。
蹴ってしまったのだ。男の弱点を、思いっきり。
「ぶっふ!!」
未来が笑う。
「わざとじゃない」
「うん、わざとじゃなかったね、でも……ふ」
笑うな。笑うな。
痛いんだぞバカヤロウ。
「どうしよおぉおおおおお!!」
ピクピクしているロボ凪さんを見ながら、本物にいうべきなのか言わないべきなのか、真剣に考えた。




