パラレル・ラストスパート
retake.1
つまるところ、隆一郎の思いで発動した《解錠》を使ってのこの結果は、あいかの予測を上回るものであった。
【知る】によって透視していたはずの未来は塗り替えられ、ヘンメイの言葉を信じるならば、まじないの影響を受けずに死人について語れる存在がいることもわかったのだから。
retake.2
「そもそもの話、死人との戦いにおいて、一から十の全てを子どもたちに託してしまっているのだ」
「残酷無慈悲な夜の世界で、いつどんな死に方をしてもおかしくないのに。子どもたちは命をかけてくれているのに、こちらからは何の報酬も出してやれない」
「そんな大人が子どもへ指図するなど……」
retake.3
「……ヘンメイから借りてたやつか」
「うん」
「遠征、帰ったら再戦するって約束してたんだよ。無事に戻ってこられるように、お守りにって渡してくれたんだ」
人に渡してしまえば、ステージを創る自分の能力にだって影響するのに。そんなことお構い無しに、半ば押し付けるように凪へ渡したヘンメイ。
それがどんな胸中であったのかは、もう今は想像するほかない。
retake.4
知らないで欲しかった、いつかそんな日が来ると
よく決断した
命を奪うことを当たり前だと思っているマダーは多い。同じようにならないでほしい。
retake.5
「……青いですね。あなたは」
「若さゆえに、その道を真っ直ぐに行ける。……わたしは、そうはできません。すぐ目の前に迫る恐怖を、必死な研究員や一般人を。あなた方よりもずっと見てきていますから」
「マダーになったのも千番ととても遅かったわたしは……あなたたちのように、『死人を大事にしたい』という気は、全く起きないのですよ」
「それが……こんなわたしにも懐いてくれていた、ヘンメイだとしてもね」
retake.6
「時間の無駄でした。僕は任務へ戻ります」
踵を返して立ち去ろうとする凪へ、「わたしが嫌いですか?」と質問が投げられる。
retake.7
そして、結果に至るまでの全てを。目の前にいる国生あいかという人物は、【知る】によって透視していたのだ。
「最終的には討伐する相手ですから。利用できるものは極限まで利用しようと考えるのはおかしくはないでしょう」
それしか方法はないと言った上で、これならいけるかもしれないと提案しようとしたのだ。『戦略家』と呼ばれるに相応しい、残忍で確実な方法を編み出した。
retake.8
「隆一郎と未来には伝えたんでしょう、まじないのこと。ヘンメイをどうにも戻せないとわかったあの二人が、情報を聞くためにまじないを利用すればいいと思っていたんですよね」
どうせ討伐する相手なら、情報を吐き出させてから始末。
全てを話させた上で、まじないで殺すつもりだった。ヘンメイの再生力を利用して、全てを話し終えるまで再生と死を繰り返して、そうして動けなくなったところを討伐しようとしていた。
それしか方法はないと言った上で、これならいけるかもしれないと提案しようとしたのだ。『戦略家』と呼ばれるに相応しい。
「残念でしたね。真っ直ぐな彼らは、あなたの思いどおりにはいかないようだ」
まじないが発動するから今までは聞けなかったことも、あの子たちが心を痛めるとわかっていて全部話させようとした。
「国生さん。できればあなたと対立したくはない。けれど、あの子たちを──隆一郎と未来を傷付けるなら、僕はあなたを許しませんよ」
retake.9
「……びっくりするほど、痕跡を念入りに消されていますね」
「申し訳ないですが、ここから相手を探るのは困難です。今回は、新たな敵の情報が入ったこと。そして、その敵についてを知る方法がわかったことを喜びましょう。……今すぐに討伐とは、いかないと思います」
retake.10
『それと、一つ写真を送りました。可愛いものが見られますよ』
「可愛いもの?」
「……ふふ」
「どうした、そんなにニヤけて」
「んー……うん。若いなぁと思ってね」
「……ジジくせぇ」
「ははっ」
「さ、僕らもラストスパートだ。ちゃんとみんな揃って帰れるように、気を抜かないでいこう」
retake.11
「僕は……あの子は、討伐しないと思っていました」
『私もそのつもりで伝えていたのだがな』
『おそらくは……ヘンメイ自身が死を望んでいたからだろう。』
「本当に……頭が上がらんよ。今回のようなイレギュラーも、普段の夜の当番も。重い役割を課せられているにも関わらず、報酬や褒美も出してやれん」
retake.12
「碧眼の子に会ったって笑って話してて、その後も、兄が目覚めた時に使えるコマは多い方がいいだろうって」
「死人、増やそうとしてたから、兄は今討伐に出られないし、リーダーたちは遠征でいないしで、死人増えて……って。ヘンメイ、怒ってたから。キレて殺したのかと」
「紫恩。ヘンメイは、誠実な死人だった」
「……制裁を加えようとしたんだって。チョップでもしてやろうか、と思ってたんじゃないかな」
retake.13
こんな腐った現実を前にしても、歩みを進めていられるのは……いつだって、仲間の存在が大きいんですよ




