表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

第2話【友の為に再開】

 チュートリアルでの体験からゲームを躊躇い、数日が経った。

 やはり、あの死の恐怖は簡単には拭えない。

 疑似体験で死ぬ事に恐怖の薄くなったVR世界で彼処まで死の恐怖を体感ゲームはそうそう無いだろうが、あれは流石にやり過ぎな気がする。


 もしかするとこの製作者はVRゲームの禁忌であるデスゲームでも体験した事があるのかも知れない。


 ーーで、無ければ、あんなリアルな恐怖も痛みも体験しなかった筈だ。


 そんな事を考えながら俺が仕事を終えて自宅へ帰る途中、物陰から周囲に気を配る同僚のさとるを見掛けた。


「哲?」

「ひっ!?」


 声を掛けると哲はバッと俺に振り返る。

 驚き方からして尋常ではないのが解る。


「な、なんだ。糀か……」

「どうしたんだ、哲?顔色が悪いぞ?」


 そう言って、俺が哲に触れようとすると哲は怯えた様に俺から離れて、その場にしゃがみ込む。


「いや!もう酷い事しないで!」

「え?」


 その言葉に俺は戸惑う。

 新米社員だった頃の哲とは思えない挙動である。

 しかもどこか女言葉を使っている様な気がする。


「しっかりしろよ、哲!

 何があったんだ!」

「……俺……H.E.A.V.E.N.で乱暴されたんだ」

「え?H.E.A.V.E.N.って、あのH.E.A.V.E.N.でか?」

「H.E.A.V.E.N.って名前からして人生が終わる程のゲームだと思ったんだ。でも、実際は……」


 此処まで衰弱していると心配になる。


「嫌ならやめたら良いじゃないか?」

「そうなんだけど……俺……」


 なにやら、哲には哲なりのH.E.A.V.E.N.をやめられない理由があるらしい。

 このままでは哲の人生が本当に終わってしまう。

 その前に彼を助けなければ……。


「解った。俺がお前を助ける」


 俺がそう言うと哲が顔を上げた。


「……糀」

「まだチュートリアルもクリアしてないから、時間が掛かるかも知れないけど、絶対に助けに行く。それまで堪えてくれ」


 俺がそう言うと哲は鼻を啜って立ち上がる。


「ありがとう、糀。俺ーー私、待っているから」


 俺は哲に頷くと彼と別れて、すぐにH.E.A.V.E.N.を再開した。

 同僚をーー友人を助けたい思いで俺が再びH.E.A.V.E.N.に入ると突然、ファンファーレが鳴り響く。


《おめでとうございます》


《貴方はゲームオーバーを恐れず、再びH.E.A.V.E.N.を起動しました》


《その意志を忘れなければ、H.E.A.V.E.N.でも活躍出来るでしょう》


 そこで視界がブラックアウトし、しばらくすると俺は人々で賑わう酒場に立っていた。


『チュートリアルの死を乗り越えて、やって来たか……なかなか、見所があるね?』


 俺は声の方を振り返るとNPCらしき船長服を着た赤毛の女性が俺に笑い掛けて来た。


『これから簡単な質問をするよ。

 それに全て答えるとあんたに適した職業クラスが決まる。

 因みにH.E.A.V.E.N.はリセットマラソンが出来ないから質問に答える時は注意しな』


 つまり、職業を選択出来るのは一度きりか……難易度が高そうだな。


『因みにあんたの名前はなんて言うんだい?』


 あ、此処でアバターのネームが決まるのか……。


「……えっと」

『エットか。いい名前だね!』


 は?いや、ちょっと待って!?

 今の発音で入力が完了しちゃったの!?

 そんな慌てる俺を見て、赤毛の船長が笑う。


『ハハッ!冗談だよ!焦ったかい!?』


 ……このゲームの製作者はデスゲームを体験したんじゃなくて、性根が曲がっているんだろうか?

 哲の件と言い、かなり意地が悪い。


 俺はそう思いながら、あれこれとネームを考え込む。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] チュートリアルで、トラウマフィルタリングって、 すげーイヤなゲームです( ̄▽ ̄;) 面白いです~(*´∀`)♪ [一言] さっき、そんな感想を書こうとしたら、 混雑していて詰まりました(…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ