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黒白の巫  作者: ねをんゆう
第2章【大黒女】
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6.信用できる人達


「よーう、お疲れちゃん」


いつもの様に空き部屋で宿題を済ませて小テスト勉強をしていた私の所に、1人のおじさんがココアを持って現れる。

というのも、別に不審者が勝手に家に入ってきたわけではない。だってここはこの町の交番なのだから。


「山さん……ふぅ、今日はココアばかり飲んでいる気がするなぁ」


ズズッと啜って、むせる。

温かくてもダメな様だ。

美味しいのに。


「それで、彼女はどうでしたか?」


「どうもこうもねえよ、いつも通りだ。突然襲われて必死で逃げた、それだけ。相手の顔も見てなければ何をされたかすらも分かってないときた。襲った奴の情報ならお前さんの方が詳しいんじゃねえか?どうせ点灯数とかもしっかり確認してんだろ?」


「ええ、まあ。敵は間違いなく蜘蛛型ですね、それも点灯数が2つ。今まで見つからなかった事を考えると他所から来たか、なって直ぐに大量摂取でも行ったか……」


最悪の場合、自分の持つだけの情報網ですらこれまで気付くことが出来なかった様な特殊な型という可能性もあるが、あの様子では今回はその可能性は除去してもいいだろう。

もしあれが通常の型だとすれば、点灯数が増えているということから、少なくとも10人以上は犠牲になっていると考えられる。こうして毎晩のように街の見回りをしているのだから、発症してすぐに大量殺人を行なったか、他所からこの町に移り住んだかが一番可能性の高い動きだろう。

蜘蛛型となれば尚更だ。


「ま、今回は多分後者だな。ここだけの話だが、最近西の廃れた住宅街でドロドロに溶かされた仏さんがいくつか上がってる。体外消化ってやつだな。一番古いもので死後1週間ってとこだ、疑う余地はねぇよ。関連性もなく、正気を失ったかの様に食い散らかされてたからな。ちなみに事件はいつも通り、全部夜逃げで処理だ。遺体もお国から来た部隊が持ってっちまって、この件の口外も禁止されてる。まあ俺はこうしてお前に話しちまってるが」


「すると問題は3つ目の点灯ですかね。捕獲能力に優れた蜘蛛型が3つ目を点灯させたら目も当てられません。今回偶然その存在を確認できたのは不幸中の幸いでしたが…」


「3つ目、人型状態での能力使用だっけか。それはマジでめんどくせぇなぁ……」


「もちろん使用できる能力は劣化しますが、自由度が断然変わってきますからね。その勢いで4つ目まで点灯された日には……」


想像したくもない。

4つ目を迎えたモノはほぼ例外なく欲を満たす事に躊躇がなくなる、人を殺す事にためらいがなくなる。新たな力を求めて、より勢いを増していく。本当にどうしようもなくなる。


「わかった。俺も上に睨まれてっから大して動くことはできねぇが、やれるだけの事はやっとこう。まずは被害者を洗い直すかな、共通点が見つかるかもしれねぇ」


「ええ、頼みます」


身振り手振りを交えてそう話す山さん、彼の話し方は芝居掛かっているというか妙に仰々しい。しかし彼は良い人だ。警察官としてのプライドも忘れず、信用ができる。


「まあ何にせよ、今回も助かった。茶菓子くらいしか出せねぇのが残念だが、俺たち警察も上がやかましくてな。本腰上げては動けねぇんだ。俺もこの歳で首だけは勘弁だからよぉ……」


「わかっていますよ、山さん。私だって結局は自分の為にやっている事ですから、お礼も謝罪も必要ありません。それでは、そろそろ帰りますね」


「おう。今度なんか美味いもん食わせてやっから、またな」


交番を出て、時計を見ればもう10時。

風呂に入れば寝る時間だ。


「結局1日終わってしまったな……」


明日も6時起き、自分でやってる事とはいえ自由時間がないというのはなかなかに辛いものである。











『ねえ、優はそろそろ恋人とか作らないの?』


帰って買ってきた夕食を食べていると、2時間も前に杏からそんなメールが来ているのに気が付いた。


『なぜだ?』


今更返信が遅れた程度の事でイザコザ言い合う仲でもない、特に詫びることもなく返せば1分もかからず返事が返ってくる。


『いや、恋愛する気ないっていつまで言ってんのかなーって思って』


どうにも今日はその話題をしたいらしい。


『いつも言っているが、今はそのつもりは無い。もちろん恋をしてみたいという欲ならあるが、そもそも恋というものがよく分からないからな』


そんな事を送ってやれば、


『はぁ……』


と呆れられる。


『あのね、恋ってのは頭じゃなくて心なの。思いっきり馬鹿にならないとできないの。恋ってなに?って言ってる時点で一生できません。残念でした。恋愛偏差値0でした。お猿さん以下でした。一生私に尽くしましょう』


なぜここまで言われなければならないのか、後半に至ってはデレなのか奴隷扱いなのか分かったものじゃない。普段を考えるとむしろ逆なのだろうが……


『待て、考えてもみろ。心でするのが恋ならば、私だって知らずに誰かに恋してる可能性は残ってるんじゃないか?ほら、希望を捨てずに、恋をしている時の心の動き等を詳しく細かく丁寧に迅速に教えてみろ』


『え〜……めんど……( ´Д`)y━・~~』


ムカつく。

ここまでムカつく顔文字を選択できるのは一種の才能だと思う。

その口を墓石にしてやりたい。


……しかしまあ、なんだかんだ言っても教えてくれるのが杏なわけで。

悪い奴ではない。


『とりま1日中頭の中で考えてる子とか居ない?よく自分から話しかけに行く子とか、滅茶苦茶気を引きたいと思ってる子とかさ。いないですかそうですか優だもんね仕方ないね、私くらいしかいないもんね』


口は悪いけど。


それにしても難しい話だ。

一日中頭の中で考えている子、そんなの居るわけがない。

強いて言うなら氷雨さんくらいか。

最近は氷雨さんとどう打ち解けるかくらいしか考えていないところがある。

自分から話しかけに行くのも最近では氷雨さんか、杏や先生とはどちらかというと話しかけられる方が多い。

気を引きたい、というならこれも氷雨さんだろう。彼女に少しでも私のことを気になって貰えたらそれ以上嬉しいことはない。

そもそも私自身そこまで多くの生徒と仲が良いわけでもないので、恋をしていれば直ぐにわかるはずなのである。


『やっぱよく分からなかった』


『知ってた。じゃあもうお風呂入るから切るからね?こんなつまんない事で連絡してくるなんて、私のこと好き過ぎか〜?』


『最初に言い出したのは誰だ』


『わたしですが?(゜ω゜)』


『あん?』


『お?』


いつも通りの会話。

どうでもいいことを連絡しあって、どうでもいいやりとりをして、何の収穫も無く終わる。

それでも、そんな会話の積み重ねが今の関係を作り出したのは間違いない。


『……それで、怪我は?』


『ない、追われて驚いたけど何事もなかった』


『そ、じゃあ私お風呂入ってくるから。また明日ね』


『ん、おやすみ』


私は彼女のことを好ましく思っているし、彼女とのこうしたやり取りがとても大好きだ。

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