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#40 困惑と挨拶

近くのテーブルに食事を置いていたジェシカは、カミーユの呟きが聞こえたのか首を傾げる。

『ルリア様が2人……？　何言って──────』

そして、" 寝ぼけているのか "と考えながらベッドに近付いたのだが──カミーユの言葉が嘘ではなく、本当にルリアが2人いた事に絶句するのであった。

『まさか………』「…………ん、………もうよるう……？」

何かを知っているのか。

青ざめた顔でそう呟くジェシカを、カミーユは不安そうな顔で見つめていたのだが────2人の声で目が覚めたのか、眠っていたルリアの1人が瞼を擦り起きあがる。

「りりぃ(・・・)………もう、よるだってえ………」『あ………？あぁ………』

声の感じや、もう1人のルリアの事を「リリィ」と呼んだ事から、最初に起きた子がルリアという事を理解することができて。

ルリアに起こされた「リリィ」は、ゆっくりと身体を起こすとゴシゴシとルリアと同じように目を擦るのであった。

「る、るりあ様……その人は………？　だ、誰なんですか…………？」

顔に混乱の色を浮かべているカミーユは、ルリアそっくりの人物がいる理由を尋ねる。

その声は震え、その声色からは恐怖と言うよりは──理解ができない、という感情が読み取る事が出来た。

「え、っとお………」『………私が、説明するぜ。ルリはまだ眠いだろ？』

ふわふわとした声色のままルリアは彼女が誰なのか答えようとしていたのだが。

言葉を発そうとする前に「リリィ」がルリアの言葉を制止し、ベッドから降りると2人に笑みを浮かべる。

────にたりと、牙を覗かせ悪戯っぽい笑みを浮かべて。

『私はリリア。リリア・W(ウィスタリア)・カーディナル。ま、気軽にリリィって呼んでくれ。ルリとは双子の姉。……まあ、私はルリと一緒に生まれた時に死んじまったんだけどな？』

「生まれた時に……死んだ………？」

まるで悪戯を企てる小さな悪魔の様に、無邪気な笑顔を見せているけれど──その笑みとは真反対の、美しいカーテシーをしながら挨拶をする彼女。

その際、彼女の頭の右側についている、不器用に結ばれた青色のリボンと、ルリアとは反対の翼の装飾が揺れるのだった。

そして、その場にいると言うのに、挨拶の内容からは自身はもう死んでいる《・・・・・・・・・・・》と、矛盾した事を話すリリアに、カミーユは訳が分からないと言う風に首を傾げる。

『────カミーユ。セリーヌ様を呼んできてくれないか。……………多分、ウィル様もいるから』

「あ、は、はい……！　分かりました……！」

理解しようと思考を巡らせていたカミーユだったのだが、ジェシカの言葉によって我に返ると、靴の音を響かせながら部屋を後にするのだった。