#39 向かいあわせ
──────次に彼女が手を開くと、その小さな手の中にはリリアのドレスと同じ青色の長い紐があり、手は鋏で傷つけられたかの様な傷が無数に付いていた。
「ん……! これでおそろいね……!」『…………そうだな。でも、あんまりそれは使わないでくれないか……?』
手の傷は血が滲み始め痛いはずなのに、ルリアはお揃いが嬉しいのかにこやかに笑っていて。
リリアは手の内にある紐を受け取ると、傷だらけになったルリアの手をそっと包み込みそう述べる。だけど、その声は何処か悲しげで、ルリアはその事に気付くと、了承の証に小さく頷くのであった。
『…………どうだ?』「うん……! 似合ってるわ……!」
リリアはルリアから受け取った紐を頭の右側につけ────形は歪で、今にも外れてしまいそうなリボンを結ぶと尋ね、ルリアは笑みを浮かべ満足そうに頷く。
だが、はしゃぎすぎて疲れてしまったのかルリアは小さく欠伸をするのだった。
『まだ朝だもんな………寝るか?』「うん……リリィもねよ………?」
『あぁ、私も少し眠くなってきたからな…………』
リリアの返答を聞き、ルリアは彼女の手を引き天蓋ベットへと連れていく。そして、二人はベットで互いの顔が見えるように向かい合わせに寝転ぶと、クスクスと笑みを零しながら目蓋を綴じる。
そんな2人は固く手を握りあっていて、もう二度と──それこそ夢であっても離れたくないのか、2人は手を握る力を僅かに強くしながら夢の世界に堕ちていくのだった──────
長い長い昼が終わり、日が沈み切り月が現れる夜。
ルリアの世話係であり──彼女の友達となったカミーユは、何時ものように支度をする。
寝間着から淡い水色のメイド服に着替え、ぼさぼさとなった髪を手ぐしで梳かす。
そしてその髪の1部をサイドテールにし、淡い桃色の紐を使って器用に結び、紐をリボンの形にする。
そして部屋にある鏡の前で自分の姿を確認し、「よしっ」と小さく頷くのであった。
『────起きてるかー?』「は、はいっ……! 起きてます!」
しばらく鏡の前で自分の姿を見ていたのだが、扉を数度叩く音──そしてジェシカの声が聞こえれば、彼女は慌てて返事をし、扉を開けるのであった。
『おはよ。さ、行こっか』「おはようございます……!」
何時ものように扉の前には、ルリアの食事を手に持ったジェシカがおり、2人は挨拶を交わすとルリアのいる家へと向かう。
そして、ルリアのいる家の扉を開け、何時ものようにルリアを起こそうとしたのだが────────
「────え、ル、ルリア様がふたり……?」
ベッドに向かいあわせで眠る2人──ルリアそっくりの少女が2人で眠っている事に気付き、カミーユは目を見開き、混乱しきった声でそうつぶやくのであった。