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黒い屋敷とバラの庭に閉じ込められた少女  作者: 愛憎少女
第3章 Dedicated to an Angel
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#36 少女の願い

頭を撫でられ意味が分からないと表すかの様に、その瞳に混乱の色を宿しているルリアに向かって、彼女は優しげな笑みを向ける。


「────本当、お嬢様は優しいですね」



「……………やさしくなんて、ないわ……」


カミーユの言葉にルリアはゆっくりと首を振るのだが、それでも彼女は、自覚が無いだけで優しさに溢れているルリアが愛おしくて堪らなかった。


────俗に言う、庇護欲だろうか。

カミーユはそんな優しい彼女を護ってあげたいと感じており──ふと、ある疑問が頭に思い浮かんだ。


「そう言えば、お嬢様のお母様は?」


その言葉が耳に入る途端、ルリアは少し悲しそうな顔をする。

その顔を見、カミーユはそれが "踏み込んではいけないもの" だと気付くのに時間はかからなかった。


「──────見たこと、ないの。今まで、1回も。………でも、お姉様とお兄様は、私のためにお出かけしてるって、前にいってくれたの。」


「……………寂しく、ありませんでしたか………?」


「…………ちょっとだけ。お姉様もお兄様も、あんまりお母様とお父様のお話、してくれないから。………でも、お姉様とお兄様、それにカミーユがいるからもうさびしくなんてないの」


そうは言っているものの、ルリアの顔は何処か悲しそうな顔をしており、1度も見た事がない(・・・・・・・・・)のはとても寂しい事だと、自身の経験からそれを知っているカミーユは、そんなルリアがいたたまれなかった。


「…………お嬢様は、私と似ていますね。私も、父の顔は1度も見た事ないんです」


そんなルリアの寂しさを理解していると表す様に、カミーユは自身の父親の事を簡潔に述べる。


「……一緒、なのね。────────ねえ、カミーユ」


カミーユの父の事を知り、ルリアは深く尋ねたりはせずそう答える。そして、彼女の手をそっと握り、何かを言いたそうにしていた。

彼女はルリアと目線を合わせる様に屈み、首を傾げ彼女の言葉を待っていた。



「────あの、あのね。……私の、お友だちに、なってほしいの…………」


「友達、ですか……?」


暫し沈黙が流れ、決心がついたのかルリアはゆっくりと息を吐くと、途切れ途切れになりながら自身の願いを紡ぐ。

その願いを聞き、カミーユは驚いた顔をすると思わず復唱し、確認をするかの様に、ルリアにもう一度尋ねる形をとってしまっていた。


「うん……カミーユだけが、私のこと見て怖がったりしなかったから。それに、絵本でお友だちを見てね、カミーユとお友だちになりたいな、ってなってたの…だめ、かな………?」


尋ねられ、"断られてしまったらどうしよう" と考えながら、ルリアは震えた声で答える。

今まであまり自分の意見を言わなかった彼女にとって、カミーユの答えを待つ時間は永遠にも感じられて──────



「…………………勿論。こんな可愛らしいお嬢様と友達になれるなんて嬉しいです」


────承諾され、彼女は目を見開くと嬉しいのかカミーユに抱きついたのだった。

唐突に抱きつかれ、カミーユはバランスを崩しそうになるのだが何とか保ち優しい手つきでルリアの頭を撫でる。


「……あ、えっと、これあげる………! お友だちのあかし……! あ、後、お嬢様じゃなくて、ルリアって呼んでほしいの……!」


「いいんですか……? …………はい、えっと…ルリア、様。……少し、恥ずかしいですね」


少しの間、彼女は抱きつき頭を撫でられ幸せそうにしていたのだが、ふと何かを思いたったのかカミーユから離れ近くの人形を手に取る。

そして、人形についていた桃色のリボンを外しカミーユに手渡しながらそう述べる。

そのリボンを手に取り、カミーユは恥ずかしそうにルリアの名を呼び、ルリアも改めて名前を言われ少し恥ずかしそうにしながら柔らかな笑みを浮かべる。


友達(・・)となった2人の間には、とても暖かな空気が流れていた。















──────────【      】が目を覚ます。


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