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黒い屋敷とバラの庭に閉じ込められた少女  作者: 愛憎少女
第3章 Dedicated to an Angel
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#34 夢と母親

──────ルリアは、ゆっくりと目を覚ます。


それと同時に頬を伝って落ちてゆく水滴の感覚がし、寝起きで頭が働かない中でもそれが涙だと気付くと、どうして自身が泣いていたのかが分からず数度瞬きをする。



────なにか、夢を見ていたけれど思いだせない。


彼女は涙で濡れた頬を擦りながらゆっくりと起き上がると、先程見た夢の内容を思い出そうとするが思い出せず、心の中でそう呟く。

そしてふと、昨日の事を思い出し自身の手に視線を落とした。


──昨日の出来事で、女性の血で真っ赤になっていた手は何故か一切血がついておらず、能力の代償で痕が残ってしまった傷が所々に見えるだけで。身に纏っているドレスにも一滴の血も付いていなかった。

それはまるで、あの出来事が夢だと疑う程に無かった様になっているのだが。

ルリアの手には女性の頭を能力で壊した際、まるで静電気の様に指にピリッと電流の様なものが走った感触と、血の匂いは鼻から消えていなかった為に。彼女はあれが夢では無いのだと改めて実感する。


──────そして、ルリアはまた自身の能力のせいで人を殺してしまい、悲しそうに手を見つめるのだった。




『────おはようございます、ルリア様。今日は早起きですね?』「お、おはようございます……!」


暫くルリアは手を見つめていたのだったが、部屋の扉が開く音と、ジェシカとカミーユの声が聞こえると顔を上げ、声の方を向く。


「うん……なんでか早くおきちゃったの…………」


『早起きは良い事です、さ、着替えましょう?』


ルリアはジェシカの瞳を見つめながらその言葉に頷き、ジェシカは何時もの笑みを浮かべながら言うと彼女を抱きかかえる。

そして、何時もの様に着替えをし食事の席につくと、ルリアは何時もと変わらずナイフとフォークを持ち、食事を始めた。




「────ねぇ、カミーユ」


ジェシカは他の仕事がある為に部屋を出、長い時間をかけ食事が終わり、ルリアにデザートを渡す際、彼女はテーブルに近付いてきたカミーユの名を呼ぶ。

呼ばれたカミーユは何かあったのかと表す様に首を傾げ、彼女の言葉を待っていた。


「────────私のこと、こわく、ないの……?」


少しの静寂が2人を包み、ルリアはゆっくりと息を吐くと途切れ途切れになりながらもそう言葉を紡ぐ。


昨日の出来事があったからなのか、カミーユがそれを知らないかもしれないという考えも思い浮かばないまま思っている事を口にする彼女は、心の底から "怖がられたくない" と考えているのだろう。

その証拠に彼女の声は震えていて、今にも泣きそうなのであった。


「安心して下さい、怖くなんてないですから。…………正直、お嬢様より私の母親の方が怖いです……」


カミーユは彼女の言葉を聞くと、にこりと明るい笑みを浮かべ安心させる為に優しい口調で答えるが、途中で自身の母親の事を思い出したのか困った様に笑みを浮かべる。

ルリアは母親(・・)という言葉を聞き、数度瞬きをした。


「カミーユのお母様ってどんな人なの……?」


「え、んーと……普段は優しいのですが、怒るととてつもなく怖かったですね……」


先程とはうってかわり、興味深そうに尋ねるルリアを見、カミーユは自身の母親の事を簡単に説明をすると、彼女はもっと知りたいのか目を輝かせていたのだが、デザートが冷めてしまう事に気付き慌ててデザートを食べるのであった。



「──カミーユのお母様のこと、もっと知りたい……」


デザートを食べ終わり、ベッドに腰掛けたルリアは食器の片付けをしているカミーユを見つめながら言葉を零す。


「何も面白い事はないですが……それでもいいんですか?」


カミーユは少し考え込んだ後、ルリアにそう問いかけるが彼女が頷いた為、何を話そうかと悩み始めた。


「……あ、母親はとっても料理が下手で、すぐに焦がしたりしちゃってたんです。懐かしいなぁ………」


「へぇ……。……どうして、ひとりだったの?」


懐かしそうに目を細め語るカミーユを見、ルリアは心の中に何か嫌なものが貯まる様な感覚に陥り、少し声色を下げながら相槌を打つのだが。──ふと、彼女が森で倒れていた時は一人だった事を思い出し、そう尋ねる。

ルリアの言葉の意図が掴めなかったのか、カミーユは少しきょとんとした顔をしていたのだが、悲しそうに笑うと目線を下に移した。


「その……魔女狩りで、殺されちゃって…………私も殺されそうだったのですが、逃げて……それで………………」


魔女狩り(・・・・)

ルリアは初めて聞く単語に首を傾げるのだが、殺されたという言葉を聞き、目を見開く。

そして何も言わずカミーユの傍に近寄ると、翼をはためかせ宙に浮き、少し戸惑いを見せたのだが。そっと、優しい手つきで彼女の頭を撫でるのだった。



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