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黒い屋敷とバラの庭に閉じ込められた少女  作者: 愛憎少女
第1章 Vampire girl
2/50

#1 部屋の少女

──少女は、暗い部屋にある大きなベッドに腰掛け、手元にある絵本を読み続ける。

時折、腕の中にある白うさぎの人形に話しかけ、絵本の内容を読み聞かせながら。


彼女の名前は、ルリア・W(ウィスタリア)・カーディナル。

この部屋に住んでいる吸血鬼だ。


ルリアはしばらく絵本を読んでいたが、飽きたらしく絵本を自身の傍らに置くと、ベッドに寝転び、腕の中にある人形を抱きしめる。


その際に彼女の長く艶やかで、色素がとても薄い銀の髪はベッドに広がり、頭の左側についている淡い水色──まるで、冬の透き通った空のような水色のリボンがひらりと揺れる。


「ひまだね……らび……」


らび、というのはうさぎの人形の名前なのだろうか。

ルリアは腕の中にある人形にそう話しかけると、足を軽くばたつかせながら、いつ夜になるのかと考える。


────そんな彼女の左足には、鉄で出来た足枷が嵌められており、足枷からのびる長い鎖はベッドの足に繋がれていた。

その足枷はまるで、彼女の意思で外に出てはいけないのだと表している様だが。それが彼女にとっての"普通"なのか、その足枷を特に気にしてはいなかった。


その様子から、足枷は彼女が物心ついた時から付いているのだろうと伺えた。



そんな彼女はしばらく足をばたつかせ、その度に足枷の鎖は揺れ、ベッドの足に当たりカーンという金属音を響かせる。

ルリアはその音が嫌だったらしく、人形から手を離すと手で耳を塞いだ。


「……何、やってるんだろう………」


耳を塞ぎ、少しだけ聞こえる金属音が無くなっていくのを感じた後。彼女はそっと耳から手を離すと、人形に笑みを向けながら呟く。


その笑みはどことなく悲しそうだったが。

彼女は人形をまた抱きかかえると徐に起き上がり、ベッドから降りた。


ベッドから降りた際に、コツン、と靴の音が部屋に響き。ルリアが立ち上がると、彼女が身に纏っている頭のリボンの色と同じ、薄い水色のドレスがふわりと揺れる。


そして彼女は、人形を持っていない方の手で少しだけドレスをはたくと、部屋の中で1番大きな人形に近付いていった。




「よいしょっ……えへへ」


その人形はくまの人形なのだが。彼女の身長よりもずっと高く、壁に寄りかかる形で座っていた。

彼女はそんな人形の足の部分に腰掛けると、笑みを浮かべながら顔を見上げ、人形を見つめる。


彼女より背が高くふかふかとしている人形は、彼女にとって、夜にしか会えない家族──兄と姉の代わりのような物で。

ルリアは、手に持っていた人形を自分の近くに置き、ぎゅっと大きな人形にしがみつくと、白い睫毛に縁取られた目蓋をゆっくりと綴じた。






一方、外は夕方らしく、空は血の様に紅く染まっていて、黒い屋敷の窓には赤い光が入る。


カーテンの隙間から漏れ出る赤い光を、1人の少女──まるで月の出ている夜の様な色をした長い髪の少女は、ベッドに腰掛けたままぼんやりと見つめていた。


太陽が傾くに連れて部屋が暗くなっていく。

完全に暗くなると、少女は血の様に紅い瞳を輝かせながらベッドから下り着替えだす。

髪と同じ色をした蒼と白を基調にしたドレスに着替える。そして胸元と腰にある黒いリボンを結ぶと机に近付き、机の上に置かれている鐘を持つと数回鳴らす。


鐘のカランカランという音は屋敷中に響き渡ると、少女の部屋の扉を数回叩く音が聞こえ、扉が開かれる。

そこには一人の女性──メイド服を着た女性がおり、少女は女性に何かを言うと、女性は承諾の証として彼女に深々とお辞儀をし、部屋から立ち去っていく。


少女は、部屋から立ち去っていった女性の後ろ姿を見届けた後。

少しヒールの入った靴の音を響かせ、部屋を後にした──────

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