#9 孤独
ジェシカとルリアは屋敷の近く、紅いバラの庭がよく見渡せるテーブルに辿り着くと、ジェシカは椅子にルリアを座らせ、ルリアは人形を片手に持ちながら蝶を捕まえる事に苦戦していた。
だが、蝶はテーブルに止まったと同時にティーセットへと変わり、ルリアは驚いたのか小さな声をあげる。
その様子をジェシカは笑みを浮かべ見ていたが、その場でクッキーを出すとルリアの目の前に置いた。
『お2人が来るまで先に食べちゃいましょう』
クッキーを目の前に、一気に目を輝かせたルリアに言いながらジェシカは紅茶を用意し、ルリアは頷くとクッキーに手を伸ばし口に含んだ。
「んーっ……!」
クッキーのほのかな甘みにルリアは頬に手を当て、嬉しそうな声を出す。
「ジェシカの作る物はなんでも美味しい……!」
地面に届かない脚をぱたぱたと動かし、サクサクと手の内にあるクッキーを食べ終えると、ルリアは笑みを浮かべ言い、ジェシカも笑みを浮かべながら礼を言う代わりに深々とお辞儀をする。
しばらくクッキーを食べ、紅茶を飲んでいたが3人が戻ってくるのを見るとルリアは立ち上がり、人形を持ったまま3人に駆け寄った。
「おねーさまっ、おにーさまっ……あれは…………」『ルリア。危ないからジェシカと一緒にいなさい。わかった?』
駆け寄り、ルリアは人形を抱きしめながらセリーヌに尋ねるようとしたが、セリーヌは、その言葉をさえぎり、鋭い目線でルリアを見ながら言ったので、彼女は目を伏せ小さく頷く。
ルリアが頷いたのを見ず、セリーヌは蒼のドレスを翻すとメイドが扉を開けたので屋敷の中に入り、2人もその後に続き中に入る。
屋敷の玄関の前で1人、バタン、という大きな扉が閉まる音を聞きながら、彼女は目を伏せ人形を抱きしめていた。
『………ルリア、様』
人形を抱きしめたまま動かないルリアを見、ジェシカはおずおずとルリアに声をかけるが彼女は下を向いたまま動こうとはしない。
少し経った後、彼女は下を向いたまま歩きだし、ジェシカはルリアの後を追おうとする。
「ついて、こないで…………っ」
だが、ルリアはジェシカの方を見ようとはせず、小さな声で言うと駆け出し自分の家へと向かっていった。
一方、空いている部屋のベッドに抱えている少女を寝かせたウィルは、セリーヌに近付く。
「……とりあえず、目が覚めるまではそのまま寝かせておいた方がいいね」
『そうね。いつ起きても良いように代わる代わるメイドを行かせましょう』
「………後、ルリの事なのだが」
2人は眠っている少女を見ながら会話をしていたが、ウィルは先程の出来事を思い出し、セリーヌの方を見、セリーヌは首を傾げる。
だが、ウィルは自分で気付いた方が良いと感じ、「何でもない」と言うとセリーヌから去り、セリーヌは訳が分からず首を傾げたままウィルの背中を見つめていた。