第3話 ユニークスキルと黒狼
遅くなりました。3話目どうぞ。
楽しんでくれると嬉しいです。
“称号「影に潜むもの」を獲得しました。”
“称号獲得によりAP10、スキル「影魔法」を獲得しました。”
「うえっ!?」
突如鳴り響いたシステムメッセージを受け、俺は目を覚ます。
寝ぼけ眼に寝転んだままステータスを開く。
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レン / Lv5 / SP 0 / AP 18
HP 90
MP 90
STR(筋力) 18
DEF(耐久) 18
INT (知性) 18
AGI(敏捷) 30
DEX(器用) 18
LUC(運) 20
【スキル】 5/10
短剣(15/100)
気配察知(10/100)
瞑想(20/100)
隠密(40/100)
回避(20/100)
【予備スキル】
影魔法(0/100) New!
-使用可能魔法-
シャドウハンド
【称号】
始まりに集いし者
影に潜むもの New!
一定時間以上、安全ではないエリアにいる状態で敵に一切見つからず、気配も感じられないことで獲得できる称号。気配を隠すことに補正あり。
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新しい称号と魔法スキルを獲得していた。今回見たいに魔物がいるフィールドでも昼寝をしたい俺にとっては最高だ。影魔法は使ってみないとわからないが、戦闘の方が使えそうだ。ともあれ使えるものがあるのはありがたい。
俺はすぐさま影魔法をセットした。急なアナウンスにびっくりしたが、目も覚めたし起きようとする。
「あれ…」
体が起き上がらない。まだ眠っていて夢の中なのか?テクノロジーはそんなに進歩しているのか?そんな冗談を考えたが、そんなことはなかった。
寝転んだまま、目線を下に向けると大型犬より少し大きいくらいだろうか、黒い狼が腹の上にのしかかったままこちらを見つめていた。
「…えっ…えぇぇぇぇぇ!!」
「グルㇽㇽㇽ」
俺の声に驚いたのか、飛びのいて耳をぴんと立て、こちらを威嚇する。
「すまない、驚かせたか」
威嚇はしているが、敵意は感じない。
むしろ少し無理に威嚇しているように見えた。
「俺はお前に危害を加えない。いいか?」
そう言いながら両手を一度挙げ手のひらを向けた後、手を少しずつ黒い狼に差し伸べる。
「グルㇽㇽㇽ…」
威嚇しながらも拒まず、撫でさせてくれた。
毛並みが最高に気持ちいい。
モフモフ最高!とネットで叫ぶ、ケモナーと呼ばれる人種の気持ちが少しわかったような気がした。
「ははっ、お前の毛並み最高だな!」
そう言いながら撫で続けると警戒を解いてくれたのか、伏せて撫でるがままになってくれた。
「そうだ、腹減ってないか?これ食うか?」
ホーンラビットの肉を出して、狼の目の前に置いてみると
少しためらった後、嬉しそうに食べ始める。
「最高だなぁ…ゲームも悪くないな」
昼寝ができる場所、スキンシップもとれる狼。ゲームを始めてそう経っていないが、もうすでにいろいろな良さを感じていた。
しみじみ思いつつ、撫で続けていると再びシステムアナウンスが鳴る。
今度は何だ?そう思い、メニューを開くと、一度ログアウトするように警告が出ていた。
「空は眠る前と同じで明るいし、ゲーム内時間は現実の4倍なので、まだそんなにログインした覚えはないはずなんだけどな。」
だが、そんなことはなかった。ゲーム内時間を見て絶句した。
「寝てから、1日経ってる…」
つまり俺はリアル時間で6時間眠ったままだったということだ。
休日は1日中寝たりすることもあるからと特に変ではないが、ゲームでも同じらしい。
とにかくログアウトしなければ、セキュリティシステムによって強制ログアウトされてしまう。しかし安全地帯である街に戻る時間はない。
どうするか…
黒い瞳がじっとこちらを見つめていた。
どうせログアウトするなら頼んでみるか。
「なぁ、俺はこれから少し寝るから、守ってくれないか?
さっきの肉と交換だ」
そう言いながら肉をインベントリから取り出して側に置く。
そうすると理解してくれたのか、俺の側に来て伏せてくれた。
「賢いやつだ。頼んだぞ」
そう言って一度ログアウトした。
意識が覚醒する。
ヘッドマウントディスプレイを外し、体のこりをほぐす。
戻ったらまたモフモフしよう。気が付けばそんなことを考えていた。
完全にEAOにはまったらしい。
次にログインできる4時間後が待ち遠しかった。
***
「よっ、守ってくれてありがとな」
4時間後すぐさまログインした俺は、ログアウトする前と変わらず側に伏せている黒い狼に礼を言う。
「それにしてもお前っていうのもなんだしなぁ…お前名前はないのか?」
そう問いかけるも黒い狼は見つめてくるだけで何も返さない。
「んーなさそうだなぁ…。なぁ、俺が名前を付けてもいいか?」
「ウォン!」
そう聞くと黒い狼は立ち上がり、嬉しそうに尻尾を振る。
どうやらいいみたいだ。
「うーん、狼…ロキってのはどうだ?」
「ウォン!」
名前を問いかけると、先ほどよりも尻尾が揺れている。
どうやら気に入ってくれたらしい。
「よろしくな、ロキ!」
“特定条件「名付け」を達成しました。”
“称号「魔物と友誼を結びし者」を獲得しました。”
“称号獲得によりスキル「獣魔術」を獲得しました。”
「…またかよ…もう何が来ても驚かないぞ」
アナウンスを聞いて、俺は再びステータスを開く。
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レン / Lv5 / SP 0 / AP 18
HP 90
MP 90
STR(筋力) 18
DEF(耐久) 18
INT (知性) 18
AGI(敏捷) 30
DEX(器用) 18
LUC(運) 20
【スキル】 5/10
短剣(15/100)
気配察知(10/100)
瞑想(20/100)
隠密(40/100)
回避(20/100)
影魔法(0/100)
-使用可能魔法-
シャドウハンド
【予備スキル】
獣魔術(0/100)
-獣魔(0/1)
【称号】
始まりに集いし者
影に潜むもの
魔物と友誼を結びし者 New!
初めて一定時間以上魔物と敵対せず、一緒にいたものに送られる称号。
魔物と仲良くなりやすくなる。
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「また、妙なもんを…」
少し放心していると、シズクからメールが送られてきた。
「一度街で合流しよ!集合場所は最初の噴水の所ね!…てか。ずっとフィールドにいたし、そろそろ戻るか。ロキ俺はそろそろ帰るよ。またな!っておい!」
ロキに別れを告げ、その場を去ろとしたが、気づけばロキにズボンの裾を咥えられていた。
ロキに目を向けると何か訴えるかのように、つぶらな瞳を俺に向けていた。
「一緒に行くか?」
さすがにこの行動の理由がわからないほど俺も鈍感でもない。不思議とロキといるのは居心地が良かった。ぜひともこれからも一緒にいたいものだ。
“特定条件を満たしているため、名付けた魔物を獣魔にすることができます。ロキを獣魔にしますか?”
システムアナウンスは唐突に現れる。
もちろん答えはYesだ。
“ロキが獣魔になりました”
こうして俺は初めての相棒を手に入れた。