第13話 劇薬
「レン君、薬はどういうものだと思う?」
一通りの薬の作り方を教えてもらい、作れるようになった後、エナさんは柔らかい表情から一転、真剣な表情で尋ねてきた。
まだ知り合って、それほどエナさんのことを分かったわけではないが、その顔には緊張感が見て取れる。
「人を助けるもの…ですかね」
「うんうん、薬は本来そうあるべきだよね!」
俺の回答を聞いて、エナさんは真面目な顔から一転、破顔する。
「でもね、薬は時には人を害するものになるの。レン君にはそのことを知っていてほしいから教えるね」
そうして回復薬を作るのに必要な材料と、少量の水を使って作り始める。
そしてそう時間のかからないうちに毒々しい紫の液体が出来上がる。
「薬にはね、反転という現象があるの。素材が多すぎるか、水が少なすぎるかで毒に転じる。それが反転。回復薬は、過回復薬。解毒薬は毒薬。それぞれの効果が反転したものになるわ。薬を作る人がすべからく善人であれば良いんだけど、そうはいかないの。もしかしたらこれからレン君は薬を悪用している人に出会うかもしれない。その時はその人を正してあげてくれると嬉しいな」
エナさんは微笑みながらそう言ったが、その笑みにはどこか寂しげで、何か過去にあったかのような遠い視線をしていた。
「もちろんですよ!エナさんに教えてもらったことを生かして、バンバン助けてやりますよ!師匠は誰だって聞かれたらエナさんのこと自慢しまくります!」
エナさんの寂しげな顔を元気にしたくて、俺はいつも以上に元気に振る舞う。
「….ありがとう」
どうやら効果があったみたいだった。
「さ、行った行った!」
「ありがとうございました!また来ます!」
しんみりするのをエナさんが嫌がったのがわかったので、野暮なことは言わずそのまま去ることにする。
「クゥーン」
ロキも挨拶をして俺たちはエナさんの元から去っていった。
「…いつでも来ていいからね、レン君」
***
「さて、ロキこれからどうするよ」
俺たちはエナさんと出会った場所に戻っていた。
「ウォン!!」
ロキが俺の腰にある短剣に鼻を擦りつける。
「忘れてた…」
俺はクラマに武器を作ってもらうために素材を集めていたのを、すっかり忘れていた。
「ロキ、ありがとうな!よし…!」
これからの予定は決まった。
まずはクラマに武器を作ってもらおう。
その後の予定は未定だが、俺の目的は最高の昼寝場所を探すことだ。
かっちり決めなくてもいいだろう。
あ、あと美味しい食べ物探しもだな。
「クラマのとこに行こうか。でもその前に…ここでもう一回昼寝していこうぜ!」
「ウォン!!」
ロキも似た者同士なのか、尻尾が振り切れていた。
「さすが俺の相棒だ!」
そして、俺たちは重なり合うようにして眠るのだった。
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シークレットクエスト 劇薬をクリアしました。
調薬のスキルの熟練度を50獲得しました。
調薬の熟練度が最大になりました。進化が可能です。
特殊条件「劇薬」を確認しました。
特殊進化が可能です。
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