第7話 クラマ
今日は早めの投稿です^^
そろそろストックが...
「武器が必要だな…」
街に戻った俺は、砕けてしまった短剣の代わりに新たな武器を探さなければならなかった。
「…っとその前に」
自分のステータスを見るとロキの再召喚が可能だということがわかったので、呼び戻す。
「ロキ」
名を呼ぶと、召喚陣が足元に展開され、ロキが現れる。
ロキはこちらを申し訳なさそうに見ていた。
「敵は取ったぞ」
俺の言葉を理解して、ロキは目を見開いた後、こちらに駆け寄ってすり寄ってくる。
…可愛い。
「もう勝手なことはするなよ。俺とお前は相棒なんだからな」
「ウォン!」
ロキの尻尾ははち切れんばかりに揺れていた。
「さてと、武器を探しに行くか…できればオーダーメイドで作ってほしいんだけどなぁ…」
そう言って歩き出しながら俺はグリズリーウルフの戦利品をメニューから見る。
灰色大狼の牙
灰色大狼の皮
灰色大狼の鋭爪
スキルオーブ「飛刃」
ボス素材とあって、なかなかにいい素材に思えた。
少しNPCショップで聞き込みをしてみるとNPCショップでは素材から武器を作ることはできないらしかった。
とはいえ、まだ知り合いはシズクたちだけ。
シズク達に聞くことも考えたが、また情報を教えてもらってはおんぶにだっこだ。
それは避けたかった。
「グルル」
「見つからないな…」
街中を歩き回ったせいか、ロキも少し疲れた様子を見せていた。
「ロキ、最後に細道を見て回ろう。それで見つからなかったら何か美味しいものでも食べようぜ」
「ウォン!」
そう言って、細道に入る。
大通りとは違って、少し薄暗く危ない奴らが出てきそうな雰囲気が漂っていた。
とは言え、ほんとにそういうやつらが出てくることもなく、細道では露店を開いているプレイヤーたちが多くいた。
武器を売っているプレイヤーの露店を冷かしながら、良いものを作ってくれそうなプレイヤーがいないか探す。
色々見てきたが自分の中でこれだ!とお目当てに叶う武器を売っているプレイヤーがおらず、諦めかけた時あるプレイヤーの露店が目に入った。
「ほう…」
思わず口に出してしまう。
露店にはいわゆるキワモノと呼ばれる武器が所狭しと並べられていた。
苦無、まきびし、棘のついた杖、鎖鎌、槍と斧とハンマーが一体化したなんと呼べばいいのかもわからない武器、二股に分かれた剣等々あげればキリがない。しかしどれも細かく作りこまれており、製作者のこだわりを感じた。
面白い!
気づけばにやけていた。
「何かお探しですか、お客さん」
シルクハットを深く被った銀髪で男声のプレイヤーが、話しかけてきた。
髪が長く、下を向いているせいか口元しかわからないが、同じように口元はにやけている。
「この素晴らしい武器たちを作ったのはあなたですか?」
この武器を作ってもらった人に作ってもらいたい!
そう思ったときには口を開いていた。
銀髪の男は再度にやり、とする。
「この武器たちを素晴らしいと言ってくださる人に会ったのはあなたが初めてです。
わたしのこの風貌からそもそも声を掛ける人は少ないんですがね…
ご質問の答えですが、答えはYesです」
その答えを聞いて気分が上がる。
銀髪の男はこう続けた。
「申し遅れましたが、私は鍛冶師のクラマです。私の信条はとにかく作りたいものを作る、です。どうぞよろしくお願いします」
そしてシルクハットを外して、頭を下げた。
狐目でにやりとしたその姿は、髪色と相まってまさに銀狐のようで、
そしてどこか捉えづらい雰囲気を出していた。
この人に武器制作を頼むことを既に決めていた俺は、回りくどいことはせず、頼むことにした。
「レンと言います。一緒にいる相棒はロキです。
いきなりで申し訳ないのですが、あなたに武器を作ってほしい」
クラマは薄く開いた両目の内、左目だけを大きく開けてまたにやりと笑う。
「私にオーダーメイドを頼むとは。今まで何人も私の作成した武器を覗いていきましたが、誰もかれもこんな武器使えないだろう、どうやって使うんだという目をして離れて行きました。中には暴言を吐いて去る人まで。いやはやこんなキワモノ鍛冶師にレンさんあなたは何をお望みで?」
「俺がやりたいことを満たせるものを」
「クックック、やりたいことを満たせるものをですか…面白いことを言いますね。ちなみにあなたのやりたいことは?」
「昼寝」
これだけは譲れない。
俺のアイデンティティだ。
「この世界にしかない景色の場所に行きたい」
そして、紹介動画の時に見た美しい景色に行くためにはどんな場所・状況にも対応できる強さがいる。
「…本当に面白いですね。いいでしょう!作りましょう、あなたの望むものを
手持ちの素材を見せてもらっても?あなたの戦闘スタイルも教えていただけると」
「俺の戦闘スタイルは、気配を消して攻撃する暗殺者タイプかな」
昼寝をするためだけに考えたビルドだったんだけどなーなどと思いながら俺は答える。
「素材はこれを」
「これは…これをどこで…」
グリズリーウルフの素材を見せる。
クラマは両目を見開いて、俺をじっと見つめる。
「ちょっと森でね」
「これはちょっとというレベルではないかと思いますが…」
そう言った後、ぶつぶつとつぶやいて自分の世界に入る。
「これがあれば...いや…あれがあればもっと…」
体感で3分ほど経ったころ、急にクラマは立ち上がり俺の肩を掴んでこう言った。
「私は実は武器だけではなく、防具も作れるのですが、私に防具も作らせてはもらえませんか、いや作らせてください。
しかし1つ問題があります。素材が足りません。
そこで提案があります。」
一度言葉をきり、クラマは肩を掴んだ手に力を込めてこう言った。
有無を言わさないオーラを出しながら。
「制作費用はタダでいいので、足りない素材を取ってきてください」
これが後にEAOで【マニアックマイスター】の二つ名がまことしやかに囁かれる鍛冶師との出会いだった。