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魔法? そんなことより筋肉だ!  作者: どらねこ
3章 フィーリア編
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30話 誘拐

 いつもと変わらぬある日、俺は宿で目を鍛えていた。

 目というのは人体の弱点であり、俺は弱点をそのままにはしておかない。


 唐辛子をすりつぶした汁を目に垂らしこむ。

 最初は拷問のようにきつかったこの訓練も、慣れればなんてことはない。目薬と同じような感覚だ。

 しかし慣れてしまうのは良くないので、どんどん濃度を上げていた。

 今は濃度四千パーセントだ。

 かなり刺激的で、眠気も吹っ飛ぶ。……ぶっちゃけ痛い。


「だが、この痛みこそが俺の目を強くするんだ! 頑張れ俺!」


 俺は誰もいない部屋で、一人大声を出した。

 ちなみにフィーリアは一人で買い物に出かけた。

 今日はフィーリアが食材を買いに行く番なのだ。






 昼を過ぎたが、フィーリアが帰ってこない。

 食事はいつも一緒に食べていたのだが、どこかで一人で食べているのだろうか。

 いや、それならば前もって連絡してくれるはず。……なにかあったのだろうか。


 不審に思った俺はフィーリアを探すことにした。

 匂いがあれば追跡することができる。

 匂いは覚えているが、念のためもう一度しっかり確認しておくか。


 幸いフィーリアとは一緒の部屋で寝泊まりしており、匂いのついたものはたくさんある。

 俺はベッドに近づき、枕の匂いを嗅いだ。

 今フィーリアが帰ってきたら俺の信頼は地に落ちるな、と考えながら匂いを嗅ぎ取る。

 花の匂いのような、やさしい匂いがした。




 確実に匂いを認識した俺は、外へと向かう。

 フィーリアの匂いは非常に薄いため、気は抜けない。全身全霊でフィーリアの匂いを追跡した。

 ムッセンモルゲスの街を、フィーリアの匂いに従って歩く。


「……ここ、か?」


 やがて匂いの終点に辿りついた。

 匂いは目の前の屋敷に続いてる。石でできた建物の中でも、相当に立派な家だ。

 まさに豪邸という言葉がぴったりと当てはまるような、そんな家。

 こんな家にフィーリアは何か用があったのだろうか。

 フィーリアには人間の知り合いはかなり少ない。

 もしかしたら一人で街をふらついている時に知り合ったのかもしれないが、万が一というものがある。


 俺はインターホンを押した。返事はない。


「すまない、用があるんだが」


 話しかけても返答はない。

 俺は神経を研ぎ澄ませ、家の中の気配を感じ取る。

 家の中に生命反応は……六つ、か。ますます怪しいな。

 誰かいるなら出てくればいいのに、出てこないということは何か隠している可能性があるということだ。


 いますぐ侵入したいが……。

 俺は辺りを見回す。

 家の前の通りには、通行人が数人歩いている。彼らに気付かれずに家に忍び込むのは無理だろう。


「んなことは関係ない。それよりフィーリアだ」


 俺は家の扉をぶち破った。

 これで俺の勘違いだったら謝りゃいいだけだ。幸い毎日のように依頼をこなしたおかげで金はそこそこある。

 家の中を匂いに従って進む。一階には人気(ひとけ)がない。


「……二階だな」


 俺は階段を上がる。そして匂いの元に辿り着いた。


「さっきの音はなんだ……!? 貴様はなんだ! なぜ私の屋敷にいる!」


 デブが待ち構えていた。

 脂ぎった顔にだらしのない身体をした男だ。

 質のいい服装をしているが、こんな奴にかまってる暇はない。


「フィーリアはどこだ?」

「どこかで見たことのある顔……貴様、魔闘大会の優勝者だな。あのエルフのお仲間だったか。あのエルフは中々私好みの見てくれだったのでね。私が飼ってやることにしたのだよ。説明は以上だ。帰りたまえ。さもないと……」


 ニタニタと笑う男の背後から五人の人間が飛び出してくる。

 三人は男を守るように取り囲み、二人は俺に飛びかかってきた。

 これは黒だな。――つまり、遠慮は無用か。

 瞬時に筋肉を解放した俺は跳びかかってきた人間を殴り倒し、残りの三人も殴り倒す。

 そして男の胸ぐらを掴み、宙に浮かせる。


「さもないと、なんだって?」

「ぴょ!? ……ぴょぴょ!?」

「気持ちの悪い声を出すな。フィーリアはどこだ。言わないと、おまえを殺す」

「ち……地下から穴を掘ってアジトへ行った! 他人を意のままに操るためには専用の魔道具が必要なのだ! わ、私は教えたぞ! 頼むから殺さないでくれ!」


 男を放り投げ、一階へと降りる。

 土がむき出しな壁があり、ここからどこかへ移動したのだろうと言うことはわかったが、通った後ですぐに蓋をされていて匂いを追うことができない。

 俺は二階に戻り、転がっている男を拾い上げる。

 気絶しているようなので、小指の爪をはがしてやる。男は悲鳴を上げながら意識を取り戻した。


「おい、穴が繋がってる先はどこだ」

「私の爪があああ!」

「質問に答えろよ」


 腹を殴る。

 また気を失わせないように、細心の注意を払った。


「穴はどこにつながってるんだ! 答えろ」

「知らん、私にも知らされておらんのだ! 本当なのだ! ヴェルキス盗賊団の、ヴェルキスってやつだ! そいつがエルフを連れて行った!」


 確認のためもう一度腹を殴ったが、答えは変わらなかった。

 つまりこのデブの言ってることは本当ってことか。


 しかし、そうなると……まずいな。

 俺はフィーリアを追うための重要な手がかりを失ってしまった。

 かわりに得たのは、ヴェルキス盗賊団とかいう輩がフィーリアをさらったという情報。

 なんとかしてヴェルキス盗賊団の居場所を探さなければ。

 俺はのた打ち回る男を置いて屋敷を飛び出した。

執筆時間を少しでも多くとるため、感想への返信を控えさせていただこうと思います。

感想をいただけるのはとても嬉しく執筆の励みになっているのですが、今までこんな経験をしてこなかったもので、そちらに気をとられて執筆ペースがかなり落ちてしまっています……。

感想に返信することと続きを書くこと、どちらが大事かを考えた結果です。

私の力不足ゆえです、申し訳ありません。

もちろん頂いた感想は引き続きすべて読ませていただきますので、今後ともよろしくお願いいたします!

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[一言] 濃度4000%?作者やっぱり頭悪いな。
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