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魔法? そんなことより筋肉だ!  作者: どらねこ
3章 フィーリア編
25/196

25話 今、再びの買い物

 魔闘大会の翌日。

 さっぱりと晴れ渡った天気の中、俺たちは街を歩いていた。

 フィーリアの新しい服を買うためだ。大会で駄目にしてしまったからな。


「ユーリさん、早く行きましょうよー」


 まばらな人通りの中、フィーリアは軽く走って俺の前を行く。


「フィーリアが急ぐのは珍しいな」


 いつもマイペースで、むしろ引っ張られる側なのに。

 俺がそう言うと、フィーリアは自分の服の首元をピンと引っ張る。


「だってユーリさんの服ぶかぶかなんですもん。早く自分の服を買いたいです」

「まあ、俺とお前じゃ体の大きさが違うからな」


 しかも俺の場合は筋肉を解放すると二メートル超まで体が大きくなるから、それにある程度対応できるように今の俺の体型よりも大きめの服なのだ。

 あまりにぶかぶかすぎて少し不格好だが、それが逆にいい感じに見えるのはフィーリアの美貌ゆえか。

 何着ても似合うとか、コイツズルすぎだろ。


 ぶかぶかなシャツはフィーリアの膝まで伸びていて、下にはいているフィーリアの短パンを隠してしまっている。

 大きすぎて逆に丈の短いワンピースと化した俺のシャツから覗く白い太ももに、周りの通行人の目も集まっていた。

 そよ風が服を揺らす度、周りの男どもの鼻息が荒くなる。


「? どうかしましたか?」


 どうやらフィーリアはそれに気が付いていない様子だ。


「……いや、別に何でもない。それより早く行くぞ」

「はい、行きましょー行きましょー!」


 フィーリアに注目が集まっているのになんとなく不快感を感じた俺は、歩くペースを上げて服屋へと急いだ。




 やってきたのは以前と同じ服屋だ。

 別に違う服屋でもいいのだが、わざわざ店を変える理由もない。


「ユーリさんが買ってくれるんですよね?」

「ああ、買ってやるよ」


 約束したしな。


 それを聞いたフィーリアは妖艶な笑みを浮かべ、桃色の唇に手を当てる。


「このお店で一番高いのにしよっかな~?」

「……お前、容赦ねえな」


 店の入り口に「純金のドレス」とかいう誰が買うのかも定かでない代物があったことを思いだし、俺は引き笑いを浮かべる。

 さすがにあれを購入できるほどの金は持っていない。

 しかし男たるもの一度した約束を反故にするわけにも――


「冗談ですよぅ。ユーリさん、これ買ってください」


 俺が悩んでいると、フィーリアはクスッと笑って近くにあった服を手に取った。

 フィーリアが手に取ったのは前と全く同じもの。

 白を基調とし、袖に近づくにつれて桃色に変わっていく服だ。


「同じ服でいいのか?」


 てっきり違う服を選ぶのかと思っていたが……。

 俺の質問に、フィーリアはこくんと首を振る。


「はい、これがいいんです」


 フィーリアがそう言うのでその服を買ってやった。

 約束したことだし、フィーリアがそれがいいというのなら俺としても言うことはない。

 俺としても、俺が選んだ服を気に入ってくれていたというのは嫌なことではなかった。


 その後、俺は自分用の服を買い(あさ)る。

 俺はすぐ服を駄目にしちまうからな。


「なあなあフィーリア。この服どう思う?」


 その中でも特に目を引く一着を見つけた俺は、フィーリアに意見を求めた。


「どれですか?」とフィーリアが俺の方を向く。


 俺が注目したのは腹と背中の部分が開いていて腹筋が露わになる黒い服だ。

 筋肉を膨張させても破れないところが実にいい。

 唯一の弱点と言えば、ほとんど服としての体裁を保っていないところか。


「中々イカした服だと思わないか?」

「イカしたというよりイカレてます。私はユーリさんのセンスに絶望を隠せません」


「というかそれ服というより布ですよね」という一言でとどめを刺された俺は、思い直してその服を買うのを止めた。

 良い服だと思ったのだが、着ている服なんかで不必要にパートナーに嫌悪感を与えるわけにはいかないからな。

 まったく、俺ってやつはなんてパートナー思いな男なのだろうか。


「俺ってインテリマッスルでもありながらジェントルマッスルでもあるよな」

「謎の言葉を一気に二つも作らないでください」


 そう言ってフィーリアは軽く笑った。

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