表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/196

186話 風に乗ってやってくる

 いよいよ闘技場での初めて開かれる大会を前日に控えたその日。

 俺とフィーリアは王の間を訪れていた。

 王の間といっても雰囲気は堅苦しいものではない。

 ガルガドルの他に壁際には秘書も控えているし、なによりロリロリがいるからな。


「父上くらえー、ロリロリぱーんち!」


 こんなヤツがいて堅苦しい雰囲気になるわけがない。


「ぐええー、やーらーれーたー」


 ロリロリのロリロリぱんちによって、ガルガドルは地に伏せる。

 ガルガドルはもう俺たちの前で取り繕うのも馬鹿らしいと思い始めたのか、ロリロリと関わる時は完全に一人の父親と化してるな。

 地面に頬をつけたまま、ガルガドルがロリロリに負けを認めて白旗を上げると、ロリロリはそれに不満そうな顔をした。


「ロリロリぱんちは元気を分け与える技なのに! やられたとは一体どういうこと! ……ハッ! まさか、ロリロリは望まぬせっしょーをしてしまった……?」

「え、そ、そうなのか? す、すまん、パパはてっきり攻撃技なのかと……」

「父上がお仕事頑張ってるから応援したかったのに! ぐぬぬ……ロリロリはまだまだしゅぎょーが足りない!」

「……う、うおおおおー! パパ、なんだか急に元気が湧いてきたぞ! これもロリロリのおかげだな。感謝するぞ、我が娘よ」

「本当か!? よかった! ロリロリはハッピーな気分になった!」

「楽しそうだなお前ら」

「ユーリ、なんだその言いぐさはー! これは遊びじゃないんだぞー!」


 いや、どう見ても遊びだろ。親子の仲睦まじい遊び以外の何物でもねえよ。


 そんな遊びが一段落したところで、フィーリアが話題を変える。


「ガルガドルさん、いよいよ大会も明日ですね」

「ああ、そうだな。スムーズに工事が進んだおかげで、君たちの出発の日程をこれ以上延ばさせずに済んでホッとしているよ。あまり待たせるのも悪いからな」


 まあたしかに、これ以上長引くとアシュリーとかが心配するかもしれないからな。

 明日大会を見学して、その()(じゅう)に魔国を去る。それがいいだろう。


「そう言えば父上、明日は母上も来れるのか?」


 ロリロリがポツリと疑問を口にした。

 母上……母親か。ロリロリの母親にはそういえば会ったことがなかったな。一体どんな人物なんだろうか。


「アドワゼルは……どうだろうな。間に合うかどうかは微妙なところだ」

「ん? 間に合うかどうかってことは、この城にはいないのか?」

「ああ。私と妻は交互に人間の国に外交に行っていてな。今は妻の番なのだよ。近々帰って来るとは思うのだが……」


 話を聞くと、ロリロリの母であるアドワゼルは一年前にロリロリの子育てが一段落して仕事に復帰してからというもの、王であるガルガドルと同程度に働いているらしい。「俺が民衆の支持を得られているのも、半分はアイツのお蔭だ」とガルガドルは語った。

 それを聞いたフィーリアは感心したようにほへー、と抜けた声を漏らす。


「女傑なんですね、すごいなー。私、働き者の人は尊敬します」

「フィーリアは面倒くさがりだもんなー! 母上とは大違い!」

「ぐぅ……ろ、ロリロリちゃん、中々容赦ないですね……! 自覚があるだけにダメージも大きいです……」


 自覚があるなら改善するのがおすすめだぞ。

 そんな俺の心を読みとったのか、フィーリアは震える声で続ける。


「でも改善する気はさらさらないです……!」


 なんでだよ。改善しろよ。


「改善するのは面倒です」


 筋金入りじゃねえか。芯が一本通ってやがる。


「でもどっちも優しいから、ロリロリはどっちも大好きだぞ!」

「ロリロリちゃん……! よかった、私このままでもいいんですね! とても勇気をもらいました」


 あろうことか、フィーリアはこのままでいつづけることに勇気をもらってしまった。こりゃ面倒くさがりの脱却は難しそう――


「……ん?」


 なんだ? 違和感を覚えた俺は周囲の気配を探ってみる。

 ……空だ。この城目掛けて、空から何かがかなりの速さで飛んできている。


「おい、何か来るぞ。気をつけろ」


 俺の言葉でその場の全員が戦闘態勢に入った。

 全員が漏れなく腕利きということもあり、その間一秒と経っていない。

 平常心を保ちながら、やってくる謎の存在を警戒する。

 だがそれから数秒後。俺とフィーリア以外の三人がフッとその警戒を解いてしまった。


「おい、油断しない方がいいぞ?」

「ご心配なさらず。丁度帰ってらっしゃったようです」


 その言葉と共に、秘書が城の窓を全開にする。

 大きな窓から風が吹きこんだと同時に、魔人の女が一人室内へと飛び込んできた。

 豪快な入室を決め込んだ女は、打って変わって優雅な動作で音もなく床へと着地する。

 そして視界に俺たちを認めると、しゃなりと腰を折った。


「あなたたちがユーリくんとフィーリアさんかしら? 私はアドワゼル。ガルガドルの妻であり、この国の妃よ。二人とも初めまして」


 どうやらこの人がアドワゼルらしい。

 ……とりあえずあれだな。随分アグレッシブなお妃様だな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ