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170話 魔国のお姫様

「いやー、久しぶりだな! ロリロリは久しぶりだと思う!」


 ニッコリ笑顔でこちらに近寄ってくるロリロリ。

 そんなロリロリに、フィーリアは戸惑いを隠せない。


「え、い、いや、ちょっと待ってください。なんでロリロリちゃんがここに……?」

「ん、なにか変か? ロリロリは偉いから、優勝者を迎えに来てみたんだぞ?」


 コテンと首をかしげるロリロリ。

 ロリロリのやつ、俺たちがここにいることに何の疑問も抱かないのか?

 俺たちと会えた嬉しさで、そういうのは全部吹き飛んじゃってるってことか。

 子供ってすげえな。純粋だ。


「なんだ、君たちおてんばお姫様と知り合いなのか?」


 俺たちの様子を不審に思った観客の一人が声をかけてくる。


「まあ、知り合いっつーかなんというか……」


 仲間みたいなもんだからなぁ。

 そういや良く考えりゃ、ロリロリは魔人だし、魔国にいるのはおかしくないんだよな。

 ただ、こんな感じで再会するのはさすがの俺も予想外だ。

 お姫様、か。お姫様、お姫様ねえ……。


 はしゃぐロリロリを見る。

 せわしなく動き回り、笑ったり首を傾げたり頭をブンブン振り回したり。

 お姫様らしさは……ゼロだな、うん。


「ロリロリ、まさかお前が魔国の姫様だったとはな」


 ぶっちゃけ似合わない。というか対極だろ。


「だから言っただろー! ロリロリは強くて偉いんだ、って!」


 ああ、そういえばそんなこと言ってたっけか。

 偉いがまさか魔王の娘ってことだとは思わなかった。というか普通思わねえよ。

 まあ、本人が言っている以上事実だったことだよな。ならもういいか。

 それより知りたいのは、強くなったのかどうかだ。


「そういやお前、強くなったのか?」

「『そういやお前』!? ちょっとまってくださいユーリさん、この衝撃を『そういやお前』で片づけるんですか!?」


 フィーリアが口を挟んできた。


「え、だって自分で姫だって言ってるし、周りも受け入れてるし。ってことは、本当だってことだろ?」

「まあ、そ、そうですけど、でも……!」


 フィーリアの中では、まだロリロリと魔国のお姫様という二つが結びつかないらしい。

「んー……んんー……」と唸って眉を寄せ、渋い顔をしている。

 そんなフィーリアにロリロリが声をかける。


「フィーリア、ロリロリなんか悪いことしちゃったか?」


 心配したように下から覗きこんだロリロリ。

 目線があったようで、フィーリアが慌てて手を横に振る。


「え? あ、いや、悪いことをしたってわけじゃないんですけどね。ただちょっと頭が追いつかないと言いますか……」

「悪いことしてないか? じゃあなんでフィーリア困ってる? ロリロリにはわからない……」


 落ち込むロリロリの姿を見て、フィーリアは何かを決意したように小さく顎を引いた。


「……そうですね。困惑する必要もないですよね。ロリロリちゃん、私吹っ切れました! 新たな私の誕生です! おはようございますっ!」

「あはは、久しぶりに会ったらフィーリアがやばくなってた!」


 たしかに今のはやべえな。


「え、やばいですか私……?」

「まあ、俺よりは格段にヤバいと思う」

「それって世界一ヤバいってことじゃないですか。ショックです」

「俺を巻き込むな」


 お前だけ傷ついてくれ。俺は巻き込まれたくない。



「で、どうなんだ? 強くはなったのか? アシュリーは強くなってたぜ」


 俺の「アシュリー」と言う言葉に、ロリロリはぴくりと反応した。

 やはりロリロリにとってアシュリーはライバルのような位置づけの存在なようだ。

 まあ年も背格好も近いし、俺たちよりはライバル意識も持ちやすいのは当然だよな。


「甘くみるな! ロリロリは常に成長を続けている! すでに父上も倒せるんだからな!」


 そう言って、ロリロリは未成熟な胸をふんすと張る。

 微笑ましいが、言っていることは中々だ。


「父上って、魔王か?」

「まおーだ!」


 魔王を倒せるのか、そりゃすごい。

 実際に魔王を見て見ない限りはなんとも言えんが、魔物の王ならそれほど弱いということもないだろう。

 それを倒せるとなると、たしかにかなり強くなったのは間違いないようだ。


「魔王か……」


 きっと、強えんだろうなぁ……。

 会いてえなあ……!


「なあロリロリ、俺たちも魔王に会えるのか? 一応レースで優勝したから、魔国に入る資格はあるはずなんだが」

「ロリロリが伝えればなんとでもなる! 父上はロリロリを溺愛しているからな!」

「あ、自分で言っちゃうんですね」

「うん! だって事実だ!」


 謙虚のけの字も知らない立ち振る舞い。

 見ていて気持ちがいいぜ。

 ロリロリのおかげで魔王にも会えるみたいだし、こりゃ魔国に行くのが楽しみになって来たな。




 再会の挨拶を終えた俺たちは、空を飛んで魔国へと入ることになった。

 例年ならば優勝者がモーモーに乗り、その周りを魔人たちが守るようにして魔国へ入るそうだが、今年は俺が魔物役だったから例外なようだ。

 氷の翼を生やしたロリロリの後を、俺とフィーリアがついていく。


「空飛べば、魔国にはすぐつくぞ! もう、シューーーってくらいで!」

「イマイチ伝わりにくい説明ありがとな」

「まあな! 照れるぞ!」


 あんまり照れる要素はなかったと思うぞ。


「にしても、まさかお姫様だなんて……ロリロリちゃんって、すごい人だったんですね。驚きました」

「えへへー! フィーリアもすごいかわいいぞー!」

「えへへー!」


 どうでもいいが、反応が幼児と同レベルなのはいかがなものなんだ?

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