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魔法? そんなことより筋肉だ!  作者: どらねこ
2章 魔闘大会編
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17話 新たなる旅路

「おめでとうございます、Dランクに昇格となります。今後も武を磨いてください」


 死神との戦いから数日後。俺達はDランクに昇格した。

 これで魔物討伐の依頼が受けられる、と喜んだ俺だったが……。


「コイツはどうだ? コミョニーってやつ」

「まあ、Dランクの真ん中くらいの強さですかね」

「それじゃ足りねえんだよ。もっと強い奴と戦わないと」

「Dランクの依頼なんだからDランクの魔物なのは当然ですよ」


 何度か依頼を受けたが、Dランクの魔物は全く相手にならない。

 以前なら戦えるだけでもうれしかったのだが、ブロッキーナや死神と戦ったことで俺の敵への要求が上がってしまったようだった。

 要はDランクの魔物ではつまらないのだ。俺はもっと血湧き肉踊るような戦いがしたいのだ。

 なまじ訓練によって強くなっているのが分かるだけに、俺は欲求不満になっていた。


「またブロッキーナでもいねえかなー」

「あんなのがホイホイでてきたらこの街はあっという間に壊滅ですよ」

「俺がいるんだ、問題ないぞ。むしろどんどん来い」


 はぁ、とフィーリアは腰に手を当てる。

 そのしぐさを見たギルド内の冒険者たちが同じようにはぁ、とため息をつく。

 見惚れているのだろう。気持ちは分かる。

 腰に手を当て、憂うような顔をしているフィーリアは確かに美しい。


「これで性格がまともならなぁ」

「聞こえてますよ」


 いつの間にかフィーリアは怒っていた。といっても本気で怒っているわけではないが。

 フィーリアと出会ってもう数週間、流石にそのくらいは見分けがつくようになってきた。

 と、そこで俺はあることを思い出す。


「なあフィーリア」

「なんですか」

「また俺に魔法撃ってくれよ」


 俺がそういうとフィーリアは慌てて俺の口を塞いできた。そして辺りをキョロキョロする。

 なんだよ、と俺は目で訴える。


「一度やったじゃないですか。もうやりません」

「はんへはよ。たほしはっははろ?(なんでだよ。楽しかっただろ?)」


 数日前、俺はフィーリアに魔法を撃ってもらっていた。それがかなりいい訓練になったのだ。

 おそらくフィーリアは実力的にはAランクに少し足りないくらいだと思う。

 タメはほとんどなく、炎水雷風四種類とも威力は高い。それになにやらとっておきもあるらしい。

「本当に危ないので使いません」と言われたが、そう言われると気になってしまうのが人の心というものだ。


 ちなみに、その訓練でテンションが上がった俺が「もっとだ……もっと来い!」と言ったところフィーリアにドン引きされ、それ以降魔法を打ってくれなくなってしまった。悲しい。

 ぜひもう一度、今度はそのとっておきとやらを含めて俺に攻撃してほしかったのだが。


「楽しくなんてありませんよ! 大体、ユーリさんのせいで変な噂が流れてるんですからね。『あの美しいエルフはパートナーに魔法をぶつけて喜ぶ変態だ』って」

「違うのか?」

「違いますよ! とにかく、もうやりませんから」


 そこまで拒まれては仕方がないので、今日はDランクの依頼を受けることにした。














「あー、つまらん!」


 俺は心の底から叫んだ。

 この十数日、ただひたすらにDランクの依頼をこなす日々。

 金はたまるがフラストレーションもたまりっぱなしだ。


「どうやら聞くところによると、アスタート近辺は死の森を除いてかなり安全なところらしいですね。ブロッキーナも年に一体くらいしか出現しないようですし」


 フィーリアの言葉に俺は驚いた。

 そんな情報初耳だ。別行動をしてる時に情報を得たのだろうか。


「なに!? そんな大事なこと、何で俺に言ってくんなかったんだ! 俺はこの十数日、ブロッキーナを今か今かと待ってたんだぞ」

「だって言ったらどうせ『この街はつまらん。他の街へ行くぞ』とか言い出しそうじゃないですか。でもいい加減限界みたいだったので教えてあげました」


 フィーリアが途中で声を低くして答える。今のは俺のマネか?

 似てないな……と、そんなことはどうでもいい。


「他の街へ行くぞ、フィーリア」

「……ハァ。わかりました。お供しますよ」

「いいのか? 正直もっと難色を示すと思っていたが」

「どうせ止めたって無駄ですからね。それに、私はユーリさんに付いていくと決めましたから」


 そうと決まれば後は早かった。

 なるべく刺激的な街について聞き込みし、いくつかの候補の中からムッセンモルゲスという街に拠点を移すことにした。

 いつぞやの依頼の、シャロンとペットのクロスケにお別れを済ます。

 一度しか会っていない間柄にもかかわらず、シャロンはフィーリアにかなり懐いていたせいか、大泣きした。

 俺には目もくれていなかったが、そこはまあ見た目の差だろう。


 ババンドンガスにもたまたま会った際に、この街を離れることを伝えた。

 ババンドンガスは「俺もお前らも冒険者なんだ。そのうち会えんだろ」と言っていた。なるほど、一理ある。

 ふざけた髪型をしているくせに、なかなか的確なことを言うやつだ。






「いよいよ出発ですが、何に乗って行くんですか?」


 フィーリアが俺に尋ねる。

 俺がどんどん話を進めたせいで、フィーリアはムッセンモルゲスに行くということしか知らない。

 俺はそんなフィーリアの身体を掬い上げ、腹部のあたりを支えるようにして肩に担ぎあげる。


「……あの、何してるんですか?」


 フィーリアは肩の上から俺に疑問を投げかけてきた。


「何に乗って行くかと聞いたな? ならば答えてやろう。お前は俺に乗って行け」

「……?」

「ムッセンモルゲスはここから西へ百数十キロほどのところにあるらしい。走れば数時間でつく」


 それを聞いたフィーリアは肩の上でもぞもぞと体勢を変え、俺の方を向く。


「……えっ、まさか走っていく気ですか?」

「当たり前だ。そのほうが速いだろ?」


 正気じゃない。そうつぶやくフィーリアを肩に担ぎ、俺達はムッセンモルゲスに向かった。

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