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魔法? そんなことより筋肉だ!  作者: どらねこ
6章 王都の日常?編
100/196

100話 助けられなかった……

 アシュリーに連れられてやってきたのはおしゃれなカフェのようなところだった。

 なんとなく俺は場違いな感じがするが、気にしたら負けである。なので気にしない。


  四人席に座ると同時に、アシュリーが口を開いた。


「それにしても急だね。何かあったの?」

「あ、実は私たちSランクに上がることに――」

「ほんと!? フィーリア姉凄い! さすがだねっ!」


 食い気味の反応にフィーリアは思わず笑みをこぼした。

 それにしてもアシュリーは本当に自分のことのように嬉しそうだな。


「アシュリーちゃんだってSランクじゃないですか。それも史上最年少の」

「自分のことは別! フィーリア姉も遂にSランクかぁ。あ、だから王都にきたんだ? 任命式でしょ」

「そういうことだ」


  俺は代わりに答えた。


「ユーリには聞いてないよ」


 ……本当に生意気だなコイツ。

 だが、そっちがそう言うなら俺にだって手がある。


「じゃあ俺もおまえには言ってない。残念だったな」


 そう言って勝ち誇った俺に、アシュリーとフィーリアはサッと顔色を変えた。


「え……じゃあ独り言? こわ……」

「ユーリさん、ついに一人で会話するようになっちゃったんですね……。ごめんなさい。私、ユーリさんを助けられなかった……」

「俺で遊ぶんじゃねえ」


 こいつら……。








 二人はすっかり話し込み、会話が途切れることのないまま夜が更けはじめてきた。

 会話が終わる見込みの見えない二人に、俺はさすがに口を出す。


「おい、もう外は暗いぞ」

「うわ、本当だ!」

「いつの間に……」


 まったく、女ってのはどうしてこんなに話したがるんだ。

 その熱意を筋トレに向ければいいのに。


 とりあえずアシュリーにお勧めの宿を教えてもらい、それにしたがって宿をとることに決めた。


「今日は会えて嬉しかったよ、また会おうね!」

「私も会えて嬉しかったよ。また今度」


 宿の入り口で俺達は別れた。

 アシュリーは何度も振り返りフィーリアに手を振っていた。


「アシュリーちゃん、凛々しくなってましたねー」

「ああ、戦いたいな」


 すごく楽しそうだ。

 部屋に辿り着いたところで、俺は脳内でアシュリーとの戦闘をシミュレーションし始める。


「ユーリさんって本当そればっかりですね」


 呆れたようなフィーリアの声。何が悪いんだ?


「芯が通ってるってことだろ?」

「一本調子ってことです」

「物は言いようだな」

「こっちの台詞――」

「フィーリア、静かにっ!」


 俺は咄嗟にフィーリアの言葉を遮る。


「どうしたんですか? …………敵ですか?」


 フィーリアが声を潜めて尋ねてくるが、俺は言葉を返さない。

 ――いや、返す余裕がない。





 数分してやっと気を抜ける状態になった俺は、小さく息を吐いた。


「ふぅ……。突然怒鳴って悪かったな」

「いえ、それはいいんですが……結局なんだったんですか? 私は何も分からなかったんですが、もしかして誰かと何か駆け引きが行われていたんでしょうか」


 フィーリアが真面目な顔で聞いてくる。


「いや、アシュリーとの戦闘シミュレーションが良い所だったんだ」

「……ハァ。……もう疲れたのでお先に寝させてもらいますね」


 フィーリアは本当に疲れたような様子でベットに潜り込んだ。

 さっきまであんなに元気だったのに、急だな。


「ああ、おやすみ」

「おやすみなさい」


 寝ているフィーリアの横で、俺はブロッキーナ二十匹との戦闘をイメージしながら夜を過ごした。











 翌日、ギルドへ向かって歩いていた俺達は、見覚えのある髪型の人間を見つけた。

 後ろ姿しか見えないが、あのトゲトゲした金髪の髪型はおそらく……。


「なあ、あれって……」

「多分そうだと思いますよ」


 フィーリアも同じ意見なのを確認し、俺はそいつの背中に話しかける。


「失礼……やっぱりババンドンガスか」

「ん? ……おお!? ユーリじゃねえか! なんで王都にいんだ?」


 ババンドンガスは驚きを隠そうともしない。

 裏表のなさそうな人間で好感が持てる。

 ……というか、俺はそこそこ転々としているはずなのだが、その度にコイツに会ってる気がするぞ。

 まさかこれが運命の相手というものなのだろうか。できれば男は勘弁願いたいのだが。


「俺達はSランクに上がることになってな。任命式に参加するために王都に来たんだ」

「マジか、もうSランクかよ。でも魔人とか倒してたし、当然っちゃあ当然か。あっという間に抜かされちまったなー、悔しいぜ」


 そう言えばババンドンガスと初めて会った時はまだDランクだったな。


「ババンドンガスさんはどうして王都に?」

「俺とウォルテミアは王都出身だからな。幼馴染が王都に住んでるしよ。もうすぐ新年だろ? 一年間お疲れ様ってことで飲みに来たんだよ」


 幼馴染なんていたのか。


「その幼馴染も同じ髪型なのか?」

「なんでだよ! 普通だよ普通! というかまず女だしな」


 なんだ、違うのか。


「付き合いの長いご友人がいるんですね、うらやましいです」


 フィーリアが微笑みながら言う。


「何言ってんだフィーリアちゃん。そんなの誰にでもいるだろ?」

「……」


 ババンドンガス、流石だな。平気で地雷を踏み抜いてきやがる。

 フィーリアを見ろ、ショックのあまり固まっちまったじゃないか。

 仕方ない、ここは俺がフォローに回ろう。


「止めてやれ、フィーリアにいるわけないだろ」

「その言い方は無いと思います……。……大体、ユーリさんだっていないですよね?」

「俺には昔から筋肉がいる」

「ユーリ、お前頭大丈夫か?」


 ババンドンガスが心配そうな顔で聞いてくるが、余計な御世話だ。


「大丈夫だ。人の頭の心配をする前に自分の頭の心配をした方が良い。爆発してるぞ」

「だーかーらー、これはこういう髪型なんだよ! ……っと、もうそろそろ行かねえと。ウォルテミアとネルフィエッサが痺れ切らしちまう。じゃあなユーリ、フィーリアちゃん」


 そう言い残し、ババンドンガスは小走りでどこかへ走って行った。

 ネルフィエッサというらしい幼馴染のところへ行ったのだろう。



「うーん」

「どうした?」


 ふと隣を見ると、フィーリアが腕を組んでうんうんと唸っている。


「ネルフィエッサ……どこかで聞いたことがあるような……」

「無理するな。友達がいないからって無理に知り合いを増やそうとする必要はないんだぞ?」


 さすがにあまりにも不憫だ。

 俺の前で体裁を気にする必要はないから、ありのままでいて良いんだぞ。

 そんな思いで発した俺の言葉は的外れだったようで、フィーリアは組んでいた腕を解いて異議を唱えてくる。


「そんなことしてませんよ! ……まあいいです。思い出せそうにないですし。にしても、ババンドンガスさんは相変わらずでしたねぇ」

「そうだな」


 ババンドンガスと別れた俺達は再びギルドへ向けて歩き出した。





 

 ギルドに到着した俺たちは迷わずカウンターへと向かう。


「任命式のために王都に来いとギルド長の婆さんに言われたんだが、会場はどこなんだ?」


 前もって場所を聞いておかないと困るからな。

 まあフィーリアに言われて気付いたのだが。俺はこういうところに気が回らないから助かる。

 ギルドの職員は丁寧な物腰で俺達に言葉を返してきた。


「失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいですか?」

「ユーリだ」

「フィーリアです」

「ユーリ様にフィーリア様ですね。……はい、確かに。任命式が行われるのはギルド所有のホテルとなります。地図をお渡ししますので少々お待ちください」


 そう言って職員は席を立ち、二つ折りにされた紙を持ってきた。


「こちらをみていただければ場所は分かるかと。任命式は一週間後となっております」

「ああ、感謝する」

「いえいえ。お二方とも、Sランクおめでとうございます」


 職員は柔らかな物腰を崩さず俺達に頭を下げた。


「ああ」

「ありがとうございます」


 フィーリアの礼もそれに負けず劣らず優雅なんだよな。

 俺も森を出たばかりの時よりは礼儀を知ったと思うのだが、さすがにフィーリアと比べられると少々立場が無い。

 戦闘なら負けないんだけどな。

おかげさまで100話という一つの節目を迎えることが出来ました。

これからも『魔法? そんなことより筋肉だ!』をよろしくお願いいたします!

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