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異世界勇者の魔力覚醒杖-エクシードギア-   作者: 幻想海 蒼空
第1章 異世界冒険譚の前奏曲-プレリュード-
4/8

#3.眠れぬ夜の夜想曲-ノクターン-

「たっだいまーー」



 ルナ姉が家に入るなり奥の部屋へ駆けていく。

扉をバッと開けて、ひやっほぅ〜!と言いながら入っていった。

その部屋は先程まで俺が寝ていた部屋である。

右側にチラッと視線をやると、エミリアが「はぁ」とため息をついた。


もうなんか、だいたいわかった。



「姉さん、入るよ」



 部屋の中を見ると、布団で身体を包んですりすりしているルナ姉がいた。

その顔はとても幸せそうで、夢見心地っといった感じだ。



「んっ!これはエミの匂いじゃない……

まさか、ユータ?」


「ああ、さっきまでそこに寝かせておいたからね」


「そうかそうか。いや、これもなかなか……」



 そう言って鼻を布団に当てるとすうっと一気に息を吸い込んで、艶かしい吐息をもらす。

クンクンと吸い込むたびに体をビクリと震わせ、息を荒くする。



「これはぁ……クセになりゅう……」



 俺は、固まっていた。もうわけがわからないよ。

この人はなんだ変態か?変態だ。(確信)

それはエミリアも同じなようで、なんだこいつって顔をしている。

あまり感情が表に出なくても、そんな雰囲気が出ていた。



「晩御飯作ってくるよ」


「あ、俺も手伝う」



****



「おお、今日は……なんだこれ」


「まあ、俺の世界では定番だけど、ハンバーグって言うんだ」


「そうか、とりあえず食べるとしよう」



 テーブルを3人で囲み、食べる準備をする。

今日のメニューは俺お手製のハンバーグ。

父は研究者、母は翻訳家なので食事はほぼ自分で作っている。

最近はたまに由梨もうちに来るようになり、ふたりで食べてたりしていた。

由梨の家もまた、(小説特有のご都合主義的のように)両親が忙しいのだ。

ぶっちゃけ、嬉しかった。


しかし、そんなことを話していてもお腹はふくれない。

時計の針はもう8時を指している。

俺からすれば、少し遅めの夜ご飯である。



「いただきます」


「ん?"いただきます"とはなんだ?」



 そうか、ここではそういう文化はないらしい。

案外馴染んでいたと思っていたが、こういうところで違いがあるんだな。



「ご飯を食べる前に食材に感謝を示す言葉だよ」


「そうか、いい言葉であるな」


「確かにいい言葉だね」



 改めてみんなでいただきますをして、ハンバーグを口に頬張る。

口にいれた瞬間に肉がホロホロとほどける。

肉汁も溢れてうま味が口の中に広がる。

そして、デミグラスソースのコクが肉全体のを引き立てる。

何これウマイ!



「なんだこのうまさは……!?」


「おいひい……」



 ふたりもお気に召してくれたようで何よりだ。

作るのは結構大変だったけど、食べた人が笑顔になってくれると、こっちとしても本望だ。


……ここに由梨がいたらどんなに楽しいだろう。


そんな感情を押さえつけてぱくぱくとハンバーグを咀嚼する。

やっぱり美味しい。

ふたりの笑顔を見ながら、俺は食べ続けた。



****



「ユータは場所がないからいいとしても、何故姉さんが私の布団に入っているんだい?」


「まあ、気にするな」



 あの後お風呂に入り、少し雑談をして今に至る。

異世界でもやはりお風呂はあるのだなと少し感動した。


 ふたつのお布団に3人で寝ているため、少し窮屈である。

隣はルナ姉。その奥にはエミリア。

そう、窮屈なのだ。

思春期真っ只中の高校生の隣に容姿は端麗なお姉ちゃん。

お風呂にはいったばかりだからか、とてもいい匂いが鼻をくすぐっている。

寝間着もだるだるなため、こっちを向かれると、うん、まあ……目のやり場に困る。

なんで人は手にはそこまで何も思わないのに胸には邪な感情を持ってしまうのだろうか。

これも人間の性か……。



「……では、寝るとしますか」


「そうしようか」


「そうだね」



「オヤスミー」


「おやすみ」


「おやすみなさい」



 掛け布団をかぶり、目を瞑る。

静寂と暗黒が俺を包み、今俺はどこにいるのか少し分からなくなる。

昨日まではずっと普通の生活だった。

朝起きて、学校へ行って、家に帰って、寝る。

その繰り返しの毎日。

本音を言えば、退屈だった気持ちもある。

でも、そんな繰り返しの中で、唯一日々変化してく由梨がいたおかげで、楽しかったのだと思う。


俺は何故ここに来たのか。由梨は無事なのだろうか。

色々な思考が頭の中をぐるぐると回り続ける。


 しかし、俺の適応能力もなかなか凄いと思う。

見知らぬ町の見知らぬ人と1日で姉弟になってしまったのだから。


由梨が見つかって、帰る手段がわかったらどうなる?

もともとこの世界の住民ではない、この世界にいるはずではない存在の俺たち。

俺たちがここにいることはデメリットしか無いのだとも思う。


ああもう。目を瞑るとどんどん暗い思考回路になってしまう。

もう寝よう。




 ────寝れない。いやまあ、この状況ですんなり寝れたら俺は本当に凄いか、ただのバカだ。

お布団は暖かいし、鼻腔をくすぐる匂いもいい。

むしろ、その匂いで寝れない感もあるのだが……



「エミ〜? あれ、寝ちゃったのか〜?」



 おぅっ!?

いきなりの声に、少し体をビクッとさせてしまう。


 声の主はルナ姉。すごく小さく、囁くような声で呟いていた。

ただし、そこはそこまで問題ではなく、問題なのはその体勢だろう。

エミリアの腰あたりに女の子座りでまたがっていた。

エミリアは仰向けで寝ている模様。

俺は薄目でバレないように見ている。



「起きないならしょうがないな、ひとりで楽しませてもらうぞ」



 そう言うと、あろう事かルナ姉はエミリアの上着を胸の上までたくしあげる。

闇夜に紛れてよくは見えないが、多分あれは素肌だろう。


バッチリ目を見開いてガン見してしまったあたり、俺もKENZENな男子高校生だということだな、うんうん。

前述のとおり、あまり詳しくは見えないが、輪郭はなんとなくわかる。

華奢な体で、スラットした綺麗なラインである。

ちなみに胸は……まあ、ね?



「睡姦とは……流石に気分が高揚するな」



 ハァハァと息を荒らげるルナ姉。

しかもドストレートに言ってしまったではないか。

そして、唇を胸の先端に近づけると、パクリと咥える。

その瞬間、エミリアがビクッと震え上がった。



「姉さん……な、なにを……んんっ」


「エミのここ、おいひいぞ」



 そうすると、ルナ姉は片手でもう片方の胸を弄り、もう片方の手は……エミリアのズボンの中に消えていた。


俺はと言えば、さっきまでの思考はどこへ行ったのやら、ガン見してドキドキしていた。

こんなドキドキは由梨と一緒に帰っているときくらいである。



「ひゃんっ!ねえひゃん……そこはらめだ……」


「少しは静かにできないのか、そんな口はこうだな」



 ルナ姉とエミリアが合体した、口で。

クチュクチュジュポジュポと艶めかしい音をたてながら、舌を絡め合う仲良し姉妹。

ただ、これ以上は運営さんに怒られそうなので、音声だけでお楽しみください。



「んっ…んん……ぷはぁ」


「はぁ……はぁ……」


「少しは素直になれたか?」


「酷いよ姉さん、隣にユータも寝ているのに」


「そうか、だからいつもよりよがっていたのか」


「そ、そんなんじゃ……」


「ふふ、大丈夫だ。姉ちゃんに全て委ねろ」


「……うん」



 それから約1時間、俺の思考は停止したままとなる。

ルナエミならわかる。ただエミルナが始まった時に少し驚いた。

というかこの姉妹は百合ではなくレズだ。

実際に見たのは初めてだが、なんだがもう色々わからなくなってしまったよ。



「ふぁあ……はぁ……っんあぁ……」


「ふぅ……エミ……大好きだ」


「……むぅ」



 ふたりは身体を双方の唾液でデロデロのテカテカにして、色っぽい声で囁く。


これなんてエロゲ?


と、ここでこの部屋に響いたのは彼女らの吐息ではなく、ピピピという電子音だった。



「はぁ……はぁ……なんで…こんな時に」


「まったくだ、しかもどうしてこんな深夜に緊急通信(エマージェンシー)が……」



 緊急通信(エマージェンシー)。聞き覚えのない単語では無いからこそ、何が起きているのか分からなかった。



「ユータ、起きろ!」


「はいっっっ!?」


「なんだ?起きていたのか?」


「い、いや!寝てました!」


「まあいい、緊急だ、今すぐ行くぞ!」


「とりあえず服着てください!」



 すぐさま着替え終わったふたりと共に夜の街に駆け出す。

澄み渡った暗黒の空に、不気味なまでに赤い新月がぽつんと浮かんでいる。


この世界の本当の姿を、俺はまだ知らない。

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