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アルドさんの頑張り。

今回のお話は女性の身体的なお話です。

生理なんかのお話になりますので、若干、生々しいかと思われます。

読まなくても大丈夫な回なので、苦手な方はスルーしてください。

弾む様な足取りのカナちゃんと手を繋いで、店を出て、宿へと急ぐ。


ああ、緊張した。

あの店に長時間居ることもそうだが、カナちゃんが【アルドが私に内緒で女物の下着とかのお店に・・・。】とか引かれたらどうしようかと、本当に胆が冷えた。

女の子の用品には、それなりの金額がかかっていたみたいだが、カナちゃんは全然気にしてなかったみてぇで安心した。

いざという時の為にと思って、皆から掻き集めて借りてきた金もあったが、俺達の金で下着や女の子の用品を買うのも気分的に良くないだろうから、内心かなりドキドキした。

無事に買い物が終わって良かったぜ。


にしても、この街に娼館通いの商店があるなんて、本当に運が良かった。

俺達4人のオッサンは、女の子の事なんて誰も何も知らねぇ。

今までは知らなくても問題なかったんだが、

ふと、思い出したんだ。


昔、商人に聞いた

『女の子は月に一度、血を流すから、用意が大変だ。』

という話を。


深夜、カナちゃんが寝静まった後での話し合いの中、その話を出してみた。

本の虫のトルーノや、酒場に通ってるウェイン辺りが雑学として知ってるんじゃねぇかと、淡い期待を抱いてた俺。

目の前には

顔面蒼白、俺を凝視する厳ついオッサンが3人。

だよな、俺が知らなきゃ、お前らも知らねぇよな。

すまん。驚かせた。

なんて謝罪もそこそこに、オッサン4人による、小声での大討論会の開催だ。

【ち、血って!?なんで血が出んだよ??怪我すんのか?】

【どこから??んで??どんな怪我だ?いつ??】

【俺も商人にうっすら聞いただけだから知らねぇよ。】

【血なら魔獣が寄ってくるだろ。対処法は?】

と、無い知識を振り絞ってもどうにもなんねぇ。

もしかしたら、大人の女にしかならねぇ物かもしれねぇし、娼館の女にしか現れねぇ病気かもしれねぇ。

って事で、どうするか有耶無耶のまま、その日はお開きになった。


だが、俺は翌日から行動を開始した。

知識を得るなら、ちゃんとした物じゃなきゃいかんだろう。

という考えから、娼館に商品を卸している店を探すことにした。

娼館通いの商店なら、最低限は女性の身体について知っているだろうし、必要な物も買える。

一石二鳥だ。

そう思ったんだが・・・・・。

コレが思ってた以上にツライ試練だった。


娼館に商品を卸している店を探している時の、あの、【お前みたいな顔面の人間が、いくら貢いでも、女は振り向かねぇぞ?現実を見ろよ、いい加減。】みてぇな憐れむ様な空気。

そんな視線をスルーしつづけ、ようやく、発見した店。

もう、ここしかねぇ!

あんな目で見られるのはもう御免だ!!

と、最後の希望を見つけたかのような心境で、勢いよく店に入った俺。


お店は綺麗で上品な雰囲気があり、煌びやかな物から素朴で上質な物と、様々な物が並んでいた。

中から出てきた店員も、店主らしき人間も、優し気に微笑み、

【カナちゃんに会わせても大丈夫】だと思えるような人種に思えた。

そこで、この店にする事を決め、店主らしき男に意を決して相談することにした。


「あ~、っと、なんだ、その、・・・・先日から、最近知り合った女の子の世話をする事になってな。その子の為に、女性として生きる上での必需品だったり、女の子のなりやすい病気なんかを教えて欲しいんだが・・・。あー、あと、その、子供、と、か、・・・・・・・。」

と、最後なんて聞こえなくなるような声で話しかけてみると、此方を優しい眼差しで見ていた店主のオッサンが


「あのね、君の夢を砕く様で大変申し訳ない事なんだけどね、君には縁のない事だから、諦めなさい。夢みる事や妄想する事は誰でもあるし、恥じることでもない。でもね、相手がいないのに、準備をするのは止めておいた方が良い。後で、とてつもない虚しさを味わうことになるんだからね。ね?止めておきなさい。」

と、俺の肩に手を置きながら、慰める様に言ってきた。


俺は必死に説明した。

俺の妄想じゃねぇ!

と。

それでも信用してくれねぇオッサンをブン殴りてぇと思ってたら

【女性の事について、そんなに簡単に話せることじゃないんだよ。酒の肴にしたいんだろうが、諦めな。】

ってよ。

なるほどな。

娼館に行けなくても女の事に詳しい、酒場で盛り上げ役になりてぇやつは、この人の元を訪ねるんだろう。

余計な事をしやがる馬鹿はどこにでもいるもんだが、今回の野郎どもは本気で殺してやりてぇわ!!

馬鹿のおかげで店主のオッサンの警戒値がマックスだろうが!!


けどな、俺はカナちゃんの為にも、引き下がるわけにはいかねぇんだ!!

絶対にだ!!


俺は、服を畳む作業を始めたオッサンに頭を下げ、説明を続けた。

急遽、共に旅をする事になった女の子がいる事。

その子が大事な大事な女の子である事。

だが、護る側の俺達オッサンには【女】に関しての知識が一切ない事。

女の子もまだ若く、田舎育ちの為、常識には疎い事。

女の子が自分の身体の事を満足に把握しているかどうかさえ分からない事。

その子の為に、俺達が出来る事、俺達が教えてやらなければならない事、俺達が知らなければならない事を教えてほしいと。

何度も頭を下げた。


すると、オッサンは信じてくれたのか、ため息を吐きつつも時給制で【緊急講座(女の子の生態について)】を提案してくれた。

オッサンの時給は高ぇが背に腹は代えられなかった。


んで、その授業の内容なんだが・・・。

まず、最初に手渡された【女の人体図】に目ん玉が飛び出るかと思った。

男と女の違いが図にしてあって、鼻血も出るかと思った。

でも、


「きちんとした知識が得たいなら、恥ずかしいだ、照れるだと言っていないで、必要な物として頭の中に叩き込みなさい。大事な女の子の為なんだろう?お前がしくじったら、その子は一生、その知識を間違えたまま生きるんだぞ?」

との言葉に、背筋が伸びた。


オッサンの言葉をメモに書き留めるので精一杯だった。

女は、子供を作る為に、血をためて排出するんだと。

それを【月の日】や【女の子の日】と言って、血が垂れ流しになるんだと。

それを止める為の専用の布や、腰を温める為の豆袋があったりして、驚きの連続だった。

しかも、血が出るだけじゃねぇらしい。

腰や頭が痛くなったり、イライラしだして会話もしなくなったり、暴力的、攻撃的になったり、熱が出たり、む、む、胸に痛みが出たりする、らしい・・・。

正直、この話だけでも理解が大変だったし、脳みそが破裂しそうだった。

宿に帰った道順なんて覚えてないほどだった。

翌日も、オッサンの空いた時間で講習を開いてもらった。

一般的なものになるが、との前置きをいただいてからの

人間の死体や悪夢を見ているだろう時の対処法。

話の上手な聞き方。

女性の意見に対しての同意や肯定の重要さ。

趣味趣向の理解。

身体の事、精神的な事をガッツリ叩き込まれた。


後は、今回聞いた話の全てを皆にも教えてやらねばなるまい。

そこまで終えて、俺の今回の重要な役割は初めて終了と言える。


特に、血が出ている時は魔獣が寄ってくるんだから、カナちゃんからの自己申告が必要になる。

他の奴らにも知らせておかねぇと、『血の臭いがする』って騒ぎそうだしな。

あ・・・あと・・・あとは・・・・。

その、なんだ、こ、こど、子供のな、子供の作り方、とか、しゅ、しゅっさ、しゅっさん方法、出産方法とか、育て方とか、、、、、。

いちおう、その、一応な、聞いては来たが、一人のオッサンの話を鵜呑みにするのもどうかと思うしな、その辺は、な、ほら、やっぱりよ、トルーノにでも、専門書を買って勉強してもらおうか、と思ってる・・・。



ああ、今回は本当に大変だった。

男と女でこんなに違いがあるなんてな。

知らなかったし、短時間で詰め込んで、本当に頭がいてぇ。

店主のオッサンはカナちゃんを連れて行く前の日に


「正しい性の知識を手に入れて、本当の意味で【大人】になったね。ま、使わない知識も多そうだがね。まあ、大事な女の子を他の女好きなオッサンに見せるのも可哀想だし、朝一で店に来るといい。開店まで貸し切りにしてあげるよ。【緊急講座】のオマケだ。」

なんて半笑いで言われて、感謝の思いで頭を下げるしかできなかった。


この街に寄れて、このオッサンに教えを請えて本当に良かった。

カナちゃんの役に立てて、カナちゃんの欲しい物が買えて本当に良かった。


俺が可愛いと思った、ワンピースとか言うスカートも着てくれるらしいし、頑張った甲斐がある。

自分が【似合いそうだ】と思った服を着てもらえるなんて、どれほどの幸福だろうか。

服を買ってやるなんて特別な事をするのは、他の奴らに悪いかとも思ったが、


カナ(嬢・おひぃさん)の為に、短時間で知識を無理矢理詰め込む上に、俺達にも教えなきゃいけない。アルドにしか出来ない。それほどの大役をやらせるんだから、構わない。

全員がそう言ってくれた。

勿論、【全員の好みに合いそうなやつ、頼むな。】とは言われたが。


ウェインに言われた【スカート!足出てるやつ!】もクリア。

グレンに言われた【ごちゃごちゃしてねーやつ!】もクリア。

トルーノに言われた【清楚】もクリア。

俺の好みの形で、俺の好みの薄めの桃の色。

早く着た姿が見たい。

ドキドキと高鳴る心臓と共に、デートは終わり。


次のデートの機会を今から待ち望む自分の思考に苦笑しつつも

皆が待つ宿へと到着した。


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