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ウェインとのお出掛け。

「カナ~!!起きろ!!朝だぞ!!今日は俺と出かける日だぞ!!起きろ~!!」


はい、起きました!起きましたよ!!!!

声デカイよ!ウェイン!!

耳元で叫ぶの止めてー!!


「おはよう!起こしてくれてありがとうね、ウェイン。皆もおはよう。」

私がそう返事をするのとほぼ同時に


「ウェイン、るせぇよ。」

と、グレンが低い声で怒り、寝起きが悪かったらしいトルーノからは無言で拳骨が・・・。

痛そうに唸るウェインを横目に


「おはよう、カナちゃん。顔洗ってきな。これで拭ってな。米は炊いたし、肉も薄切りにしてあるから、そんなに急がなくても大丈夫だからな。」

なんて、タオルを差し出してくれるアルドは相変わらずのお気遣い紳士さんです。


他の皆にも朝の挨拶をしつつ、顔を洗ってさっぱり。

皆には反対を向いてもらって着替えも済ませ、さて、朝ごはんの準備を始めましょう!


薄切りのお肉は、朝なのでさっぱりと。

摩り下ろした大根とポン酢で、レタスや水菜とか千切りにしたキュウリなんかと一緒に。

ポン酢が苦手なオッサンもいるかもしれないと思って、オニオンソースも作っておいたんだけど、どちらも大好評だった。

ちなみに、トルーノはポン酢大好きらしい。

ほぼ、ポン酢で黙々と食べてた。

ウェインとグレンはオニオンソースの方が好評。

で、グレンは肉も野菜もモリモリ搔っ込んで食べるんだけど、ウェインの方は時々声をかけてあげないと、お肉ばっかり食べちゃう。

それで、残った野菜は最後に一気食い。

お肉の方が好きだからか、最後は少し切なそうな顔してる。

どうやら【好きな物は先に食べないと無くなる!】という感覚が染みついてるらしい。

今は個別に盛りつけしてるから、誰も取ったりしないんだけどね。

まあ、鍋や焼き肉なんかは別ですけども。

アルドとトルーノは行儀が良い方だと思う。

ゆったり食べてるように見えて、凄い量食べるけどね。

にこにこ笑顔で褒めつつも、淡々と大量に食べる感じ。

アルドは朝だけ他の皆よりも、お米が少なめ、汁物は多めに食べる感じかな。

トルーノは見事な三角食い。

食事にも性格出るよね。

毎回、【美味しい!】って言ってもらえるのは変わらず、嬉しい限りです。

今日の朝ごはんも全員完食。

空っぽのお皿を見るのって、本当に嬉しいよね。

ふふふ♪

今日も朝からご機嫌です!



「カナ!!飯も食ったし、行こうぜ!!買い物!!俺との買い物!!」

と、食器も片付けていないのに外套を持ってきたウェイン。

そんなウェインに対して、ため息を吐いたのはアルド。


「はあ、本来なら【片付け終えてから行け!】って言いてぇとこだが・・・。新鮮な食材は売り切れる前に手に入れねぇとな。カナちゃんも色々見れた方が良いだろうし、行ってきな。後は俺達に任せて大丈夫だから。」

と、後半は私の頭を撫でながら微笑んでくれたアルド。


「おーおー、行ってこい、行ってこい。んで、美味いもん沢山仕入れてこい。昼飯は一緒に食いてぇから、遅くなる前に帰って来いよ。」

と、次に頭を撫でてくれたのはグレン。


「気ぃつけてな。おひぃさん。」

と、頭を撫でつつ心配してくれたのはトルーノ。


「わーってるよ!!昼過ぎには市場も閉まっちまうし、皆で食った方が飯もウメェんだし、ちゃんと帰ってくる!!んで、カナの事も俺がきっちり護る!」

と、鼻息荒くフンフン言ってるウェイン。

何とも頼もしい。


「じゃあ、お言葉に甘えて片付けはお願いするね。直ぐに用意するから少し待っててね、ウェイン。ふふふ、頼りにしてるからね。」

と、皆には後片付けを。ウェインには護ってもらう事を改めてお願いする。

すると、


「ん!?おおおおお、おおう!!任せとけ!!」

と、顔面と頭部を真っ赤に染めるウェイン。


うん、可愛いよ。

ウェインはスキンヘッドだから真っ赤なのが分かりやすくて可愛いよね。

焦ったりでモゴモゴと話したりするのも可愛いよ。

凄く。

癒されるわぁ。

しかも、私の言う事で焦ったりする姿を見たりすると、女として意識されてる気がして嬉しいよね。

今までの人生でこんな事なかったもの。

気をつけないと最低な悪女になっちゃうけど、少しくらい良いよね?

ウェインのこういう姿も可愛くて大好きなんだもの。

可愛いオッサンは国宝にすべきだよ。

本当に。

純粋なオッサン、激萌え。


そんな不純な事を脳内で考えつつ、お出かけの準備準備。

と言っても、外套を着たり鞄の用意をしたり、ウェインが買ってくれた口布を装備して、ウェインに預けるお金を準備するぐらいだけどね。


そう、私は昨日の件で思いついたのだ。

【買い物した金額を後で返す】のではなくて【先に私の財布をオッサン達に持たせる】という事を。

何で最初に気づかなかったのかねー。

まあ、幼い頃からの買い物方法が【出先で母親にお願いして購入してもらって、帰った後で父親から貰ったお小遣いやらお年玉で支払う】っていう感じだったからだろうか。

母親に財布なんか渡したら《失くしたと思え》だったからなぁ。

嘘をつくのは当たり前、八つ当たりもヒステリーも当たり前。

こんな人を見て育ったから、私は女が信用できない。

本当に女難の人生である。

オマケに母親は私に興味が無い人だった。

時々、気まぐれに一緒に買い物に行くのも《母娘で仲良くしてますアピール》《虐待してませんアピール》の様だったり、私と生活していたのも《父親から養育費をもぎ取る為のアピール》という感じだった。

父親は父親で、まだ父親になる覚悟が出来ていないような人だった。

お金は支払うし父親として認知はしているけども、一緒に暮らしたり、買い物に行ったり、学校行事に参加したりなどの責任は一切 果たさなかった。

時々、思い出したかのように連絡をしてきてはファミレスや喫茶店でパフェやケーキを御馳走してくれながら、日々の話を聞いてお小遣いをくれるだけの存在だった。

まあ、この父親は《母親に騙された被害者》なのかもしれないけれどね。

ああ、話はズレたけど、そんなこんなで【お財布を預ける】なんて考えられない人生を送ってきた私だったが、信用出来るオッサン達になら預けても大丈夫だと、そう気づいたのだ。


「ウェイン、私が直接支払う訳にはいかないから、私のお財布持っててもらってもいい?私が買う物はその中から出してほしいんだけど、お願いしても良い?」

自分のお財布を出しつつ、今日のお出かけ相手のウェインに聞いてみる。


「ん?カナの財布を俺が持つのか?ん?あ!ああ、そうか!分かった!女が払う訳にはいかねぇもんな。俺がこの財布の中から金を出しゃあ良いんだな?」

と、私のお財布を受け取ってくれたウェイン。


「うん。ありがとう。宜しくね。じゃあ、準備も出来たし、そろそろ行こうか。」


「おう!行くぞっ!」


「ちょっと待て。今日も決まりごとの復唱、してからお出かけな?」

と、アルドからのストップが入り《お外での約束事》を皆の前で復唱させられること数分。


改めまして、皆に見送られての外出です!!

宿の外に出てみると、まだ朝の時間帯であるにも関わらず燦々とした太陽の姿。

や~、今日も良いお天気。

今日は洗濯日和でしたか。

帰ったらお洗濯しよう。そうしよう。

そう考えていると、真横を歩いていたはずのウェインがぐるりと勢い良くこちらに向き直った。

突然の方向転換に驚きつつも、条件反射の様に私もウェインの方を向くと


「あ、あああ、あのよ、その、て、手。ッフー、、、手ぇ繋ぐぞ!!」

と、顔面も腕も掌も真っ赤に染めたウェインから、

挙動不審の後、気合の入った【手を繋ぐぞ】というお言葉をいただきました。


おおおおう。

そんなに緊張されると、此方も緊張してしまうよ、ウェインさんや。

しかも、面と向かって【手を繋ごう】なんて、まるで青春の一ページの様で・・・。

とても照れます、はい。

なんだか恥ずかしいというか、全神経が顔面に集中したかのように熱い。

うん!甘酸っぱい!!

【真っ赤になって差し出されてる手と、手を繋ぐ。】

普段は皆に手を引かれてる感じだからか、面と向かって言われると、なんだかくすぐったい気分だよ!

《隣を歩く》って言われてるみたいで、何というか、《デート》というか・・・・。

ああああああああ!!!

そうだよね、他の皆もそうだけど、手を繋いで二人っきりでお出かけなんだもんね!?

一般的に考えてもデートだよね!?

あれ!?これ、私、4人の男性とデートしてるのか!?

そして、今から私はウェインとデートするのか!?

うおおおおおおおおお!!!

どうしよう!?

何か、変な汗かいてきた!!

緊張する!!

ってか、手汗がハンパない!!

私の脳内は高速回転しながら様々な事を考えた。

が、そんな脳内とは別に、私の身体は素早く手汗をぬぐい、ウェインの掌に自分の手を重ねていた。


照れる!

めっさ照れるし、ドキドキするし、心臓は爆発しそう!!

しかも、手を重ねた瞬間のウェインが

ふにゃんと顔を緩めて笑ってて、可愛くて心臓飛び出るかと思った!!

強面のオッサンが幸せそうに微笑むとか、マジで凶器!!

心臓が止まるかと思ったわ!!

でも、そんな笑顔も可愛いですね!はい!

今日は大型犬から可愛いオッサンにジョブチェンジしたんですね!

驚きでござる!!


そんな脳内パニックの私を置いて、口笛を吹きながらルンルンと軽い足取りで歩き出すウェイン。

私の顔面は真っ赤になっていると思うんだが、気にしてないらしい。

緊張とドキドキとパニックが同時に脳内を駆け巡っているが、楽しそうな、嬉しそうなウェインを見てたら落ち着いてきた。

折角の2人でのお出かけだもんね。

楽しまなきゃ!

これから行くのは食品街。

裏道には入らず、表の道のみなのでお店は限られるが、様々な商品が並ぶらしい。

本来なら凄い匂いの場所だから行けない予定だったのだが、ウェインが買って来てくれた口布で可能に!

匂いが分からない分、見た目や手触りなんかで判断していかなければならないだろうけど、何とかなるでしょう。

調味料や食品、いろんなものを買って帰るぞー!!

と、気合を入れて食品街へGO!!



で、到着しました、食品街。

ウェインに促されて既に口布は装着済み。

さてさて、お店を片っ端から探索だー!!

と、気合を入れていたのに


【お嬢ちゃん!こっちこっち!うちの店は安いよ!おまけも付けるよ!】

【うちの店は品ぞろえイイよ!!】

【格安!値引き値引きだ!寄ってってくれや!】


と、客引きがウザいウザい。

しかも、見本に持ってくる食材が腐ってるんだけど、どうすればいいの?

更に、そんな食材に近づき過ぎると目に染みるっていうね。


ウェインが

【るっせーよ!!散れ!シッシ!】

って追い払ってくれなきゃ、泣いてたかもしれない。


「ったくよー。呼んでもいねーのに近寄ってくんじゃねーよ。なあ?カナもそう思うだろ?俺には良く分かんねぇけどよ、グレンなんかは【食材はゆっくり選ばせろ】って言ってたしな。カナもゆっくり見てぇだろ?」

と、プンプン怒りつつ、同意を求めるウェイン。


「うん。私もゆっくり見たい。追っ払ってくれてありがとうね、ウェイン。助かったよ。」

と、お礼を言うと


「へへへ、そりゃあな、今日は俺が一人で護るって約束したからな!!何かあったらすぐに言えよ?よし、じゃあ、気合入れ直して、端から順に見ていくか!」


そう言って、私の手を引き、端からお店を廻ってくれるウェイン。

グチャグチャな野菜なんかも視界に入ってはくるが、顔に近づけなければ問題ない。

今朝とれたばかりだという、新鮮そうな野菜を数点購入し、更には果物なんかも見ていく。

そして、ついにやってまいりました。

香辛料・調味料のお店。

ヤバげな空気が充満してそうですが、いざ、出陣!!


「らっしゃーい。・・・。おんな・・・。ごゆっくりどうぞ。何かあればお呼び下さい。直ぐに、直ぐに駆けつけますので。ああ、分からない品やお求めの品が見当たらない際にもお声がけください。是非。」

と、さっきまでヘラヘラしてたくせに、突然真面目人間に変化した店員さん。

変わり身の早さに驚いたよ。

この世界の女性の影響力って本当にすごいよね。

取りあえず、返事の代わりに頷くだけにして、商品をチェック。


商品棚には、大小様々な瓶に入れられて並んだ商品の数々。

この世界は生鮮食品は駄目な事が多いんだけど、なんでか調味料はまともだったりする。

乾燥させたハーブや香辛料、調味料は割とまとも。

常温保存可能な発酵食品なんかも美味い。

この世界でダメなのは肉や魚等の生鮮食品だけという事らしい。

大豆や米なんかの穀物なんかは割とまとも。

葉物系の野菜はべちゃべちゃ。

根菜はかっさかさorぐちょぐちょ。

魚と肉は腐る。

が基本なんだけど、どのお店にも一応【今日採れた物】というジャンルは存在しているらしい。

店には出してなくても、毎日仕入れはしているみたいな。

やっぱり多少割高になるが、それでもその事実が分かっただけで上々だ。

そう思いながら瓶を見ていくと


《クローブ》や《カルダモン》《シナモン》に《トウシキミ》など様々な香辛料が揃い踏みだ。

大きな瓶に詰められているそれらは見た目はまとも。

きちんと乾燥しているようだし、カビてもいない。

そんな中でも、特に目を引いたのはこの二つ。

《唐辛子》と《カカオ》

この二つは買わなきゃいけないでしょう!

カカオがあれば、魔法でちょちょいとチョコレートを作れるじゃありませんか。

皆に許可を取らないと魔法は使えないけども、いつか作れるときが来るかもしれないからね。

買っといて損はない!

疲れた時には甘い物が一番だし!

オッサン達も喜んでくれるかもしれないもんね!

それと、唐辛子は中華を作る時になんか必要だよね。

そろそろ食べたいよ、麻婆系。

大豆もあるし、にがりを手に入れて豆腐作りたいよ、豆腐。

帰ったらアルドかグレンに相談してみよう。

《米麹》やら《甜麵醬》とかも売ってて、見た目が良いからお試し買いかな。

もし、これでまともな味でお腹を壊さない様なら、まとめ買いも考えておこう。

他の街で買えるか分かんないもんね。


で、だ。

ずっと気にしないようにしてたんだけど、そっちの棚一面にあるのはヤバイ奴らだよね?

先日、アルド達が教えてくれた、【腐り止め&万能旨味調味料】とか言われている、悪臭の根源!!

周囲に漂う悪臭が目に見えるかの様。

もわもわと紫色の靄が見えてる気がする。

その位、ヤバイ調味料の集まり。

私はそっちの棚には近づきたくもないんだけど、さっきから、そっちの棚の商品が馬鹿売れしてるのは幻覚じゃないんだろうなぁ。

オッサン達曰く、『塩よりもメジャーな調味料』らしいからなぁ。

なんで、あんなにクッサイものを口に入れられるんだろうか・・。

というか、あんなもん出先で食べてたら、魔獣寄ってこない?

・・・いや、そうか。

あの異臭があるから、魔獣が寄ってこないのかもしれない。

旅の中で安全に食事が出来るように。と、考え出された先人の知恵なのかもしれない。

まあ、この件に関しては外国人から見た日本人の《納豆》とか《くさや》みたいなものと考えて諦めるしかないかな。




にしても、さっきからこっちを見てる人が多いなぁ。

全く見知らぬ青年が、こっちをチラチラと見ながら

【男なら料理位して当然だよなぁ~。】なんて言いながら、例の異臭スパイスを購入。

全く見知らぬオッサンが、こっちをチラ見しながら

【俺は料理が上手くてなぁ~。】と言いながら、例の異臭スパイスを購入。

とか、無駄にアピールしてる気がする。


他の皆と出歩いた時はこんな事は無かったのに、なんでだろ?

そう思って、隣にいるウェインを見てみると

ニコニコ、ほわほわとした笑顔のオッサンが立っていた。

うん。

背景にお花が飛んでそうだね。

幸せそうだね。

凄く癒されるよ。

でもね、多分だけど、周囲の人達からなめられてるんじゃないかな?

ウェインさんや。

他の皆と違って威圧してないから、他の人達、寄って来ちゃってるよ?

ほわほわ顔も可愛いけどね、一緒で嬉しいと思ってくれてるんなら幸せですけどね。

そのうち声かけてくる奴も現れるんじゃないかな?

そう思って見つめていると


「おっ!決まったか?買うか?店員呼ぶか?」

と、見えない筈の尻尾をフリフリ、嬉しそうなウェイン。


「もう少し見てからにする。でもね、さっきから人が多くなってきてる気がするんだけど・・・。」

そう私が言い終わる前に、ハッとしたかのように周囲を見渡し、


「見てんじゃねーぞ!!」

と、鬼も裸足で逃げ出すような般若の表情で一喝するウェイン。

蜘蛛の子を散らすように去っていく何人かの男。

それでも、強面のオッサン達数人は残った。

【俺は買い物客だ。そっちは見てない】的な反応してます。


「フンッ!!カナは俺が護るからな!!安心して買い物してろ!!」

そう言って、先ほどとは違い、顔をグルングルンと動かしながら周囲の警戒を始めるウェイン。


私も見るのに集中しすぎちゃって自分の世界に入っちゃってた事を反省。

折角二人で来たのに、ウェインに見張りさせて、自分だけで選ぶのは違うでしょう。

折角のお出掛けなのに。


「ウェイン、一緒に見よう。それで、好きな味とか教えてちょうだい?皆の好きな味とか、好きな調味料も。ウェインは勘が良いから敵にはすぐ気づくでしょう?だから、周囲の警戒も2人でやって、2人で選ぼう。じゃないと、2人で来た意味ないもんね?折角、ウェインが口布買ってくれて一緒に買い物に来られたんだもの。今日の夕飯は、ウェインの好きな味の物にしよう。ね?」

と、過度な警戒は解いて、一緒に商品を選ぶことを提案する。

勿論、他の人達には聞こえない様に、ウェインには少し屈んでもらって、耳元で小さな声で話している。

女王様モードなのは店員の前でだけで充分だもんね。

すると、


「良いのか?俺の好きなので。んにゃ!嫌じゃねぇ!嬉しい!こっちだ!俺の好きなの!」

そう言って、嬉しそうに私の手を引いていくウェイン。

その姿は、子供が母親をお菓子売り場に引っ張って行くようで、なんとも可愛らしい。

そんなウェインが指さした先にあったのは

《豆板醤》だった。


「これな、辛くて美味ぇんだ!!肉に塗ったくって焼いたり、芋にのせたり、何でもいけんぞ!!」

と、嬉しそうなウェイン。

これ買って!これ買って!と、全身で表現しているかの様で、自然と笑みがこぼれる。

見た目は良し、味は分からないけど、もし、変な匂いだったりしたら、これを食べたいという皆の分だけにすればいいし、購入決定。

にしても、ウェインが辛党だったのには少し驚きだ。

勝手に一番甘党だと思ってた。

ピーマン嫌いだったし、子供舌だと思ってたんだけど、辛い物好きなのね。

覚えておこう。脳内にメモメモ。


「じゃあ、これ買って行こうね。今日はコレで炒め物にしよう。一応、匂いの確認はウェインがしてくれる?普段食べてるのと違いがないかどうか。」

とお願いしておく。


「おう!あ、こっちはアルドが好きな奴だぞ。自分で炒って酒のつまみにしてるはずだ。」

と、指差した先にあったのは《かぼちゃの種》。


「こっちはトルーノ。暇がありゃカリカリ食ってる。」

と、指差したのは《ピクルス》


「んで、コレがグレンの好きなのな。ナイフで削って食ってるっぽい。」

と、指差したのは《鰹節》


ん?

ちょっと待って。

酒の肴に《かぼちゃの種》炒ってるの?

いそいそと小さなフライパンで炒ってる姿を想像した。可愛いぞ。アルド。


カリカリと《ピクルス》を丸ごと食いですか?

丸ごとカリカリと齧っているのを想像した。可愛いぞ、トルーノ。


《鰹節》をナイフで削って食べてるの?

それ、どこの御猫様?想像した。可愛いぞ、グレン。


「じゃあ、皆の好きなのもそれぞれ買って行こう。ウェイン、選んでくれる?」

そうお願いして、皆が特に好きな物を選んでもらう。

こっちは好きで、こっちは嫌い。

そんな情報と共に皆の分も粗方見当をつけ、店員を呼んで購入することにする。


「買いたいんだが。こっち来てくれるかー?」

と、ウェインが声をかけると同時に、私は女王様モード発動!!


「はいはいー!!お待たせいたしました、なにをお求めですか?値段も品物もオマケしますからね、欲しい物は一通りご注文下さい。ご期待に沿えるように頑張ります。」

と、随分と低い腰でやってきた店員さん。


「期待してるわ。コレを20グラム、こっちを30グラム、こっちを20グラム。こっちのは少し中身を確認させて。これを・・・・・・・・・・」

と、指で指示しながら、時にはウェインに匂いを確認してもらいながら、どんどん注文をしていく。

すると、流石は店員さん。

スッと懐から紙を出し、スルスルとこちらの指示通りに商品名と金額、分量を書いていく。

そして、全部の注文を終えた時には、用紙2枚分の商品名が連なった注文票が出来上がっていた。


「ご注文ありがとうございます。乾物は袋に入れて量り売り、粘り気のあるものは有料の瓶に入れての販売、瓶をお持ちでしたら、そちらに入れての量り売りとさせていただきます。こちらの金額、合計してみますので少々お待ちくださいませ。」

と、瓶を差し出すとすぐに量り売りの金額での計算を始めた。


多分、値引きはこの後まとめて行われるんじゃないかな?

まあ、調味料は大事だし、そこまで安くならなくても購入は決定だけど、少しでも安くなれば嬉しいな。

と、考えている間に計算が終わったらしい。


「お待たせいたしました。こちらが合計金額になります。そして、女性割引として、この値段から3割引き、そして、此方の《ピクルス》と《カカオ》をオマケにお付けいたします。いかがでしょうか?」

と、合計金額の横に3割引きした値段、更にはカカオと5個とピクルスを一瓶、カウンターの上に並べてくれた。

これなら上々。

3割引きの上に、カカオとピクルスまで付いて、なんてお得!

勿論、買い!である!


「そう、良いわね。いただくわ。ウェイン、お金を。」

女王様モードでウェインにお金を支払ってもらい、商品を詰めてもらうのを待つ。

その間に、近くにいたオッサン達が私たちの購入品をジロジロと眺めていたのは気にしない。


詰め終わった購入品をウェインの鞄に入れてもらって、店を後にする。


「是非、またいらしてください。次回もご要望に沿えるように頑張りますので。では、お気をつけて。」

と、最初の態度が嘘のように見送ってくれた店員さん。


その後、その店に男共が押し寄せてたのは見て見ぬふりをして、ウェインと他の店を見て回る。

すると、


「なあ、カナ。どうして《カカオ》買ったんだ?薬だろ?どっか悪ぃのか?言いたくねぇなら良いんだけどよ・・・。」

と、不思議そうな心配そうなウェイン。

ああ、そっか。

この世界ではカカオは薬なのか。

薬をウキウキと選別して購入してるから不思議そうだったのね。

違うよ~。

これはチョコレートにするつもりなのよ~。


「薬じゃなくて食べる方法があるの。まあ、いろいろやらなきゃ駄目だから今は無理だけどね。他の皆にも相談して、時が来たら食べれるようにするからね。心配してくれてありがとう、ウェイン。」

と、説明と共にお礼を言うと


「そっか。身体が悪ぃのかと思って心配したぜ。苦ぇだけの《カカオ》が食えるもんに変わるんなら楽しみだな。にしても、今日の飯が今から楽しみだぜ!」

と、ヒャッホー!!と今にも叫びだしそうなウェイン。


その期待にこたえられるように、夕飯作り頑張ります!

繋いでいる手をブンブンと左右に振って、足取り軽く2人で次々とお店を網羅していくと、

【ぐぎゅ~】

と聞こえる音が。


「んあ、昼だ。12時だな。腹減った。皆待ってんし、そろそろ帰らねぇといけねぇな。」

と、お腹を擦りながら、残念そうにつぶやくウェイン。

そんな姿を見ていたら、切なくなってきた。

まるで、2人でのお出かけがコレで最後みたいな雰囲気で。


「お腹もすいたし、買いたい物も沢山買えたし、今日はこの辺までだね。今日は凄く楽しかった!一緒にお買い物してくれてありがとう、ウェイン。また今度、一緒にお出かけしてくれる?」

そうお願いしてみると


「おう!そっか、楽しかったか。・・・良かった。嬉しいの俺だけかと思ってよ。けど、カナが楽しかったんなら本当に良かった!次も2人で出かけような!楽しみにしてるからな!あ!勿論、他の奴の後な!順番は守るぜ!!」

と、安心した様な表情の後、いつもの元気いっぱいの笑顔になったウェイン。


どうやら、私が楽しんでいるかどうか気にしててくれたらしい。

私としては、皆の好みの話や失敗の話なんかも聞けて、とっても楽しかったし、凄く沢山笑っていたつもりなんだけど。

伝わらなかったかな?


「すごく楽しかったよ!また今度、一緒に行きたい!って思ったもの!次も沢山のお店まわろうね!今から楽しみにしてるから!」

と、本格的におねだりしておく。


「へへへ、喜んでくれたんなら良かった!緊張しちまって最初の方はよく覚えてなくてよ。ちっと残念だったからな。今度は最初っから気合入れてくぜ!!全力で楽しもうな!」

と、気合の入ったウェイン。


「うん!」


繋いだ手をブンブンと振りながら宿へ帰った私たちは、その間にも沢山の話をした。

その結果、思っていたよりも遅くなってしまったらしく、

他の皆が探しに行くかどうか話し合っている所に帰宅することになる。


最終的にはアルドからお叱りの言葉をいただきました。

ウェインと2人で正座させられて怒られたけど、

怒られている最中に、ウェインがこちらを向いて悪戯っ子みたいに ニカッって笑うものだから、私もつられて笑顔に。

そんな私たちを見て【もう一度最初から説教するか?】というアルドの笑顔は本当に怖かった。とご報告させていただきます。



____________

イメージ的にウェインが一番、初々しいです。

まるで少年のように甘酸っぱく。

変に意識して照れる所と、気にせずグイグイ来るところが曖昧というか。

大型犬風でもあり、表情も分かりやすいので、主人公が割とリードするシーンも多く書いているつもりです。

オッサンの書き分けが難しい、今日この頃です。

本日もお読みいただき、本当に有難うございます。


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