オッサン達との旅⑱
パーマ達を先頭に、歩くこと一時間。
この一時間の間にも、パーマ達は何度か私への接触をはかってきた。
学習能力が無いやつらだったらしい。
アルドの質問地獄に捕らわれ赤っ恥をかき、冒険者としての自慢話をしてみるものの、天狗っ鼻をブチ折られ、再度、歩く屍と化した。
アルドの怒りゲージがぐんぐん上がっている中、
ウェインが叫んだ。
「来たぞ!」
グレンやアルドは直ぐに武器を構えた。
トルーノは武器を片手に後ろに振り返り、即座に周囲の警戒を始めた。
が、パーマ達は
『なんだ?!なんだ?!』
とプチパニック。
直後、私たちの前に《ビッグラビット》が3匹現れた!!
ビクッ!!
と体を跳ねさせたパーマ達だったが、
「お嬢さんは俺達が守る!!」
「お嬢さん、オッサン達と下がってて」
「俺達に任せろおおおおおお!いくぞいっ!!!」
という言葉と共にビッグラビットにかかっていった。
私達は少し後ろに下がり、静観する事にした。
「おりゃ!!おりゃあ!」
「フンッ!ソレッ!」
「だああああ!うらあああ!」
と戦いを続けるパーマ達。
そして、それを見つめる私とオッサン達。
小さな声で口火を切ったのはウェインだった。
「なあ、あいつらよ、避けんの下手すぎねぇか?ドデカイ一撃は喰らっちゃいねーけどよ、小せぇのをそこそこ喰らってるよな?あれ。」
とハテナマークを飛ばすウェイン
「それな。息も上がってきたしな。おいおい、回復薬飲んでやがるぜ。ビッグラビット相手に回復薬はねぇだろ。一発で仕留めずに何回も当てやがって。ありゃ売りもんになんねーだろうが。」
と不機嫌そうなグレン
「貴族なのは本当みてぇだな。回復薬をこの段階で使えんだからよ、沢山持ってると考えて間違いねぇ。・・・まあ、何も考えてねぇだけの馬鹿なら救いようがねぇけどな。」
と苦虫を噛み潰した様な顔をしたアルド
「実力がランクに伴ってねぇパターンじゃねぇか?回復薬をバンバン使って傷を治しつつ、体力をアップさせつつ、相手を弱らせて討ち取るタイプの冒険者だよな。おそらく、依頼を請けまくってポイント稼いで、パーティーのランクはDだか個人の力はEってとこだろ」
と冷静に分析してるトルーノ
なるほど。
個人のランクがEでもパーティーとして沢山の依頼をこなしていればD級になれるのね?
オッサン達とパーマ達の実力について話し合っていると、戦いが終了したらしい。
パーマ達がこちらに振り返った。
「見てた?!お嬢さん、見ててくれた?!」
「俺たちの勇姿しっかりと見ていてくれましたか?!」
「勝ったぞー!!お嬢さん!!見たか!!俺達の強さを!!」
とビッグラビットを1人1匹担いで走ってきた。
そして、目の前で解体。
ちょ、お前ら、女に解体なんて血塗れのグログロを見せるんじゃないよ!!
普通の女の人なら泣き叫ぶんじゃないの!?
これ!?
とは思いつつ、下手に発言したくないので、黙りです。
無事に解体が終わったらしい。
毛皮はボロボロ。肉はボロボロ。
だが、魔石は無事だったらしい。
毛皮と肉は自分達の鞄に詰め込み、魔石を私の目の前に差し出した。
『貢も、いや、プレゼントだ!受け取ってくれ!』
と、パーマ達は手のひらに魔石を乗せて頭を下げた。
まるで、婚約指輪を渡すプロポーズみたいなんだが。
受け取りたくないんだが。
まあ、普通の女の人は受け取るから、受け取らないとダメなんだけど。
一応、アルドを見てみると、頷かれた。
【受け取れ】
だ。
よし。
受け取ろう。
お礼…はダメだよね?
調子に乗りそうだし、女王様は言わないでしょう。
女王様ならどうするか・・・・。
女王様、女王様、
【我に舞い降りよ!女王様の化身よ!!】
と心で叫び、女王様モードに無理矢理突入します。
頑張ります!!
「貰ってあげてもいいわ!でもこんなの小さすぎるわよ!発色も艶もイマイチだし!次からはもっと大きくて上質なのを持ってきなさい!」
と魔石は貰ってフンガー!!してみた。
パーマ達は目をキラキラさせながら、
「勿論だよ!俺!頑張る!」
「お嬢さんの為ならドラゴンでも倒して見せますよ!」
「よし!次の魔物も俺たちが倒すぞい!見ててくれ!お嬢さん!」
とパーマ達はノリノリ。
私は少し罪悪感。
贈り物にケチつけるとか、日本人として精神的にツラい。
そんな私の心中とは逆に
前を
『行くぞーい!!』
という掛け声と共に歩いていくパーマ達三人。
オッサン達は私の肩や頭に手を乗せて
『お疲れさん』
と言ってくれた。
癒された。
なんか、厳つく、ガタイの良い、カッコいいとは言えない容姿のオッサン達なのに、物凄く癒された。
アニマルセラピー並に癒された。
胸がほんわかした。
素晴らしいね。
《オッサンセラピー》
全力で皆さんにもオススメします。
とか現実逃避しつつ、先程の陣形に戻って歩きます。
そして、1時間後。
アルドに声をかけてお花を摘みに行きました。
皆の元に戻ってみると、何やらオッサン達はお話し合い中。
グレンが中心になって、トルーノとウェインに指示を出してるみたいだった。
戻ってきた私をみて、パーマ達はオッサン達が周りを固めていない事に 気が付いて、近づいてきた。
が、アルドがさっきの戦いについての質問を始めた。
「なあ、聞きてーんだけどよ。なんで、あんなにチマチマ攻撃してんだ?もっと近づいてガツンとやりゃ良いだろ。」
「無理無理!近づいたら大きな一発喰らいやすいじゃん!」
とバルロが答えた。
「…んじゃ、回復薬は毎回使ってんのか?」
「ああ。勿論。弱った身体のままで次の魔物と殺り合うのは難しいだろ?」
とアーチスが答えた。
「…あー、…毎回あんな戦いかたしてんのか?」
「おう!勿論だぞい!俺達は《確実》をモットーにしてるパーティーだからな!」
とニコニコで答えるマシュー
私達は溜め息。
そこに話し合いが終わったらしい、オッサン達が合流した。
野営場所まであと少し。
今のところ、順調に来ていると思う。
ハプニングも無いし、アルドのおかげで接触も最低限だし。
思っていたよりも問題なさそうで安心した。
特別に気に入られた感じはしないし。
あとは、この後に控えている夕飯。
それが最大のビッグイベントとなりそうです。