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オッサン達との旅⑯

トルーノから

【パーマ達と行動を共にするのなら、普通の食事を我慢して、手を加えない状態の果物や野菜を食べる】という提案が出された。


私の頭は絶賛、絶望での大混乱である。


そう。

パーマ達と行動するなら、ご飯は我慢しなきゃいけないのだ。

私の作る料理は《私の世界の料理=美味しい料理》なので、パーマ達の前で食べる訳にはいかない。

かといって《こちらでの料理=殺人飯》は食べられない。ガチで死ねる。

仮に私の世界の料理じゃないとしても、私が食べられるレベルの料理ってだけでパーマ達の気を引いてしまう可能性がある。


それだけは絶対に却下。


私達は

特に私は

《貴族のお気に入り》

になる訳にはいかない。

少しでも気を引いちゃいけない。

下手に気を引けば、この後もずっとついてくるかもしれないし、今後もずっと関わってくるかもしれないし、料理番として雇いたいとか言われたりするかもしれないし、下手をすれば一生もののストーカーになりそうな気がする。


あのパーマ達は

《周りの言葉には耳を貸さずに妄想込もうそうこみの勝手な自己判断で周りを巻き込んで騒ぎを大きくするタイプの人間》

だと思う。多分。


なので、私、しばらくは生の果物や野菜を食すベジタリアンになることになりました。

手持ちの果物と野菜の中から、普通のお店で買った後に普通の拡張鞄に入れていて、まだ悪くなっていないだろうものだけを食べます。

出すのは私が用意した物だから、まだ全然食べれるフレッシュな状態のものだからまだ良い。

でも、生で食べれる果物や野菜はかさ張るから元から鞄に入れておいた量が少ない。

野菜は芋とか人参とか玉ねぎの腹持ちがいい根菜を中心に入れておいたのが仇になった。

流石にマヨネーズやドレッシング等の調味料も一切なしで生の人参や生の玉ねぎの丸かじりは勘弁して欲しい。

でも、道中では野菜も果物もほぼ採れない。

最終手段は

《道端に生えている、美味しいクセのない野草》

ですかね。

泣けてくる。

チート持ちになったはずが・・・。

異世界でチートで無双して完全勝ち組な新たな人生を送るはずが・・・。

何故にパーマ達(ストーカー予備軍)に後をつけられ、ベジタリアン生活を強いられることになったのか。

お爺ちゃん神様によく、よ~く、話を聞いてみたい。



まあ、一番は私の考えが甘かったせいだけれども。

私は、他の冒険者と一緒になっても食事を離れてとる事は可能だろうし、匂いを抑えたメニューにすれば良いと思っていた。

もし、一緒に食べたいと言われても、言葉で上手くはぐらかすか力ずくで振り切るか。

それが出来ると思っていた。

オッサン達も居てくれるし、大丈夫だと過信してた。

まさかしょっぱなの旅から貴族が関わってくるとは思わなかった。

貴族の冒険者なんてそうそう出会わないでしょう?

わざわざ追ってこないでしょう?

私、これでもまだ冒険者になってないんだよ?

冒険者志望の一般市民の女の子なんだよ?

冒険者になったらどんな面倒な事が待ち受けてるの?

冒険者になって女の人が絡んだら、私は大丈夫なの?

ねぇ、お爺ちゃん神様?

自分の運の悪さに泣けてくるのだが。



オッサン達は、未だに一緒に行動するのは遠慮してくれとパーマ達に告げているが、通じていない。

【俺達がいた方が彼女は幸せだ!彼女はまだその事に気づいてないだけなんだ!】

的な事をほざいてる。


そんな皆を尻目に

トルーノが完全に私と向き合って話し合いのたいせいに入った


「今からアルド達にはおひぃさんを【嬢ちゃん】って呼ばすぞ。名前を連呼してあいつらに記憶させねぇ方がいい。話も極力避けるべきだな。食いもんは生の野菜か果物しかねぇか・・・。もし無理ならちゃんと言え。そん時はトイレと見せかけてでもウェインに抱えさせて別行動させるからな。無理だけはするなよ?俺達に遠慮はするな。言いたいことは言え。」

と頭を撫でてくれた。


暖かくて大きな手で優しく撫でてもらえて

気分が落ち着いた。

オッサンの包容力って半端ハンパない。

私が猫だったらのどが鳴ってただろう。


「大丈夫、だと思う。果物と野菜で何とかしてみる。でも、あいつらの今後の対応次第で無理そうな瞬間があったら、その時は逃げたい。」

と素直に言っておく。


絶対に大丈夫だなんて言えない。

あいつらの考えが全く読めないから、どんな行動をとられるか分からない。

耐えられる範囲を越えるかもしれないんだ。

セクハラとか・・・ね。


私の身体から混乱による緊張が無くなったのが分かったのか、少し柔らかい目付きになったトルーノが続ける


「逃げたい時にはウェインをトイレに誘え。それと残りの対策だがな、この世界の女《我が儘な女王様》を振る舞った方が良い。俺らにもな。だが、出来るだけあいつらとの会話は避けること。後は基本、贈り物は断るな。」


あ、普段は御手洗いはアルドに頼んでるから、ウェインを誘えばそのまま逃亡って事ね。なるほど。

命令口調なんてしたことないけど、我が儘な女王様も頑張ってやろうじゃないか!

自分の身を守るためだもの!

でも、贈り物は駄目じゃない?

受け取ったら相手を認める事になるよね?

仲良くなっちゃうよね?

贈り物を受けとる=気持ちを受けとる

にならないの?


「最終兵器はウェインね。了解。女王様も頑張る。でも、贈り物は受けとらなきゃ駄目なの?物を貰ったら仲良くならない?断った方が良くない?」


と疑問を聞いてみると


「贈り物は断るな。ここでは女への貢物は当然だからな。女は受けとる。断れば逆に気に入るかもしれねぇ。謙虚だ控えめだなんだってよ。後は・・・寝る時はいつも通り。飯はグレンに任せろ。おひぃさんは一緒に食わなくても良いように飯は休憩中に済ませろよ?」

と難しい顔をされた。


なるほど。

受けとるのが普通だから断れば普通じゃないと。

ご飯の方も

【さっき食べたから】

が使えるようにしておけと。

納得したので、何度も頷いておく。


トルーノと見つめあって真剣に話をしていたのに、突然大きな声が響いた。


『とーにーかーくー!!!!俺達も一緒に行く!!!!!』


パーマ達3人組は声を揃えて綺麗にハモった。

見事だった。

綺麗な和音だった。

土下座に続き、かなりの場数を踏んでいるのかもしれない。

ある意味すごいやつらだと感心する。

駄々っ子の様に、涙目になりながら一緒に行くと言って聞かないその姿に


【何歳だよ・・・】

【男がコレかよ・・・】

【プライドはどうした・・・】

【・・・・】


と、どのオッサンも呆れてる。


このパーマ達がどんな人生を歩んで来たのか、不思議でならない。

土下座も駄々をこねるのも慣れてるなんて

お前ら本当に貴族なのか?

と疑問を抱くものだが、身形みなりは綺麗だし、装備品も立派で高そうだし、貴族なんだろうなぁ。

手下の二人も育ちは良さそうだが、やはりマシュー・ヌ・ケイザンは完全に貴族だろう。

他の二人が自分に従えて当然って感じだもの。


そんな風に冷めた目線でパーマ達を見ていたら、トルーノが盛大な溜め息を吐きながらも口火くちびを切った。


「分かった。嬢ちゃんにも何とか許可を取った。付いてくるのは許してやる。だがな、勘違いするなよ?同行じゃねぇからな。嬢ちゃんに1ミリでも触るなよ?傷つけるなよ?嫌な思いをさせるなよ?邪な思いを抱くなよ?嫌がることをするなよ?良いか?もし、嬢ちゃんに何かしたら、俺達が全員でお前らを《る》」

とパーマ達を鋭い眼光で睨みつつ警告した。


が、

パーマ達は


『やった(ぞい)!勿論!その子に嫌な思いはさせない(ぞい)!俺達が護る(ぞい)!』


なんて睨みにも気付かず喜んでるけど、現在進行形で嫌な思いをさせられてるんだけど・・・・。



オッサン達の反応は

驚いた顔をしたウェインとグレン。

眉間にシワを寄せつつ溜め息を吐いたアルド

に分かれた。


『何でだよ!?』

と声を揃えて抗議するウェインとグレンに対して

アルドは小声で


「あいつら、断っても勝手に付いてくるタイプの奴らだろ。貴族だ何だと自分から言いやがる上に馬鹿みてぇにポジティブだからな。勝手に動かれて嬢ちゃんの神経を削られるのを考えりゃ、俺達が全員で嬢ちゃんを護りながらあいつらの行動を制限した方がマシだろう。」

と二人を抑えてくれた。


私とトルーノが話し合った内容を即座に大まかに理解し、私を【カナちゃん】から【嬢ちゃん】と変えて呼んだアルドの頭の回転の速さには驚いた。


喜んでるパーマ達を尻目に、

トルーノは未だに不満そうなウェインとグレンに私達の会話の流れを説明しだした。

アルドはトルーノと場所を代わり、私の隣に来て柔らかく微笑んで頭を撫でてくれた。

目の横に軽くしわを寄せて、優しく見守る様な目するアルドは

まるで

【大丈夫。護るから。】

と言ってくれてるみたいで、無意識にこもっていた肩の力が程よく抜けた。


トルーノの説明が終わり

渋々ウェインとグレンも納得して

オッサン達が全員、私の側に集まって

『俺達が護るからな!安心しろ!』

と言ってくれた頃


パーマ達がこちらに寄ってきた。


「オッサン達にも改めて挨拶するね!俺の名前は《バルロ・カリル》!気軽に《バルロ》って呼んでね!好きな食べ物はバナナ!好きな色は黄色!隣街までヨロシクね!」

とニコニコしてる金髪パーマ。


「次は俺かな。俺は《アーチス・ホルン》。俺もバルロと同じで《アーチス》と呼んでいただいて構いません。旅の知識は俺が一番詳しいので、分からないことがあれば何時でも聞いて下さい。勿論、オッサン達も分からないことがあれば聞いてくれて構いません。」

と、その自信は何処から来てるのか分からないけど、何だか偉そうな赤髪パーマ。


そして大問題児のコイツ

「最後は俺だな!俺は《マシュー・ヌ・ケイザン》だぞい!俺のことも《マシュー》って呼んで良いぞい!貴族だけど畏まらなくて良いから、仲良く楽しい旅にするぞい!」

と、気安い庶民派な貴族みたいな感じに話してる黒髪パーマ。


仲良く楽しい旅は既に不可能ですよ?

オッサン達が殺気だってますし?

私もイライラしてますが?

この空気を読める奴らなら謝罪と共に帰るんだろうけど、コイツらの神経はクレーン車のワイヤーよりも太いと思われる。


オッサン達は頭に血管を浮かび上がらせながらも


「ウェインだ。嬢ちゃんに何かしたら、死ぬまで全力でブン殴る」

と握り拳を見せながら自己紹介するウェイン


「グレンだ。仲良くなんてしねぇ。嬢ちゃんに近寄ったら、ブッ刺す」

と剣を握り締めて自己紹介するグレン


「アルドだ。知識には困ってない。嬢ちゃんに嫌な思いをさせたらこの世の地獄を見せてやる」

と笑顔で自己紹介するアルド


「トルーノだ。俺からはさっき言った通りだ。何かあれば狩る」

と腕を組んで自己紹介するトルーノ


あれっ!?全員怖いよ!?

一応、連れてくことに納得したんだよね?

全員がる気満々じゃないですか?

特にアルドさん!!

笑顔で地獄を見せてやるなんて、

中々聞かないお言葉ですよ!?


オッサン達は満足そうだけどさ、パーマ達は真顔になってるからね?

自分達はフレンドリーな自己紹介したのに、オッサン達は全員、もれなく殺害予告みたいな事を言っちゃってるからね?

これ、この空気の中で私も自己紹介すんの?

嫌すぎるんですけど。


ちょっと、

《さあ!お前も!何かガツンと言ってやれ!》

みたいな目でこっちを見ないで オッサン達!!

特にトルーノ!!

《言ってやれ。我が儘な女王様でな》

みたいな目でこっちを見ないで!


パーマ達もこっちを見るな!!

女の子からの自己紹介に

期待に胸を膨らませる少年達みたいな目でこっちを見ないで!

注目するのやめて!!


あーーー!!

もう!!

いいや!女は度胸だ!

言っちゃえ!


「悪いけど、私は名前を呼ばれるのが嫌いなの。オッサン達にも《嬢ちゃん》って呼ばせてるんだから、あんた達も《お嬢ちゃん》か《お嬢さん》って呼んで。以上。」

言った後にすぐに不機嫌そうに顔を逸らしてみた。


パーマ達は

『じゃあ、お嬢さんで!!』

なんて元気よく答えてきた。


あ、あんな対応をされてもスルー出来るのね?

この世界の女の人の標準装備レベルくらいなの?

それともコイツらが図太いの?

もっと強めの方が女王様らしいかな?

って、女王様らしさを探究してる場合じゃない!

これで良いのか、トルーノ達に確認しないと!


私はパーマ達に変に思われない様に

然り気無くオッサン達の顔を確認したのだが・・・。





オッサン達は全員、切なそうな顔をしていた。


え?

何故に?

私 間違えた?

あの対応じゃ駄目だったの?

笑顔なら正解だよね?

苦い顔なら失敗だよね?

何で切なそうな顔なのよ?

切なそうな顔って・・・・。

半分正解で半分失敗?

え?

何?どーゆうことなの?

誰か教えてくれ・・・・。

答えが分からず、切なそうな顔をしたオッサン達と見つめ合うこと1分。




『【オッサン達】な・・・。目の前で言われると・・・。』


そこかよ!!!!

オッサン達、しょぼーん。

ってしてるのが可愛いけど、違う!

今、求めているのはそれじゃない!

私の対応に対しての答えを頂戴!

誰か!

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