オッサン達との旅⑬
私は自分が思っていたよりもだいぶ図太いらしい。
寝ようと思った後、すぐ朝になっていた。
おやすみ三秒だった。
初めての野宿にもかかわらず、眠れないとか、周囲が気になる何て事も全く無く。
ぐっすりと熟睡でしたよ。
はい。
そう。グレンに声をかけてもらわなければ、まだまだ余裕で寝てたくらいには熟睡してました。
「おはようさん。カナ嬢。爆睡だったなぁ。」
とニヤニヤと笑うグレン
「起きたか!カナも俺と同じですぐに寝んのな!」
とガハハッと豪快に笑うウェイン
「おはよう。カナちゃん。よく眠れたみてぇだし、体調も良さそうで安心した。」
と微笑んだアルド
「目ぇ覚めたか?朝飯の準備を頼みてぇんだが、平気か?」
と穏やかな顔のトルーノ
オッサン達の声にしっかりと覚醒した私は飛び起きた。
突然動いた私に皆はビクッとなり
『どうした!?』
と声を揃えて尋ねてきた。
「ごめんなさい!寝過ごした!すぐに朝ごはん作るから!待ってて!ごめん!」
と謝り、急ぐ私に
「おおうっ!?大丈夫だ!んなに焦んな!腹は減ったが、まだ我慢できるからよ!」
と私より焦っているウェイン
「火はおこしといたし、俺らも手伝うからな。余裕余裕。」
とヒラヒラと掌を振りながら答えるグレン
「昨日はいろいろあったしよ、皆で時間ギリギリまで寝かせてやる事にしたんだ。だからカナちゃんは寝坊じゃねーよ。俺達の判断だからな。」
と首を横にふるアルド
「とりあえず、顔を洗ってこい。」
と布を渡してくれたトルーノ
うはー。
やっちまった!
ご飯を作るのに、この世界ではそれなりに時間がかかるから、早めに起きて作ろうと思ってたのに!
オッサン達より遅く起きるとか!
ウェインのお腹なんてグウグウ鳴っちゃってるもの!
皆もお腹が空いただろうに、本当に申し訳ない。
急いで顔を洗ってくる。
そして早速料理を作り始める。
今日もアルドとグレンが補助をしてくれるらしい。
食パンを出しても良いらしいし、皆の感覚から言っても卵も牛乳もまだ余裕で使う範囲らしいので、チーズオムレツでも作ろうかと思う。
私の感覚から言うと普通の鞄に入れて常温で持ち歩いた牛乳なんてすぐに悪くなるから飲まないはずだが、この世界では腐り食材は当たり前だから、まだまだ当然のように使う範囲らしい。
夏場でも2、3日なら余裕で持ち歩くらしい。
時間停止や冷蔵鞄じゃなくてだよ?
普通の鞄に入れて持ち歩くんだよ?
みんな、お腹強すぎない?
私だったら食中毒で死ねるわ。
だから、この世界の料理は絶対に食べない。
雑巾臭の牛乳なんて絶対に飲まない!
と改めて強く思った。
オッサン達の要望に答えて、お肉を出すことになった。
朝からお肉?
と思ったけど、皆が言うには
【毎食肉を食う。じゃねぇと力が出ねぇんだ。】
だそうだ。
普通なら胃もたれとかしそうだけど、この世界の人間の胃袋は強靭だ。
朝からお肉を食べて即エネルギーに変えるらしい。
一日中、重い武器を提げたまま動き回るし、周りを警戒しながら脳みそもフル回転させながら過ごすのだから、考えてみれば当然かもしれない。
なので、朝からお肉を焼くことになった。
お肉はパンにも合うように照り焼きにしたり、肉を茹でて裂いてサラダに盛り付けたり、チーズオムレツを作ったり、野菜たっぷりのスープを作った。
そして振り返ると
お皿を持って横一列に並ぶオッサン達が。
あ、これからずっとそうするのね?
配給を待つ小学生みたいで可愛いよ、オッサン達。
おめめキラキラだもんね。
鼻息荒いし。
お皿には平等に盛ってあげる。
その方が良いよね?
んー、ちょっと試してみようかな?
私が適当に盛って、平等にならなかったら、オッサン達は自分達で平等にするのか。そのまま食べるのか気になる。
と言うことで、
少し試しにアルドのを多くしてウェインのを少なくしてみた。
そしたら、
ウェインが自分の皿とアルドの皿を何回も見比べて
「な、なあ、カナ、アルドのがちいっとばかし多くねぇか?そのよ、俺の、俺のが少しすくねぇ気がすんだが・・・。俺、カナに何かしちまったか?怒ってるのか?」
としょんぼりしたウェインがお皿と私を交互に見つめていて、心が抉れるかと思った。
捨て犬みたいな目で見られて、本当に申し訳なかった。
すぐにアルドにも間違えたと謝って全員平等に盛りなおした。
【怒ってねぇなら良い!】
とウェインは笑って言ってくれたが、罪悪感は消えず。
私のお肉をウェインに少し横流ししておいた。
今後、悪戯はよく考えて行おうと思いました。
オッサン達のしょんぼり顔とか、ガチで心が抉れるから。
大声でごめんなさい!って叫びたいくらい心にグサグサ来たもの。
心の中で懺悔していると、オッサン達はご飯を食べ始めた。
「んー!うめぇな!いつ食ってもうめぇわ!ガツガツ!カナはすげぇよ!朝からこんなにうめぇもんがモグモグ食えるなら、今日の俺は絶好調だぜ!ガッハハハハ!」
相変わらず、食べながら喋るウェイン
「うめぇ。あー。うめぇな。朝からあったけぇスープまであるなんてよ。豪華だよなぁ。しかも、女の手作り。あー。うめぇ。朝から気分良いな。」
とスープを啜るグレン
「旨ぇ。あー、良いな。朝からカナちゃんの作った温かくて旨い飯が食えるなんてよお。グレンは肉とパンと牛乳くれぇしか出さねぇからなぁ。はぁー。幸せだなぁ。今日も1日頑張れるぜ。」
と幸せそうにサラダを食べてるアルド
「・・・んっ!? ・・・これは ・・ふふっ」
とオムレツのチーズが伸びて驚きつつも満足そうにモキュモキュと食べてるトルーノ
そして、食べるのが速いオッサン達に置いていかれない様に必死に食べる私。
無事に朝食が終わり、洗い物をしている間に
傍でアルドとトルーノが今日の予定(仮)を立てていく。
「簡単にで良いから、今日の道のりのどの辺で休憩・野宿を入れるかは考えておくべきだぞ。おひぃさんも道を覚えたら一緒に考えさせるからな。そのつもりで聞いとけ」
とのことで。
片付けも終わり、旅立ちの準備も出来て、計画も立てたので出発!
とはいかず、
何故か突然始まりました。
「カナちゃん、もう一度繰り返すぞ?
俺達とは離れない事。
緊急事態の時以外は魔法は使わない事。
もちろん、カナちゃんがピンチの時や俺達が殺られそうで譲れねぇと思った時は別だ。
鞄は基本はカモフラだけな。
剣はまだ完璧に使いこなせる訳じゃねぇからな、ウェインとグレンの動きをよく見て、指示に従う事。
なるべく怪我をしないように注意する事。
その辺に生えている草木には許可無く触らない事。あと、その、ト、トイレは俺かトルーノに耳打ちする事な。勝手に居なくなったり、離れたりしない事。
こんなもんか?」
アルドからの注意&お約束。
初めてのおつかいの子供に言い聞かせるみたいな感じなんだけど。
オッサン達も周りで腕を組ながら頷いてるし。
子供扱いな事に少しモヤモヤするけど、皆が心配してくれてるのが分かっているので素直に頷いておく。
そして、みんなで出発!
その時の私達は知らなかった。
この後、面倒な奴等に遭遇しちゃうなんて。