オッサン達との旅⑪
新しいお約束をして、私もようやく落ち着いたので、急いでご飯の準備を始める。
ウェインが見張り、トルーノは寝る場所の火の用意、アルドとグレンは再び私の補佐をしてくれる。
今日は焼き肉丼なので
火の扱いが上手いグレンにはご飯を炊いてもらう。
《初めチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いても蓋取るな》
を実践してもらいましょう。
水の量と炊き方に驚いてたみたいだけど、なるべく言った通りに炊いてもらう。
こっちは常に私も気にしておこうと思う。
焦がしてご飯なしなんて大惨事だからね。
アルドにはワイバーンのお肉を焼き肉用の薄切りにしてもらう。
そして私は焼き肉用のタレ作り。
某お料理レシピサイトで知った、私の大好きな味だ。
ちなみに、私はこのサイト様に毎日のようにお世話になっており、神様鞄に入っている《お気に入りレシピ集》のノートが18冊ある。
デザートやお菓子類も充実している必須ノートだ。
このレシピ以外にも焼き肉のタレだけで十数種類あるのだ。
ふふんっ♪
私はオッサン達に美味しいものを食べさせてあげるって決めたんだ!
幸いにも私は昔から自炊してたから、料理の腕には自信がある!
美味しいものを沢山食べられるのは幸せだと思うから、少しでもオッサン達を幸せにしてあげるんだ!
タレを作り終えて、半分には肉を浸しておく。
あとは玉ねぎ、ナスとキャベツを適当な大きさに切ってもらって焼いておく。
そうしている間にご飯が炊けたらしい。
「カナ嬢、これでいいのか?言ってた通りにやってみたんだが・・・。」
と不安そうな顔をしているグレン
「あー、初めてだよな。この炊き方。普通より水も少ねぇし大丈夫か?カナちゃん」
とアルドも不安そうだ。
二人が不安そうなので私も不安になってきた。
ちゃんと炊けてますように!
蓋を開けたらお米のあまーい良い匂いがした。
切るように混ぜると軽くおこげも出来てる!
やった!うまくいった!
「これで良いんだよ!凄く良い!ふっくらツヤツヤで美味しそう!後はお肉を焼いて盛り付けよう!」
と思っていた以上の出来にテンションが上がり、腕捲りをしながら皆を見てみると
【グギュー】
【ギュルルルル】
【グルルルルゥ】
【クポーグギュッ】
お腹を鳴らし、ヨダレを垂らしたオッサン達がいた。
またヨダレか。
ってか、クポーってトルーノのお腹の音ちょっと可愛いな。
「待っててね!すぐにお肉焼いちゃうから!だから、ヨダレを拭いて待ってて!」
そう。ヨダレを拭いて待っててくれ。
どんどん大きく聞こえてくる4つのお腹の音を背後に、急いでお肉を焼いていく。
大量のお肉を。
お肉が焼ける前に、茶碗にご飯を盛って、野菜も盛って、適度にタレをかけておく。
そして、焼けたお肉を茶碗に・・・・・。
茶碗に・・・・。
あれ?茶碗は?
と、目線をさまよわせていると視界に入ったのは
茶碗を持って横一列に並んでるオッサンが4人。
「あれ?二組になって交代で食べるんじゃ、」
『大丈夫だ!食べながら全員で警戒する!』
早く食べたいから全員で周囲を警戒しつつ、同時に食べる事にしたのね?
それで、全員で並ぶことになったのね?
しかも、茶碗を両手で持って前につき出してる姿が可愛いんですが。
これ、あれだね。
新しい扉が完全に開いたね。
キラキラした目で、大きい手で大きなどんぶり茶碗を両手で持って、ヨダレを飲み込みながら、お肉を乗せてもらえるのを待ってるオッサン達。
くっそ可愛いんですけど!!!!
全国のオッサン萌えのお嬢様方に見せてあげたいよ!
独り占めしてごめん!!
そう脳内で叫びつつも、お肉を均等に入れてあげる。
喧嘩にならないように細心の注意を払ってね。
そしてスプーンを渡し、皆に注意を。
「おかわりはまだあるけど、お腹と相談して食べてね。あと座ってよく噛んで食べるようにね。それじゃ、温かいうちに食べよ!」
突っ立ってどんぶり茶碗を見つめているオッサン達を座らせる。
そして席についた瞬間
『ガツガツ モグモグモグモグモグモグモグモグ』
ってあれ?
ガツガツと口に入れて
モグモグと噛んで
ゴクンと飲み込ま、ない?
あれ?
どうした?
なんでまだ噛んでるの?
長くね?
ゴクンはどうした?
「ねぇ、みんな、噛んでるの長くない?よく噛んでとは言ったけど、そこまで噛まなくても良いんじゃない?」
しかも目が潤んでるよオッサン達。
顔が笑っちゃってるよオッサン達。
食べながら喋ると思ってたウェインも黙ったままニヤニヤしながら咀嚼してるし。
なんだ?
食事に関してはオッサン達の反応は理解不能だからちょっと怖いなぁ。
と思っていたらちょうど
『ゴックン』
と飲み込んだ。
そしてまた
『ガツガツ モグモグモグモグモグモグモグモグ』
そして
『ゴックン』
うん、怖いわ。
目をうるうる潤ませてニヤニヤしながらご飯を食べるオッサン達。
さっきまで可愛かったのに、少し残念だ。
「プハッ!おかわり!やっぱりうめぇよ!カナは料理の天才だな!っつーか!俺ら人生2回目の女の手料理だぞ!やべぇよな!」
お!やっと話してくれた。
ウェインの茶碗はご飯粒一つ残ってません。
素晴らしいね。
「俺もだ!いやぁ、最初は米の炊き方が不安だったけどよ、すげぇな。カナ嬢は。俺らの知らねぇ調理法やら食い方がどんどん出てくらぁ。」
とグレンも完食&おかわりですな。
「俺もおかわり頼む。ああ。すげぇよ。正直、米ってドロドロで好きじゃなかったんだがな。これなら食いごたえもあって、肉との相性もバッチリじゃねぇか!」
とお米がお気に召したようですな、アルド
「俺も。いや、本当に旨い。女の手料理が食えるだけでも夢みてぇなのにな。こんなに旨い飯が食えるなんてな。」
茶碗を渡して頷くトルーノ。
ああ。うん。
未だに《女の手料理》に感動したりニヤニヤしてたのね。
おかわりを盛って渡してあげながら
「そんなに感動しなくても。これからは出来る限り私がご飯作るんだし。それに、私以外の女の人が料理出来るとは限らないからね?変に期待しない方が良いと思うよ?今後のためにも」
と、この世界で女王様の様な扱いをされている女性達を想像して忠告しておいてあげる。
が、皆の声が揃った。
『問題ねぇ!』
「ング!んぐぐ!!」
飲み込んでから喋って?なに言ってるか分かんないからねウェイン
「他の女に期待なんざしてねぇよ!」
ご飯粒飛ばさないでグレン
「だな。今後、カナちゃん以外の女の作る飯が食える可能性は皆無だかんな。」
頷きながら言ってるけど切ないよ?アルド
「おひぃさんが作ってくれねぇんなら、残りの人生は野郎が作った飯を食うんだ。」
影を背負いながら哀愁漂う顔しないで!トルーノ!
ああ!
全員が影を背負っちゃったよ!
「大丈夫!私がずっと作るから!とにかく冷めないうちに食べて!」
場を盛り上げる様に、急いで食べるように言う。
そうすると皆、ハッとしたようにご飯をかきこみ始めた。
そのあとも皆から沢山の賛辞を受け取りながら楽しく食事していく。
用意したご飯はあっという間に無くなった。
皆が満足そうな顔をしていて凄く嬉しい。
満腹でお腹を擦りながら笑顔になってるオッサン達、本当に可愛いよ。
ごちそうさまです。
ご飯の後の片付けはアルドとグレンがやってくれるらしい。
その間に私はウェインと剣術の稽古だ!
お腹を少し休めてからとのことで、今から楽しみです!